問題が起きたら先ずは殴るタイプ
今回は少し短めです。
狭い洞窟の入り口を進んだ先にある、封印木組の隙間を這い出た見張りの男は、手に持った松明を岩場に置くと、立ち上がるために膝に手をついた。
不審な音に気付いたものの、野良犬か何かと多寡をくくっているのか、特に警戒した様子もない。
立ち上がろうと頭を上げた次の瞬間、男の首が跳ね飛んだ。痛みも感じない程の一瞬の早業だった。
ガンキは洞窟から出て来た男の後頭部に例の小傷が有るのを確認するや、躊躇なく手斧を投擲した。狙いたがわず男の首を跳ばした銀の手斧はブーメランの様に、しかし重力に逆らって真上に軌道を変えてからガンキの手に返ってきた。
フーッと息をついで後続の者がいないか注意を向ける。足音や気配で単独の見張りと一瞬で判断したが、それが正しいとは限らない。だが今夜は勘が冴えている、後続の者も居ない様で一安心した。
街の警備隊員であるシュリは余りの即断即殺に呆気に取られていたが、同じ戦場を経験してきたイスル等は当然の事のように男を引きずり岩場に隠した。
辺りに飛び散る黒ずんだ血があるため、隠蔽は気休めにしかならないだろうが、死体がそのまま有るよりはましだろう。
その後、暗がりに転がった首を拾うと、後頭部の傷から種を抉り取ってシュリに差し出した。
シュリは嫌そうに一嗅ぎすると、首を縦に振って以前の種と同種である事を伝えた。
ガンキは手に返って来た投斧を血振るいすると、布で拭って刃の状態を確かめる。他の斧よりも鋭く刃付けされたエッジは、しかし、一点の刃欠けもなく怜悧な曲線を描いていた。
〝松明の赤斧〟と並んで、双斧と呼ばれる由来となった〝風の緑斧〟は握りに翼竜の羽皮を巻き付けただけの総ミスリル銀製の投斧である。
その重心に緑魔石が据え付けてあり、投擲者の操作によって多少のコントロールが出来る他、風の力で揚力を得たり、回転の威力を増す事ができるガンキ自慢の魔具だった。
投斧を腰の鞘に落とし込むと、封印木組の穴に身を寄せてシュリを呼び寄せる。
シュリの鼻と耳ですぐ近くには見張り等が居ない事を確認すると、音も立てずにスルリと穴をくぐって行った。
先手必勝、一気呵成が身上のガンキは「問題が起きたら先ずは殴れ」が生きる指針である。躊躇なく狭い木組をドンドン這い進むと、洞窟の入り口部分に辿り着いた。
後から続く者を待たず、先ずは周囲の気配を探る。幸い見張りは不幸な首なし男だけの様だ。
洞窟の作りは街の長老から聞いてある程度把握していた。木組みで封印される前の記憶なので曖昧な部分が多いが、概ね直線のシンプルな構造なので大きなズレはないだろう。
特徴的な入り口付近の青縞段石を目印に長老に書いて貰った地図と照らし合わせる。
『まだあの爺さん呆けちゃいない様だな』
ガンキが感心する程、地図は正確に実際の地形を表していた。
彼が地図を検証している間に、残りのメンバーも続々と木組を潜り抜けてやって来た。
最後に牛人族のタオだけが大きな体を木組に詰まらせて「アニキ〜助けてくれよぅ」と情けない声を上げる。
この後に及んで大声のタオに舌打ちしつつもジニに目配せをする、何も言わずとも意を汲んだジニはタオの側まで戻ると、地面に対して地形魔法を唱え出した。
ジニは地属性魔法、その中でも水属性をも取り込んだ〝泥魔法〟使いである。
特に戦闘向きでは無いものの、二つの属性をまたがる魔法を使える者は限られており、その希少性が強みと言えた。
呪文の詠唱を終えたジニが短杖をタオのお腹の下に向けると、地面の岩場が見る見る液状化していく。次の瞬間「あっ」と驚く巨漢のタオが泥沼に落ちた。
「うおっぷ、ひでーなこりゃ」タオが泥沼で膝をついて悪態をついていると、ガンキが襟首を掴んで引き寄せ「黙れ、次に騒いだら殺すぞ」と押し殺した声でタオを睨み付けた。
目を潤ませ酷く落ち込んだタオは「すまね〜すまね〜アニキィ」と両手を擦り付けて謝り倒す。
多分何も理解していないタオに『本当にこいつは!謝らんでいいから理解しろよ』と泣きたい気持ちになるが、同時にどうしょうもなく可愛く思えてしまう。
謝るタオのプルプル震える黒い鼻から鼻水が一筋滴り落ちて、キュン!と胸を締め付ける。
何の事は無い、ガンキはツヤ以上の親バカなのだ。
どうにかこいつを一人前にしてやりたいが、馬鹿は治りそうもない。突き放したいが可愛くて仕方ない。
一人葛藤するガンキを横目にイスルが「早くせねば機を逃し申す」と釘を刺した。
少し先の広場状に広がった空間でシュリが鼻を効かせて警戒している。
ガンキがそこに追いつくと「この奥に精霊付きと思われる男たちの臭いがするわ、人数はそう多く無い、多分数人だと思う」と言って近づいてきた。
ガンキの地図を覗き込むと「ここら辺」と言って広場状の空間から続く洞窟の先にある小部屋状の横穴の一つを指し示す。
その前後には何個もの同じような横穴が続いて、奥には行き止まりの空間があった。
音を極力立てないようにして横穴への曲がり角に張り付く、タオも今回ばかりは事態を察して静かにしている様だ。だが、固まり出した泥をべチャリと落としたり、それに慌てて転けそうになったりと、それなりにやらかしてくれている。
ガンキはそれを極力見ない振りで角に張り付くと中の様子を伺った。
どうやらシュリの言った通り、見張りの屯所の様な形で数人待機している様だ。
見張り特有の会話や椅子をズラす音などもなく、唯ただ数人の男が狭い穴ぐらに立ち詰めている様子を感じとり、今更ながら相手の異常性を感じる。
『まるで植物の様だ』がガンキの感じた印象だった。
中の様子を探っていると、後ろのシュリに肩を突つかれた。振り向くと軍隊式に〝まえ〟〝ちゅうい〟のハンドシグナルを送ってくる。
ガンキは小部屋から意識を離し、前方を注視するが、何も見えない。松明斧の灯りを向けるが、ヘビ道がウネウネと続くのみである。
シュリを振り向き後退の意を示すと、少し戻って「どうした」と聞く。
「もう少し進んだここら辺にまた数人分の臭いを感じる、あと、大変悪いニュースなんだけど」と言って一呼吸置いた。
「何だ?」ガンキの催促に促されて一言
「目ず魔がいる」
最悪の情報を提供してきた。
男の憧れ刃のブーメラン、ドラ○エVでは終盤まで使ってた記憶があります。
因みにロープレは最低レベルで、なるべく装備を買わずにクリアーするタイプ、鋼の剣を手に入れた瞬間がテンションMAXです。
最近は村人に話を聞くのが面倒臭くてやってません。




