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鉄パイプの魔法使い  作者: パン×クロックス
第二章 タガル大陸へ
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草原地帯

 ギョランの洞窟に入ったイザは、青の間であった事を興奮しながら微に入り細に入り話した。

 ギョランは黙って聞くと、


「そんじゃ、ひとまず一人前だべ」


 と独りごちた。その言葉に修行のおわりか?と意気込むイザを制して、


「まだ力を得ただけだ、まだまだ実戦じゃ使い物にならねーべ」


 と言い、湖水地帯の北に広がる大草原地帯での実戦が課せられた。

 様々な戦場サバイバル術を鍛えてきたが、実際戦うとまた勝手が違うものだ。

 そこで草原に住む魔獣を10体狩って体内の魔石を集める事が課せられた。


 ゴブリンとの戦いしか経験のないイザは内心ではビビりつつも、新たに手にした力を試す良い機会と思い気合を入れる。


『やるぞっ!』


 スイにハッパをかけると、


『死なない程度にね』


 と水を掛けられた。




 翌日から徒歩で一週間掛けて草原地帯へ移動する。湖水地帯との端境にある小さな村に立ち寄ると、小さな雑貨店で食糧や消耗品を調達した後で酒場にむかった。


 村に一件だけある酒場はそれ程広くなく、昼間っから飲んでるオヤジ達が一組居るだけ。彼らにジロジロと見られる中、カウンターの店主の元に向かう。


「いらっしゃい、子供に酒はだせないが軽い食い物ならあるよ」


 犬族の血が交じり黒と茶のブチ模様の店主は腕を組みながら話しかけてきた。犬顔の左耳から頬にかけて長い切り傷の痕があり、引きつれた笑顔を向ける。


「じゃあ、ご飯と水をください」


 イザは荷物を隣の空きスペースに置くと、カウンターにある高椅子に腰掛ける。肩に掛けていた鉄パイプを股の間に立て掛けた。


 鉄パイプには打撃の痺れ防止、そしてすっぽ抜け防止のためにギョランが目なし鮫の皮を巻いてくれている。その端は輪っかになっており、手首に通せる様にしてくれていた。


「坊主えらい荷物だな、どっから来た?」店主は手元で飯を用意しながら尋ねてくる。

 大皿に潰し芋と、何か分からないが肉と豆を煮込んだ物を大胆に盛り付けた。

 出された皿を受け取りながら


「青の湖です」


 と答えると


「へーっ、ギョランのじい様はまだ元気かい?」


 と尋ねられた。彼はどうやらかなりの名物爺さんらしい。


「元気にしていますよ」


 と言うももどかしく、久しぶりの肉料理に堪らずがっつく。

 ギョランの所では、魚料理はまだしも、蒸した芋虫や水生昆虫の佃煮などの虫料理がメインで出て来て、動物の肉などは一切口にしなかった。

 その料理は正直人の口には合わなかったが、飢餓を経験し、肉水を常飲しているイザにとっては栄養のある食事はありがたかった。

 結果、食糧調達担当のイザは、虫捕り、魚とりの名人となっていた。が、正直まずいものは不味い。


 久しぶりの肉料理は涙が出る程美味かった、いや、本当に涙と涎が止まらなかった。

 泣きながらがっつくイザを見て嬉しそうに目を細める店主。


「そんなに美味いか?」


 と尋ねると


「ふまいでふ」


 口いっぱいに芋を頬ばったイザが無理から答える。

 芋に染みた肉汁の味が何とも言えず美味い、その後豆を噛むと独特の旨味が染み出て来て止まらなくなった。


 しばらく黙々と食べ続け、綺麗に平らげると満足気にフーッと一息ついて水を飲む。

 そこで〝ハタ〟と本来の用事を思い出した。


「ごちそうさまでした、すごくうまかったです」


 店主は嬉しそうに頷くと皿をかたずけた。


「ところで、草原の魔獣について知りたいんですが、師匠にここにいるライカさんって人に聞いて来いといわれたんですが、教えてもらえますか?」


 イザの言葉に店主は少し目を細め、


「魔獣について知ってどうする?」


 とたずねると、後ろの席から


「僕はハンターになるんだよな!」


 と、歯欠けのオヤジが囃し立てた。


「もうなってます」


 イザはまじめに受け答えすると、背負い袋から証である木札を取り出す。


 真っ赤な木札は遺跡の契約をした際に貰ったイザの身分証だったが、それはつまり、バイユ王国ハンターに所属している証だった。

 しかも赤札は外国でも使える自由権がある証として特別視されている。

 本来は実力、実績の伴ったハンターにしか支給されないが、他の大陸へ旅立つイザにダグラスが手配して、ダグラスとの組員登録をする事により、特別支給が認められた物だった。


