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おまけ第一話 従兄の相談

 おまけ話です。思っていたより早く書き上がったので投稿します。

 男爵令嬢エミリ視点・前編です。

「エミリ。ちょっと相談したいことがあるんだが」


 そう言って来たアンドレ兄さんを見て、私はなんだか面倒ごとの予感がしたんだ。そしてそれは、外れてなかったんだよね。



* * * * * * * * * * * * * * *



 私はエミリ。男爵家の娘で、王立学園に通ってるんだけど。

 実はこの国の第一王子アンドレの従妹なんだ。


 まあ事情は複雑なんだけど。

 今の国王の妹が、ゴタゴタで男爵家に嫁ぐことになったんだよね。それが私の母さんで、男爵との間に私が生まれたってわけ。

 でも王族が男爵家に嫁いだなんて不名誉なことだから、それは内密な話だけどね。


 そして私は、アンドレ兄さんとこっそりだけどよく会うの。

 幼い頃から仲良くしてるし、学園の中でも見られていない場所では家族同然に話すんだ。私、兄弟が結構多いからお兄ちゃんのうちの一人みたいな感覚だね。

 そんなアンドレ兄さんだけど、何かを相談してくることはあんまり多くない。なのに今日は真剣な顔なんだよね。


「どうしたの? 何か困ったことでも?」


「うん。それも重大な悩み事でね」アンドレ兄さんは言った。「どうやらデーアが、パトリック皇太子に惚れてるようなんだ」


「ええ!?」


 私は驚いて、ひっくり返りそうになった。

 だってそうでしょ? それって浮気じゃん!


 デーアっていうのは、アンドレ兄さんの婚約者で想い人のプレンデーア公爵令嬢のこと。

 プレンデーア様が惚れた? それも留学生で隣国の皇太子のパトリック様に?


 うそー!


 パトリック様は、学園の女子生徒全員の憧れと言ってもいいお方。

 でもあまりにも高嶺の花すぎて誰も狙わないんだよね。

 確かに『完璧の令嬢』って呼ばれてるプレンデーア様なら釣り合うかもだけど……。でもプレンデーア様は、アンドレ兄さんと小さい頃から婚約してるんだよ?

 婚約っていうのはつまり将来の約束なわけで、だからそれは破っちゃいけない。

 ましてや貴族の禁忌である恋愛なんかに走って、浮気するなんて……!


「それ本当なの!? もしそうだったらやばいじゃない!」


「そうなんだ。だからどうしようかと思って……」


 どうしようかと思って、ってレベルの話じゃない。

 もしこれが公に知られるようなことになればプレンデーア様の名誉が大変なことになる。

 その上、アンドレ兄さんはプレンデーア様にメロメロなんだよ……。もしもフラれたりしたら心を病んじゃうかもしれない!


 でもいくら王族の血が流れているとはいえ私は男爵家の娘。

 プレンデーア様と気安く喋ることなんて絶対に許されないし、会うことすらほとんどない。なのにどうしたらいいの?


「ねえ兄さん。プレンデーア様の浮気、どこで知ったの?」


「パトリック皇太子からだな。最近、プレンデーアの視線が熱いと……」


「まあっ」


 パトリック様に勘づかれちゃってるじゃん! やばいじゃん!

 パトリック様は他国の者。第一王子の婚約者が浮気などと知られたら、最悪この王国の情勢を揺るがされるかも知れない。

 やばいやばいやばいよぉ!


 どうしよう。

 面倒ごとところじゃなかった。私の人生を揺るがすかも知れない大事件だった。


「どうしたらデーアの心を引き戻せるか……。賢いエミリならわかるかなと思って」


「別に私、賢くないよ? 兄さんが馬鹿すぎるだけだからね?」


 アンドレ兄さんの成績は最高に悪い。王族にあるまじき馬鹿具合なんだ。

 対して私はといえば、まあそれのちょっと上くらい。男爵令嬢にしちゃ賢いけど、決して頭がいいわけじゃない。


 頭の足りない二人がこの大問題に挑むのは、あまりにも力足らず。

 でもパトリック様には大っぴらに言えない。ああ、どうしよう!


「学園卒業までにはなんとかしたいんだ。お願い、力を貸してほしい」


 私はアンドレ兄さんの無茶振りに頷くしかなかった。

 参ったなぁ……。私、勉強だけで精一杯なのに!


 面白い! 続きを読みたい! など思っていただけましたら、ブックマークや評価をしてくださると作者がとっても喜びます。

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