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鉄パイプの魔法使い  作者: パン×クロックス
第二章 タガル大陸へ
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ライカ・ローリング・ストーン②

  「こっちは任せろ! 水狼達を頼む」


  戦闘が続き、大声で指示を出すライカに従う手下は10名を切った。各々その場で出来上がった連携で水狼の群に向かって行く。


  そう言うライカは酸性雨の臭いで鼻をやられ全身の疲労と痛みを抱えつつも、前方で暴れるシーサーペント亜種に挑み掛かろうと馬首を翻す。

  その巨体に普通の武器は効かず、通るとすればライカの大剣位との判断だ。


  同じくソウジャもグレイウルフを操り遠方から矢を射かけてシーサーペントの注意を引いた。少し前から二人は自然とタッグを組み出している。


  ソウジャの矢が巨大な右目に命中すると、シーサーペントは巨体をくねらせて暴れ出す。

  大質量の鞭と化したシッポを除けつつ、頭部に駆け寄ったライカは勢いそのまま重い剣で斬りつけた。

  分厚い鱗の中に、巨体に見合った太い骨と筋肉が詰まったシーサーペントは、大剣の重い一撃を喰らいつつもライカを追って鎌首をもたげる。


  「チッ」


  以前の斬れ味を見せない衰えた斬撃と、感覚の狂った五感に苛立ちつつも、面と向かった巨大な口に思い切り突きを食らわせる。が、牙に阻まれてうまく刺せない。

  あわや噛み砕かれようとした時、緑の光に包まれた矢がシーサーペントの頭を貫いた。


  地響きを立てて倒れる怪物に、念のため斬撃を食らわせて死亡を確認すると、振り返り礼を言うライカ。

  風魔法で強化された矢を撃ってトドメを刺したはずのソウジャは、無言で制すると尚も矢をつがえた。

  振り返るライカの頬を猛スピードの触手がかすっていく。その時生気を吸われて一瞬気が遠くなった。それはシーサーペントの死体から這いずり出た目ず魔の触手攻撃だった。


  「目ず魔の触手に触れると生気を吸われるぞ!」


  周囲に注意を発しながら距離をとる。クロスボウを引き、矢をセットするライカ。こいつに接近するのは勘弁して欲しい所だ。


  その目ず魔は、近場にいた魚人を精神魔法にかけると、触手を絡ませて生気を吸い続ける。そして魚人を抱えて盾にしつつ、新たな獲物を探してジリジリと移動した。


  その周囲を囲むも、先程の風魔法で魔力切れ間際のソウジャ。決定打を打てないライカ達は何か策はないか? とお互いを見あった。





  水狼の群を任された歯欠け(名をハッサンと言う)達は、土魔法使いを仮のリーダーとした臨時のパーティーを組んでいた。


  土魔法の壁で防御しながら弓使い3人が遠距離攻撃を繰り出し、尚も接敵して来た所を盾戦士2名が受け止める。その後ろから槍使いのハッサンら2名が突き殺す形が出来つつあった。

  混戦状態の中、たまに危うい場面もあったが、土魔法使いのスナが的確な指示を出して何とか持ちこたえる。


  就任したばかりの支部長や、流れ者で自分よりも若い女のスナを最初は侮っていたハッサン達も、極限状況で実力を発揮する二人に今では素直に従っていた。


  水狼が一匹、土魔法の壁を飛び越えて来た。ハッサンが槍を上げて迎え撃つも、かするのみで右手に着地すると後ろに回り込まれる。そこに盾戦士が一人、素早く水狼の前に立ちはだかると、ハッサンら槍使いが同時に襲いかかった。


  「ギャワンッ」


  一匹を倒した、と、その間に壁を回り込んだ三匹が襲いかかって来る。止む事のない水狼群の猛攻に手詰まりになり掛けるハッサン達、周囲を見ると10匹単位の水狼群がグルリを取り囲んでいる。


  正念場と見た彼は懐からとっておきの切り札を取り出すと、


  「皆下がれ!」


  大声で怒鳴り、魔法印の描かれた種を口に含み噛み砕く。次の瞬間、ハッサンの顔面が火を吹くように真っ赤になると、体中の血管が生き物の様にのたうった。


  「プフーーッ」


 熱を帯びた息吹を吐く。〝火種〟と呼ばれるドーピング魔法薬を飲んだ赤ハッサンは


  「きえぇぇぇーっ」


  と奇声を発しながら水狼に突進していった。






  目ず魔は触手を振り回し周囲を威嚇しながら少しずつ移動していた。深海族の操作で狙いは最早、青の湖から魚人族の重要人物奪還に変わっている。


  ライカやソウジャが遠巻きから矢を射かけても硬い殻に阻まれて通らない。また、半死状態の魚人を盾にされて当てる事さえ難しかった。


  その時、近場に潜んでいた水狼の群れがライカ達に飛びかかった。クロスボウを放り、居合一閃切り裂くライカと、距離をとって射抜くソウジャ。

 その隙に、ジリジリと後退していた目ず魔は姿をくらます。


  近場で指揮を取るギョランの元まで一気に這い寄る目ず魔は、狙いを魚人族の指揮官に絞ってきた。

  既に一匹の目ず魔と対峙して居たギョランは、混戦の中で護衛から少し離れてしまっており、単独で挟み撃ちに会う羽目になった。


  近づきながら精神魔法を発動させる目ず魔達に、


  「めんどいな〜」


  と言いつつ水盾に魔力を込めて盾魔法を発動させると、青い光がブワッと広がって辺りを包んだ。


  尚も近寄る目ず魔に「ソイッ」と気合い一発盾を押し付けると、水盾が膨らんで目ず魔にこびり付きその部分が分離した。

 見る見る真っ黒に変色する水は、目ず魔ごと地中に埋まり出す程重くなり固まる。


  もう一匹にも盾を向けると、サッと避ける目ず魔。しかし、避けた先には既に生み出された水球が有り、取り込まれてしまう。

  ワチャワチャと触手をうねらせて抵抗するも、水球はどんどん絡まり付く。シュウシュウと煙を上げて溶け出す目ず魔は、強酸水に完全に溶かされてアッと言う間に液状化してしまった。


  余りの手際に駆け付けたライカ達も唖然と立ち尽くす。


  「ボーッとするでねぇ! 行くぞ!」


  制圧しつつある戦場をズンズン進むギョランに従う護衛達、続いてライカとソウジャも付き従った。

  行く手には、ハッサンの活躍で一気に有利になり、水狼群を殲滅したスナ達が小休止していた。


  ライカが手を上げて合図を送ると、


  「頼みますよ〜どこ行ってんすか」


  と言いつつスナも笑顔で返す、他のメンバーも概ね無事の様だ。

  地面には全てを出し切って腰を抜かしたハッサンがへたり込んでいた。


  「生きてたか」


  ライカの声に〝ニへラッ〟と笑うハッサンの前歯はーー全滅していた。


  10年前の、青の湖での地形が変わる程の激戦は、魚人族の勝利で幕を降ろした。

  多大な犠牲と周辺諸族への深い影響を残して。


  深海族との戦争はそれから一年続いたが、それはまた別の話。

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