表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄パイプの魔法使い  作者: パン×クロックス
第二章 タガル大陸へ
34/128

ズミーレ探検隊②「異常金塊」後編

「ギャン!ギャギャン!ギャンッ!」


 二頭の魔犬が狂った様に吠える。犬使いでなくとも異常事態だと言う事がすぐに分かった。

 どれ位の奥行きが有るのだろうか? 部屋と言うにはいささか広すぎる空間、その全てが黄金に輝いている。


 金に照り返す部屋を前に、しかしゴールドサージのメンバーは皆一様に困惑の表情を浮かべていた。

 生命反応は眼前の金塊から発せられている。


 難解な遺跡に挑み続けたメンバー達は、これが只の宝物で無い事を肌感覚で察知している。


「バラシを呼んで来い」


 初めに反応したのは、やはり、リーダーたるズミーレだった。


 古代に於いてすら、金という物は貴重な資源だった。魔具などは、当時の感覚で言う所の家具の様な物に過ぎなかったが、金は天然資源に頼るしかない、有限の貴金属だ。

 一部の魔法にも依り代として使われるなど、当時は利用価値が付加されて、現在よりももっと価値が認められていたはずである。

 その金がここまでプールされているとすれば、当時の国家予算すら凌駕してしまうのではないだろうか? そんな疑念が目の前の光景を更に不気味にさせる。


 一つだけ、ズミーレの古代の知識に引っかかるワードがある。


 〝錬金術〟


 古代の魔導師達がこぞって挑み、失敗して行った夢の魔術。数多の天才魔導師がその生涯を捧げて、なんの成果も為さずに朽ち果てた最難関の魔学。


 ズミーレの知る古代魔導師の一派に錬金に極めて近づいた者たちがいた。

 〝ロング理論金属錬成派〟行き着いた魔道の果てに〝生金生成〟という極めて錬金に近い術を編み出したと言う記録を、貴重な遺失級魔道書で読んだ事が有る。


 もしそうだとすれば、ここは彼らの研究所なのか?考察に埋没するズミーレを他所に、今だ金塊に生命反応を感じる魔犬達は吠え続け、主人に危険を知らせ続ける。


「こりゃあ凄いな」


 後衛グループからやって来たバラシが部屋を覗き込む。


「早速だが、土魔法でこいつが何なのか調べてくれ」


 ズミーレの指示の元、地面に両手を付いて土魔法〝鉱石解析〟を掛ける。魔力がバラシを中心に半径を広げると、その空間に有る地属性の物質が全て知覚される。


 その魔知覚が金塊に触れた瞬間、膨大な情報がバラシの頭に襲いかかった。


 情報の嵐に晒されバラシは「うっ」と唸り、地面から手を離してのたうち回る。ゴールドサージいち丈夫な男が、苦しみのたうつ。こんな姿は見た事が無かった。その時、


 〝ボコッ〟


 という音と共に、部屋を埋め尽くす膨大な金塊が沸騰した!


 治癒師のレジットがバラシの元に駆け寄り、光魔法を唱える。


 最前線のオースは、魔具である全身鎧と大盾を発動させて一歩前に進むと、すぐ後ろの先生が着物の懐から結界札を取り出して「えいやっ」と変な掛け声で投げつけた。


 液体化して、津波の様に打ち寄せる黄金の波は、しかし、先生の張った結界によって間一髪、部屋の中に封じ込められた。


「撤退!」


 大音声で号令を下すズミーレ、弾かれた様にバラシを抱え後退する後衛陣と、魔法を掛けながら付き添うレジット。


 前衛組も巨大な扉を閉めると、順次下がっていき、現場にはズミーレ師弟と盾のオース、結界を張り続ける先生のみとなった。


 先生には悪いが、バラシを一発でノックアウトした敵である。少しでも離れると結界を破られる可能性があった。


 オースは何があってもズミーレを守る盾として、動かない。


 ズミーレは手元の赤い魔法印を千切ると、補給部隊のアートに〝緊急離脱用意〟の合図を送った。


 最後まで粘って、テレポートで脱出する用意だ。集団テレポートには時間が掛かる。


 それまで先生に頑張ってもらうとして、ズミーレはメイジダガーを取り出すと探知魔法を発動した。


 バラシの二の舞にならない様に、耐魔の刺青に、保険としてスピークの精神魔法による二重の防御を掛けてもらう。


 メイジダガーの刃が扉の隙間に入り込むと、突然、膨大な情報がズミーレを襲った。


 一瞬でスピークの防御を破ってきた、慌てて刃を消すズミーレの頭頂部に彫られた刺青が耐性魔力を発揮して赤々と光る。


「危ね〜」


 チリチリと熱くなる頭を撫でながら、思わず後退して先生を見る。


 東方魔法は少ない魔力で最大の効果をもたらす優れた術式を用いる、が、今の先生は大粒の汗をかいて必死に魔力を振り絞っていた。


『そうもたないな』


 一瞬最悪の事態も考えたその時、アートの発動した魔法陣が現れ、4人を包んだ。


「そいっ!」


 また、へんな掛け声で先生が新たな札の束を扉に投げつけると、次の瞬間には最初に発見された隠し扉に飛ばされた。


 誰も居なくなった室内には最後に放たれた結界札によって厳重に封印された扉。


 暫くドン!ドン!と黄金塊が扉を叩く、段々形を変え、金色の突進型魔獣が10体、波打つ金塊の表面に生み出されると、繰り返し繰り返し突進した。

 最後には扉全体に張り付き、封印に対抗して魔力干渉するが、先生の札に邪魔されて力を逸らされてしまうーー


 ーーそれから数刻、諦めたのだろうか? 部屋は嘘の様に静けさを取り戻し、黄金塊は最初の状態で壁にピタリと張り付いた。




 最初の隠し扉まで撤退したズミーレ達は、唯一の負傷者バラシの元へと向かった。レジットはまだ治療中の様で、魔光が明るく輝いている。


「大丈夫か?」


 ズミーレの声掛けに、


「何とか」


 と言いつつヘルメットを見せる。内側に貼られた護符の内、耐魔札のみが焼き切れていた。


「今回は先生様々だな」


 というと、隣に来ていた先生の肩に手を置く。


「あいつは何だ?きっちりはまった術式でここまで抵抗された事など無いぞ」


 歴戦の先生でも相対した事の無い位、魔力量が桁外れだった様だ。


「俺も、触れただけで精神を侵されるなんて、上位悪魔クラスの精神汚染とみていいな」


 バラシの意見にズミーレも同意する。弟子のプロテクトと耐魔の墨が無ければ、自分の頭も焼き切れていただろう。


「一旦撤収だ。先生にはすまないが、最後に隠し扉も封印しといてくれ」


 ここまで来ての足止めに無念はつのる、が、古代遺跡はそう簡単に攻略出来る物でも無い。


「気を引き締めて引き返すぞ! 帰ったら酒をおごってやる」


 収穫の無い一行は、正直重い足を運ぶ。この場所とて安全では無いのだ。遺跡外に設置したベースキャンプでの酒宴を心の支えに、一先ず今回は大聖堂を後にした。


『絶対攻略してやる』


 全員の心に確固たる意思を宿して。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