追いつかれた
……ぺ……れ……ぎ……よ…… ……ぺ……れ……ぎ……よ……
……ぺ……れ……ぺ……れ…… ……ぺ……れ……さ……ぁ……
見ると、(バケツかゴミ箱のような)円筒型の兜をかぶり、灰色のマントをまとい、灰色の馬に乗った武装盗賊団は、怒涛のように押し寄せ、その先頭は、荷馬車のすぐ横にまで達していた。
「プチドラ、早く、隻眼の黒龍モードに!」
「う~ん、でも、もう遅いかも……」
その時には、荷馬車は既に武装盗賊団に取り囲まれていた。
リーダーだろうか、灰色のマントのひとりが、荷馬車に併走しながら、
「そこの荷馬車、停まりなさい。停まらないと、ひどいことになるぞ!」
これは、最初にして、おそらくは最後の通告だろう。従ったからといって身の安全が保障されるわけではないが、少なくとも逆らわない方がよさそうだ。ホフマンとわたしは顔を見合わせ、うなずきあった。ホフマンも同意見のようだ。
ホフマンはその灰色マントの方を向き、大声で、
「わかった。今すぐ荷馬車を停める」
荷馬車はゆっくりとスピードを落とし、程なくして停止した。
その灰色マントは、馬を荷馬車の横にぴたりとつけ、
「頭は悪くなさそうだな。世間を生き抜くために必要な資質だけは備えているらしい」
「一体、何用かの? どれだけの数がいるのか知らんが、荷馬車一台を取り囲むにしては……」
と、ホフマンが言いかけると、それを遮るように、
「無駄口は叩かないこと、それも処世術のひとつだ。我々に対して反抗的な態度をとらなければ、君たちの安全は保障されよう。まず、こちらの質問に答えてもらいたい」
「知っていることなら答えよう」
「よろしい。では、ひとつきくが、ブラックシャドウはどこにいる? ヤツはおまえたちの仲間なのだろう」
すると、ホフマンはムッとした顔で、
「あんなヤツの仲間にされるとは心外じゃな。ヤツなら、先ほど、馬に乗って、どこかに走り去っていったぞ。どこに行ったかなど、知らんわい!」
「ほぉ! その話は本当なのか? 無用なかばいだては、身の破滅を招くぞ」
「かばいだてだと!? 冗談ではない。おまえさんたちがヤツをぶっ殺すというなら、わしも仲間に入れてもらいたいくらいじゃ!!」
ホフマンはバトルアックスの柄で御者台を激しく突いた。
「ふーむ、ウソではなさそうだな。しかし……」
その灰色マントは、少し拍子抜けしたように言った。




