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鉄パイプの魔法使い  作者: パン×クロックス
最終章 生存都市ノ夜明ケ
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生存都市ノ産声

Gの苦手な方申し訳ありません、この後暫らくGが大活躍する予定です。もうこの作品はG抜きには書けませんm(_ _)m大変申し訳ありません。

「なんだこれは! まるで事態が把握出来ていないではないか。遺跡ハンター達は何をしておるか」


 迷宮化の進む館の中で、苛立たし気に足を踏み鳴らすソイル・カルバートⅢ世は、一向に来ない遺跡ハンター達からの報告そのものを、紙面に書き記して持って来た執事に怒鳴り散らす。


「この短時間では何も分かりますまい、それ故に人手を割いて調査すべきと進言しましたが、断ったのは貴方ですよ領主様」


 ドルケスが皮肉たっぷりにソイルを直視しながら断言した。以前の状況では鎧の力を借りて跳ね返した言霊も、今の波打つ精神状態では胸に迫る迫力となってソイルを撃つ。


「うるさいっ! 私の決定はあの時点では最良だったんだ! 後からこんな訳の分からん事態になると誰が予想できようか!」


 眉間にシワを寄せて噛み付かんばかりの勢いでわめき散らしたソイルは、呆気に取られる周囲を見回すと、


「お主らも賛同したであろうが! 私は悪く無いぞ! こんな事態は断じて認めん、認めんぞっ!」


 一際甲高く叫ぶとドルケス達を置き去りに奥の自室に篭った。部下たちが何度呼び掛けようが、中に同室した側近達以外の人間を拒み一切の責任を放棄する始末である。


「こうなっては仕方ない、私が臨時の責任者となってこの場を取り仕切るぞ」


 ドルケスの言葉は満場一致で可決された。




「誰も入るなと言ったであろうが!」


 不貞寝を決め込んでいたソイル・カルバートⅢ世が寝転んでいたソファーから身を起こし、半分ヒステリーを起こしながら怒鳴り散らす。その視線の先には、見たこともない模様の光が図形を描いていた。


「なんだこれは! おいっ、デニー、デニーはおらぬか!」


 常に煩い程側にいる執事を呼ぶが、一向に返事が無い。


「全く! 揃いも揃って使えない奴らばかりじゃ」


 憤慨したソイルが魔法陣に向かった時、不意に湿った絨毯に足を取られて転んでしまった。


 余りのストレスから大量に服用したドラッグで足元がフラついたらしく、慌てて手をついて上半身を起こしたソイルの目の前には、執事たるデニーの生首が転がっていた。


「ヒイイィッ!」


 振り上げた両手のひらが血で真っ赤に染まっているのを見て、更にパニックを起こして過呼吸になる。


「カヒューッヒューッ」


 喉を抑えて転がるソイルの頭上に、見たこともない〝もの〟が佇んでいた。

 暫くして少し呼吸の整ったソイルがその〝もの〟を見ると、息をしていない精巧な人形だと言う事がわかる。


「ブハーッ、なんじゃっ! 人形か」


 そう呟きながら自立する人形の太ももに手をかけて立ち上がるソイルは、ランプの光が開ききった瞳孔に反射してギラギラと狂人の相を呈していた。


「中々良くできた人形じゃ、まるで生身の人間を触っている様じゃ! ブハハッ」


 血のついた手で、人形の作りを感心した様にペタペタと触って色んな部分を観察していく。


「なんじゃ、この人形は女なのか? こんなに筋骨逞しかったら性別が分からんわい」


 その膨らんだ胸を触ろうとした時、カッと見開いた人形の目がソイルを凝視した。

 金縛りにあったかの様に、驚愕の余り固まってしまったソイルは、次の瞬間には違和感を感じて下を見る。


 そこにはいつの間にか刺し込まれた人形の腕があった。金属鎧を纏った胸の中心に、音もなく前腕部までめり込んだ腕が、素早く抜き取られる。

 その手の中には今だ脈打つ心臓が乗っており、その拍動と共に血を撒き散らしていた。


 言葉も出せずに驚愕に目を見開いて崩れるソイルは血の海に己の血を同化させてこと切れる。

 心臓をポタリと落とした人形は、いつの間にか現れた豪華な黒椅子に音もなく移動して腰を下ろすと、見開いていた目をユックリと閉じ項垂れて活動を休止した。

 それを合図の様に、館は突如として高い魔力に包まれると、周囲を巻き込んで巨大な城郭へと姿を変えていくーーその頂点に魔法人形を据えて。





 肉弾戦士のオースが両手を使って振り下ろした大盾が、飛びかかってきたアサルト・ローチの頭部を潰す。ぐちゃっと潰されて広がる内臓、にも関わらず顎を広げて噛み付いて来る頭部を鉄板入りのブーツで蹴り飛ばした。臓物の中には魔石が内包されているが、屑魔石とも呼ばれるローチの茶石など無視して、迫り来る新手に向けて盾を構える。


 三体のアサルト・ローチの突進を、身を屈めて受け止めたオースが、盾越しにタックルをかますと、そのまま押し返してかち上げる。盾を登り始めていたアサルト・ローチも、その勢いに弾かれて、不様な腹を見せた。その隙を突いて、後ろから短槍を突き出した前衛の戦士が頭部を貫き、直剣の戦士が地面に転がる一匹の頭部を切り飛ばし、投擲された二振りの曲剣鉈ククリナイフがもう一匹の頭部に突き刺さった。


 何れも古代遺跡〝大聖堂〟からの出土品である魔法の武器で、内包する魔力から湧き出る魔光が残像を残す。特に曲剣鉈ククリナイフなどは、標的に突き刺さった次の瞬間には、所持者の戦士の手元に戻って来ていた。


