種の属性
スマホ投稿なんですが、PC投稿ってなってますね。
やり方分からんっす。見づらかったスイマセンm(_ _)m
半裸の大女はズタズタに切り裂かれ、齧られた顔面は原型をとどめていなかった。
「ヒュー、ヒュー」と辛うじて呼吸をしているものの、深く斬られた傷からは、拍動の度に鮮血が流れ出ており、生きているのが信じられない位の重体である。
兎に角、回復水で治療しなければ! と焦るイザに、
『あたしはやだね』
スイはきっぱりと拒否した。
『このままだと死んじゃうよ』
何言ってんの? と驚き、焦るイザに、
『こいつがどんなやつか、あんたわかるの?』
先ほどの無謀な突進に怒ったスイは、逆に醒めきった調子で詰問する。
『いや、わかんないけど……けど、人間だよ! 助けなきゃ』
こうしている間にもどんどん失血して顔色が悪くなって行く。どうやらレッドマンティスにやられる前から、すでに重傷を負っていたようだ。森の獣道には点々と血の跡がついている。
『頼む! 僕を助けると思って回復水をつかわせておくれ』
イザの硬い意思を感じたスイは『やっぱりね』と呆れつつも、最後は了承した。
『ただし、保険として縛るわよ。あと今度勝手に突っ込んでっ行ったら、鼻の穴から枝を突っ込んで脳みそガタガタにいわすから!』
鉄木を鼻に突きつけられて脅された。
『絶対にスイを怒らせないようにしよう!』
心に深く刻みこんだイザは、スイの回復魔法に水魔法を同期させて行く。
鉄パイプの先端から溢れ出る青く光る水が、大女を包み込むと、一際眩い光を発し吸収されていった。
かなりの深手を負っているせいか、今回は余す所なく吸収される。後には光に照らされ、完全に治療された本来の姿が現れた。
『綺麗だ』
鉄木の寝台に手足を拘束されているものの、上半身剥き出しの大女は、金色の体毛を輝かせ、生命力に溢れた素晴らしい肉体美を曝け出している。
肩から腕にかけては、かなり立派な金毛がフサフサと風にたなびき、剥き出しの立派な乳房から腹にかけて、小麦色の肌が艶やかな光沢を放っていた。
皮膚の下には、膨大な筋肉が詰まっているのだろうが、力なく横たわる姿は、手足が長く、女性らしくしなやかな印象である。
今は苦痛から解放されたせいか、安らかな寝顔を浮かべていた。
しばらくボーッと見惚れていると、
「うーん」
と女が身じろぎした。
慌ててその場を離れたイザは、放り出した背負い袋の所に行くと、毛布を取り出して女に被せる。
裸に見惚れていたことに恥ずかしくなって真っ赤になる、そんなイザをスイはシラけた感情で見守った。
辺りを見回すと、女の持ち物であろう、イザの背丈程の大剣が足元に転がっている。その他は地面に転がるポーションらしき空き瓶と、ズボンのベルトに付いたポーチ以外、何も持っていないようだ。
その時〝グーーッ〟っと女の腹の虫が鳴った。
何か食べさせようとしたが、如何せんここに長居すると、何時またレッドマンティスの様な魔獣が現れるかもしれない。
急場凌ぎで薄めの肉水を生成して女の喉に流し込むと、
「ゲホッゲホッ!」
いきなりの水分にむせながらも、手のひら一杯飲み切った女は、一瞬元気を取り戻し、起き上がろうとして、鉄木の戒めにガクン! と止められ寝台に倒れこんだ。
かなりの衝撃にも目覚めずに、うなされる女。怪我は完治したはずだが、まだ体調が優れないようだ。
「大丈夫ですか?」
イザの問いかけに反応し、目を開けた女は、虚ろな目で周囲を見回す、覚醒しないながらも、縛られて裸になった状態である事を悟った。
「グルルルルル」
と、獣の様な威嚇音を発して、手足の戒めを解こうと力を入れる。だが、力が出ないらしく、眩暈を起こした様にうなだれる。
『何かおかしな状態になってるみたいね』
スイが考察する。
『体内の精気からして、毒や病気ではないようだけど、闇の精気が強い。魔法や呪いにでもかけられたか?』
だとすると自分達ではどうにも出来ない。なんとか人間の集落まで行って治療してもらわねばならないが、本人が歩いて行く事は出来るのか? とてもではないが、イザが抱えて行くことは出来そうになかった。
「声はきこえますか?」
女の耳元でゆっくりと話すイザ、何回か話しかけると、頷いた。ゆっくり噛み砕く様に、自分が旅の途中の通りすがりである事、たまたま魔獣に襲われている女を助けて治療した事等を話した。