 からかったオヤジは間抜けづらでイザを見るが、店主はサッと本物である事を確認すると


「サッサとしまえ、そんなもん余り人に見せるな」


 と言いつつイザの手を押して赤札をしまわせた。


「いいか坊主、その木札は唯の身分証じゃない。悪いやつの中にはそいつで商売するのもいる位貴重品だ。だから本当に必要な時だけ出して使うんだ。まあ、普通に奪っても本人にしか使えないんだがな」


 と言って懐を探ると自分の赤札を見せてくれた。


「こんな小さな村だからな、俺が酒場の店主兼、ピナカ村ハンター支部長のライカだ、坊主、本気で魔獣狩をするつもりなんだな」


 頷くイザに、


「奥の席で話を聞こう、案内出来る男を呼んでやる」


 と言うと、歯欠けオヤジに大銅貨を投げよこし、


「悪いがソウジャを呼んで来てくれ、昨日からダルクの親爺さんの手伝いに来てるはずだ」


 と言うと有無を言わせずに追い出した。


「たまらんなー」と言いつつも嬉しそうに銅貨を手のひらでもてあそびつつ出て行ったオヤジに、


「はやく呼んでこいよ」


 と念を押すと、イザを奥の席に座らせ話を聞いてくれた。

 紹介料や契約の内容、イザの目的や能力などを聞かれたイザは、能力については刃水噴射の事と、水分感知、隠蔽行動、棒術のみを話して置いた。


 ギョランからもダグラスからも、自分の能力はなるべく秘密にしておく様に何度も注意されている。

 特に肉水作成や、スイとの協力技である回復水や、草水の盾の魔法は、イザの切り札と言え、隠しておく事の重要性を重々説得されていた。


 先ほど赤札を見せてしまったのも、店主に指摘されて、そういえばダグラスからも余り人に見せるなと言われていた事を思い出した。


『まだまだ甘いな〜』


 と突っ込んでくるスイに、


『ゴメン』


 シュンと反省していると、店のドアが開く。先程の歯欠けが、


「ライカさん、ソウジャを連れて来たぜ」


 見れば歯無しの後ろにはイザより頭一つ背が低く、細身の人が立っていた。


 弓を背負い馴染んだ皮鎧をきた目付きの鋭い男に、


「呼びたててすまんな!仕事の件で相談があるんだ」


 と言うと、椅子を引いてソウジャを促す。


「ダルクの親爺さんとこの仕事はもうおわりかね?」


 黙って頷くソウジャ。


「少し込み入った仕事を頼みたいんだが、できるか?」


「内容次第だな」


 始めて聞いたその声は女性のように高かったが、不思議と落ち着きを感じる物だった。

 よく見ると耳が細長い。妖精族の特徴なのだが、イザは知らないので不思議に思って無遠慮にジロジロ見続けている。


 振り向いたソウジャと目があった、しばし無言で見つめ合うと、


「だれだ?」


 とライカに尋ねる


「今回の依頼主イザだ」


「イザ、こいつはソウジャ、草原エルフの狩人で、この辺一帯の草原の事で知らない事はない奴だ」


「始めまして」


 とイザが握手の手を伸ばすも、こくりと頷き返すだけで手も出してこない。


「こいつは無愛想でな、余り喋らんがその分信用できるぞ」


 喋りの得意ではないイザにもありがたい。するとスイが『風の精気を感じる』と念話を送ってきた。

 風魔法使いか? 弓を持ってるという事は魔法弓兵なのかも知れない。

 憧れの魔法戦士登場? に、ますます興味の湧くイザはなんだか楽しくなってキラキラした目でソウジャを見つめた。

大銅貨=10銅貨です

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