 突如として変貌した街並みの裏路地で、オースや前衛の戦士で周囲を固めたズミーレ達〝ゴールド・サージ〟のメンバーは、一先ず安全な場所を探して移動していた。


 幸い全員が古代遺跡〝大聖堂〟から持ち出したアイテムで武装強化されている。

 ズミーレも、膨大な魔力を秘めた〝エンシェント・リング〟と、壊し屋からぶん取った魔剣〝クリス・タリズマン〟による魔力強化のおかげで、メイジダガーの感応刃を極限まで敏感にして展開し続けていた。


 その時、一際密度の濃いアサルト・ローチの集団がゴールド・サージの前衛戦士達を襲った。非武闘派とはいえ、全員が中堅以上の遺跡ハンターたる彼らは、相応の反応を見せてアサルト・ローチを屠って行くが、隙間を縫った数匹のアサルト・ローチを後ろに通してしまう。


 その時、感覚ヒレを逆立てたレイクが、不可視の眼部から最大出力の衝撃波を放出して、走り寄るアサルト・ローチに浴びせ掛けると、その衝撃にローチ達は地面をバウンドして跳ね上がった。そこに輝く目を線状に尾引かせたアイクが矢の様に殺到すると、魔力で強化された顎でローチ達の弱点である頭部を噛みちぎる。

 更に地面でのたうつアサルト・ローチ達にドゥープスの鞭やバラシのアダマンタイト・スコップ、そして周囲の戦士たちがトドメを刺した。

 レイクの衝撃波を避けた一匹がカサカサッと隅に移動する、他のメンバーの背後に忍び寄ろうとしたその頭部に突き立つ魔力の刃。にじり寄ったズミーレの刺突したメイジダガーが、アサルト・ローチの体内を変質させて内臓物を沸騰させると、液状化したローチがどろりと崩れ落ちる。


「一先ず右通路に進むぞ! 数人の人らしい気配がするし、ローチ達も少なそうだ」


 見事な連携で大群を殲滅した前衛達に宣言すると、率先して斥候を務めて歩き出した。この感覚だと向こうからもこちらを目指して近づいて居るらしい。

 こんな状況では少しでも味方を得るのは有難いし、何らかの有益な情報を持っているかも知れない。そう思って通路を曲がった時、遠く通路の端で、アサルト・ローチを蹂躙する金毛をたなびかせた巨大な獣人の姿を発見した。





「ブゴッ こいづをごの石の上においだらいいんだな ブゴッ」


 領主の館から丁度真下にあたる地下深く、上空に描かれた魔法陣の、そしてスナの作り出した溶岩外壁の中心に当たる位置に湧き出した闇から、黒豚が巨大なオーブを担いで現れた。


 目の前には外壁と同じ材質の溶岩石状の祭壇が作られており、その頂点には丁度担いで来たオーブを羽目込める位の窪みが出来ている。後は契約主たるダンジョン・マスターの合図と共に、担ぎ上げたオーブを嵌めるのが彼の仕事だった。


 何時もの癖でフゴフゴと周囲の臭いを嗅いだ彼は、ある方向でピタリと固まる。


「ンッ? ごれは、ごの臭いはっ! 奴だ、あいづにぢがいブゴッない」


 以前に痛めつけられた短弓使いの朧げな記憶が急速に蘇る。思えば奴を殺る為に強さを求めて今があるのだった。


「はやぐ来い、ゴブッ合図はやぐごい!」


 ムズムズと殺意が沸き立つ黒豚は、その衝動を抑えきれずにブゴブゴと鼻を鳴らした。


『黒豚さん、お待たせしました。さあオーブを嵌めて下さい』


 ダンジョン・マスターからの念話に喜び勇んだ黒豚は、高々と掲げた深紅のオーブをドンッ! と嵌め込む。その時、魔力の奔流が黒豚の全身を貫いた。


「「グググブブBUガガガGAァァァ」」


 ガチガチと歯を鳴らして痺れる黒豚の口角からは泡が吹き出し、全身の筋肉が硬直して血管が浮き立つ。余りの衝撃に失禁して白目を向く黒豚の手足は、意思に反して微動だにせず、オーブから離れる事も叶わなかった。


 次の瞬間、オーブから赤光の衝撃波が放たれる。それをモロに喰らった黒豚は軽く吹っ飛ぶと、地下室の壁に打ち付けられた。


 強か頭を打ち付けた黒豚が、めり込んだ岩を砕き己の体を見ると、分断せんが如きエネルギーの塊を受けて腹部がベッコリと凹んでいる。そして体幹の骨がことごとく折れて体内で嫌な音を立てていた。


「グググブブグッ ナンジャごんなもんっ!」


 胃の魔力渦に干渉すると、膨大な魔力を生み出して、怒声と共に瞬時に全身を回復させる。


「あいづの仕業がーッ!」


 精神操作されている黒豚は、全く関係ない人間に対して全ての怒りを注ぎ込むと、雄叫びを上げて闇の穴へと突進して行く。魔力消費による空腹がその蹴り足に拍車を掛けた。

 この際細かい事はどうでも良い、悪いのは全て奴のせいだ! という思い込みに取り憑かれた黒豚は、


『奴を喰う』


 短弓使いのズカを求めて迷宮化の進む街まであっという間に駆け上がって行った。



 誰も居なくなった地下では、赤光を充満させ臨界点に達したオーブが爆発的な魔力を解放した。それは丁度魔法人形が活動を停止したのと時を同じくし、膨大な魔力の奔流は周囲を巻き込んで巨大な城を形作る。


 後に〝生存都市〟と呼ばれる、前代未聞の街一つを飲み込んだ迷宮ダンジョンがここに完成した。

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