女は苦しそうにしながらも一生懸命話を聞くと、力なく、
「ありがとう」
と感謝の気持ちを伝えてきた。
意思の疎通が出来て嬉しくなったイザは、自分の名前を名乗ると、女の名前も聞き出す。
女の名前はラヴィ・レレ、ラヴィと呼ぶ事にした。
朦朧状態で彷徨ったあげく、魔獣に襲われて荷物を無くし、傷を癒すポーションと金目の物だけは持っていたものの、ポーションも使い果たしてしまったとの事。
ともかく詳しい話は後にして、移動出来るかどうか、立ち上がりを助けると、フラフラしながらも、何とか立てた。
女の話を根気強く聞くと、少なくとも森の中よりは少しでも街に近づく方が安全だろうと言う。
問題はイザの身長ほどもある大剣である。ラヴィを抱えて大剣まで抱える事は無理だ。一先ず置いて行こうと提案するも、
「命よりも大事な剣だ」
とラヴィはどうしても大剣をあきらめない。
途方にくれるイザに、
『しょうがないね、助けてほしい?』
スイの助け舟がでた。
『お願い!』
と軽く言うイザに、
『お願いしますでしょ!』
すっかり主従関係の出来上がったお種様のお言葉。
『お願いします!』
言い直したイザに
『しょーがないな〜』
と、鉄木をラヴィに纏わせる。いきなり木が纏わり付く事にもがこうとするラヴィに、草魔法の事を説明するイザ、どうやら危害を加えられないことを理解したのか、大人しく従うようになった。
全身に纏わり付いた、スイの動かす鉄木が助けとなり、何とか歩くことが出来る様になったラヴィ。
『あんたは剣をもって! あと、私は鉄木のコントロールに集中しなくちゃいけないから、周囲の索敵はあんたがしなさい!』
イザは重い大剣を抱えつつ、索敵しながら歩く事になった。
『全く、甘ちゃんだわ、なんだかんだで私も助けちゃってるじゃない。手の内まで晒しちゃって』
スイは自戒する、だが、イザがスイに影響されて、戦闘等の危機的状況で精神的に強くなった様に、スイも知らず知らずのうちにイザの感情的な部分に影響されてきていた。
今ではイザの人間的な優しさも、甘さも、何だか悪くは無い物の様な気がしてきている。あくまでほんの少しだが。
ラヴィは草魔法のサポートを受けても、中々思うようには進めなかった。こんな状態で魔獣に襲われたらひとたまりも無いだろう。
街まではまだまだあるとの事なので、森を抜けた中間地点の丘に野営する事にした。
ラヴィに纏わせていた鉄木を丘の斜面に移し替える。スルスルと成長した木はこんもりと茂ると、ドーム型のテントを形づくった。
『思えばこの木には世話になりっぱなしね』
スイの言う通り、突撃鳥の襲撃から今まで、同じ木を使い続けているのだ。
イザもこの木に愛着が湧いてきた。
『私の魔力を注いでいる間は枯れることはないわ』
スイが自慢気に言う。
ラヴィは不思議そうにテントの内側から木を叩いて感心した。そこへ、
「どうしたんですか?何か悪い魔法でもかけられましたか?」
イザが率直に切り出した。早いこと対策を取らないと、帰るに帰れない。もうすでに、ラヴィの復調を見届けるまで付き合う覚悟を決めていた。
ラヴィはゆっくりとではあるが、包み隠さず髑髏や少女との戦闘を語り、黒い靄の影響が未だ晴れない事を伝えた。
「何かの呪いにかかったんだと思う」
朦朧とした頭はあの時のまんまだ。余り思考が纏まらないが、時間を掛けて考える。
「今から向かう街には教会がある、そこなら詳しい事が分かるかもしれない」
一縷の望みを掛けてラヴィが訴えたので、明日一番に尋ねることにした。
ラヴィは思う、
『こんな事何でもない』
自分には果たすべき使命があるのだ。
幸いイザという少年は信用出来るようだ。いままでの事にも恩義を感じているが、もう少し甘える事にしよう。
貰った木の実を噛み締めながらラヴィは少年を見る。真っ暗な中でテントの隙間から、月明かりが少年の寝顔を照らした。
「感知魔法が効いているから大丈夫」との事で、ぐっすり寝ている少年。
何とも愛嬌のある顔に癒されて、少年を抱える様に横になった。
そして少年の髪を撫でると、そのまま眠りに落ちた、スイが見ているとも知らず。
『厚かましい女! 治ったらこき使ってやる』
昼間っから働き通しでご立腹の〝お種様〟スイ、この瞬間彼女に〝女王様〟属性が付与された。




