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鉄パイプの魔法使い  作者: パン×クロックス
第二章 タガル大陸へ
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ライカ・ローリング・ストーン①

回想回、二話に跨りました。

 イザとソウジャの話をまとめた二日後、二人は揃ってピナカ村を出発していった。

 ライカはソウジャなら安心、と、見送った門から店に帰る。それにあの少年、ギョランの弟子として、師匠から命を受けて来るからには相当使えるはずだ。


『しかし、ギョランにソウジャとは、あの日を思い出すな』


 ライカは始めてギョランやソウジャと会った時の事を思い出していた。





 栗毛の馬が艶やかな毛並みを躍動させて疾走する。

 ライカが戦場馬として愛用して来たブルナー種の大型馬は、老いたりとはいえ、まだまだ息盛んだ。


 10年程前、ピナカ村ハンター支部長として赴任して来た当時のライカは、前年まで現役バリバリの魔獣ハンター兼傭兵だった。

 人犬族特有の嗅覚と身体能力で数多の戦場を生き抜いて来た凄腕の戦士も、40という歳には勝てずにそろそろ引退を考え始める。


 愛用のバスタードソードは鋼より重くて硬い黒鋼の刃金と、更に重い粘鉄の地金の鍛接製で、つまり非常に重い。


 それに軽量化を図っているものの、板金補強された皮鎧と円形盾、短剣、遠距離用のクロスボウを装備すると、長年酷使して来た腰や膝に鈍痛が出て、動きに精彩を欠くようになって来ていた。


 そんな彼の面倒見の良さが見込まれて、前から誘われていたハンター支部長就任を決めて村に到着した頃、湖水地帯に危機が訪れようとしていた。


 魚人族の因縁の敵、深海族の襲来である。


 結果、現役引退直後の任地で、皮肉にも重たい大剣を背負って馬を走らせる羽目になってしまった。


 人に魚の要素を足した様な魚人族に対し、知能だけ進化した魚という感じの深海族。

 異なる種族間には浅瀬と深海という棲み分けができていたが、領土問題で対立が激化した10年前に戦争状態に陥る。


 深海族は浅瀬までしか出られないが、その分海の魔獣を調教、発達させる育成技術により陸に適応させて襲来した。

 水狼や人喰蟹のほかに半陸生のシーサーペント亜種などの大型モンスターの姿もあり、それらを率いる〝目ず魔〟達も攻めて来た。


 〝目ず魔〟とは、大きな目と、強靭な多触手、それらを覆う硬い殻に包まれた人間大のモンスターで、精神魔法を使い、他のモンスターを操ったり、敵の動きを縛ったりする厄介なモンスターである。


 魚人族も軍隊を出して抗戦するが、如何せん水魔法に強いモンスターが多く、ジリジリと前線が魚人族領土まで食い込む程進攻して来た。




 魚人族の聖地、青の湖も領土的野心のターゲットであり、大量の深海軍と守り手の魚人族による戦場と化していた。


 ライカは魚人族の依頼で魔獣ハンターを組織して、護衛の任務に付くため、在籍するハンター15名(歯欠けも居た)を率いて青の湖に向かう。


 魚人族は商売上、外交に優れており、周囲への働きかけから近隣の集落より各種獣人の戦闘部隊も集結していた。

 その中でもライカの部隊は最も数が少なく、また、新米支部長が率いる急造部隊の為、守備固めとして魚人族の大隊に組み込まれたーーそこに居たのがギョランである。


 ギョランは既に集落の長を辞めていたが、青の湖の護り人として大隊を任されていた。そこは激戦地である沿岸部から離れた地域に当たるため、それ程の大軍を回されていなかったが、それでも総軍1000を超える人数が集結していた。






「前線が崩壊、敵主力が来るぞ!」


 叫びながらグレイウルフにまたがる草原エルフの少年が、ギョランの大隊に駆け込んでくる。

 それは傷を負い、半分ずり落ちながらも必死に本営に伝令を果たしたソウジャだった。

 草原エルフの小隊はその機動力を買われて最前線の遊撃手を任されている。その部隊の少年兵であるソウジャは、ギョランの元に辿り着くと、


「前線は大型モンスターによって壊滅状態、敵大隊はすぐにも本営に来ます」


 と息せき切って一気にまくし立てた。今は遊撃部隊が時間稼ぎをしているが、焼け石に水だという。


 ソウジャの治癒を済ませたギョランは覚悟を決めた。水魔法で三又槍と盾を召喚すると、ドンッ!と床を叩き


「精霊魔法用意!」


 大音声で命令を下した。


 車座になった魚人族の上級魔導師が10名、総ての魔力を捧げてそれを一点に集中させる。


「展開!」


 一点極が フッ と消えると、青の湖から〝どど度ど怒ッ〟と水竜巻が立ち昇り、天高く消えていった。


 10名の魔導師がドサリと倒れる。皆同様に血の気が引いて、中には絶命している者もいた。

 と、戦場の前線上空に暗雲が広がり、そこだけスッポリと暗がりになる。



 ーー次の瞬間ーー



 〝ドザーーーッ〟


 豪雨が降りしきり周囲に霧が立ち込めた。


 〝ギャーーッッ〟〝グエエェェェッ〟


 戦場の有りとあらゆる生物、無機物迄も巻き込んで溶かす酸性雨。

 遠く魚人族の本営迄、ものすごい臭いが漂う。


 少し空気を吸い込むだけでムセこむ中、雨が上がると、ポッカリ丸はげになった戦場が有った。一応前もって知らされていた魚人族側の戦士達も余りの威力に絶句する。


 そんな中、


「戦闘陣形をとれ!」


 冷徹なギョランの声が響く。


 我に返った魚人軍が隊形を整えると、丸裸の戦場の後方から生き残りの深海軍モンスターが押し寄せて来た。

 半分溶けながら進み、死に絶えてもその上を乗り越えて後続が進軍して来るモンスター達と、迎え撃つ魚人軍。戦場はもつれ合いカオスと化した。

次回、歯欠けが躍進!

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