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ザ☆旅行記Ⅶ 奇貨おくべし  作者: 小宮登志子
第11章 キラキラした小箱
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小箱の中にあったもの

 小箱の中にあったロケットは、金(であろう、多分)をベースにして非常に繊細なレリーフが施され、随所に宝石が散りばめられている。

「おお~」

 プチドラは、今度は感嘆の声を上げた。プチドラもビックリするくらいだから、相当に高価なものなのだろう。そして、ロケットに収められていたのは、なんだか弱々しげな若い男の肖像画。

「アンジェラ、これは誰?」

「父というふうに聞いていますが」

 あの「子連れマンモス」も若い頃は……などと、ボケをかましている場合ではない。もはや、あのオヤジがアンジェラの父親ということは、あり得ないだろう。

「アンジェラ、あなたの本当のお父さんは、オヤジ……いえ、この宿のオーナーじゃなくて、別の人?」

「はい、さる高貴なお方ということです。会ったことはありませんが、ロケットは、その方から贈られたものだそうです。後になって、母がわたしを連れて再婚したのが、今の、いえ、今は亡き……」

 アンジェラは涙ぐんだ。気丈だけど、やはり、まだ子供。あまり根掘り葉掘り聞くのも可哀相だ。だからというわけではないが、ここはひとつ、いわゆる動かぬ証拠を……

「最後にひとつ、アンジェラ、ちょっとごめんね」

 わたしはアンジェラの背後に回り、衣服をまくり上げた。すると、その背中には、ハート型のあざ(烙印)がハッキリと浮き出ているではないか!


 なんだかややこしいことになってしまった。今までは、知的障害の「お兄ちゃん」が御落胤と思っていたけど、アンジェラの話から考えると、本当に本物の御落胤は、実はアンジェラみたいな……

「ということは、ブラックシャドウの情報は、誤りだったのかしら」

 プチドラは首をかしげながらも、「そうだろう」と、何度かうなずいた。でも、それならどうして、「お兄ちゃん」の背中にもハート型のあざがあるのだろう。

「追っ手から逃げ回っている間、万が一のことを考えて、同じ烙印を押したのかな。事件があっても、今回みたいに勘違いしてくれれば、少なくとも御落胤は無事だから」

「でも、普通、男と女を間違える?」

「逃避行を始めた直後なら間違えなかっただろうね。でも、その頃から何年もたってるから、そんな古い話は誰も覚えていないと思うよ。記録なんかも散逸しちゃってるだろうし」

 こんな手の込んだことまで御落胤を守ろうとするとは、「子連れマンモス」は御落胤の母親に対し、相当に心を寄せていたのかもしれない。

「もしかして、プチドラ、このことを最初から知ってた?」

「まさか、いくらボクでもそこまでは…… 仮にマリアが感知魔法を使って(心を読むなど)真相を探るとしても、ある程度の予備知識を得た上でなければ、正しい結論には至らないと思う」

 本当かな? でも、まあ、いいか……

 なお、ロケットの裏側には、皇帝のシンボル「顔のある太陽」が刻まれており、このロケットが皇帝から贈られたことは明らか。一応、終わりよければということで、そういうことにしておこう。

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