ルーネの冒険譚
本文の漢字部分にはルビをつけてあります。
ルーネはアルラウネのお姫さま。森のなかでマンドラゴラのこどもたちと暮らしているの。
アルラウネやマンドラゴラはお花の妖精のお仲間なの。
ルーネはマンドラゴラの子供たちに囲まれて、みんなでなかよくたのしく、お歌をうたって暮らしていたの。
────ある日ルーネは夢をみたの。
フワフワときれいな、まぁるいお月さまのような乗り物に乗って浮かんでるの。
夢の中では自由にお空を飛べたのに、目が覚めるといつも足には根っこが生えてる……。
……大きくなったら、いつか飛べるようになるのかな。
夢の中でいっぱい飛ぶ練習をしていたのに……ルーネはわるい魔法使いのメガネ男に捕まっちゃった。
ルーネは今こそお空を飛びたいと思ったの。
────でも飛べなかった。
ルーネの足には、やっぱり根が生えていて、地面から離れられないからなの。
マンドラゴラの子供たちも、地面から引っこ抜かれて、悲しそうに泣くの。
わるいメガネ男をやっつけてくれたのは、頭のおかしいと言われている女の子、カルミアだった。
錬生術師のカルミアは、ルーネにルーネという名前をつけてくれたんだよ。
ルーネのお家を作ってくれたのは、カルミアとドヴェルガーのノヴェルなの。
マンドラゴラの子供たちがいじめられないようにもしてくれたんだよ。
カルミアといっぱいお話しを出来るようにって、友達になったノヴェルがルーネに言葉を教えてくれたの。
歩けないし飛べないルーネのために、カルミアはルーネの乗り物を浮かぶようにしてくれたの。
みんなはカルミアのこと頭がおかしいって言うよ。
でもねルーネにとってカルミアは、夢をかなえてくれる大魔法使いいなんだよ。
ルーネはカルミアが大好きなの。
だからカルミアのお願はルーネも聞くんだ。
カルミアの大好きな先輩はルーネが守るんだから──────
──────今日のルーネの夢の中では、ルーネが大きくなって悪い奴をいっぱいやっつけていたよ。
カルミアに話せば、またお願いをかなえてくれるかな?
────カルミアはお願いを叶えてくれたよ。
大好きな先輩を守るために、先輩そっくりな先輩人形を作ったの。
ルーネが乗って、自由に動かせるんだって。
夢の中と同じだ。カルミアはやっぱりスゴい魔法使いなの。
────────ルーネはまた夢を見た。今度は山のように大きな先輩に乗るの。
悪者たちをいっぱいやっつけて、マンドラゴラの子供たちも、安心して暮らせる国を作るんだ。
カルミアは困った顔をしていたの。ごめんなさい、ルーネがいつもわがままを言うから。
カルミアはクリクリって、優しくルーネの頭をなでてくれた。
「いいのよ、ルーネ。夢はね、かなえるものではないの、作るものよ」
夢のようなお話しでも、ものを作るのに必要な道具になるんだって。
カルミアは設計図を書き始めた。
そこには先輩人形巨大化計画と書いてあった。
カルミアもルーネと同じ夢を見たんだって。
ルーネは嬉しかったの。だから二人で夢の中の出来事がうまく行くように頑張ろうねと誓ったんだ。
◇◆
また悪い魔法使いがやって来たの。
すごく恐い、もやもやしたものが、カルミアを刺して、ルーネと先輩を洞窟の中に連れ去った。
「カルミアっ!!」
ルーネと先輩は力いっぱい叫んだの。カルミアは死ぬかもしれないのに笑ってた。
それを見てルーネはカルミアとの約束を思い出したの。
「わたしのかわりに、ルーネが先輩を守ってあげてね」
カルミアの大切な先輩はルーネが絶対に守るんだ。
ギュアァァァァァァ……
マンドラゴラの子供たちも、先輩の為に叫ぶ。
ごめんね、みんな。ルーネと一緒に先輩を守るちからを貸してね。
◆◆
悪者は強かった。弄ぶようにマンドラゴラの子供たちを次々と燃やしてしまい、ルーネが泣くと楽しそうに笑うの。
────くやしい……くやしぃよう、カルミア。
────やっと動けるようになったのに……
────せっかく飛べるようになったのに……
カルミアたちが助けに来てくれたの。
でも悪者は嘲笑うように、先輩とルーネを闇の中へ引摺りこもうとした。
カルミアは頭がおかしい。だから大事な先輩を悪者に奪われる前に、魔法の銃で撃った。すごくいい笑顔だったよ。
悪者は悔しがりながら、お友達のフレミールのドラゴンの炎に消えていった。
ルーネも燃えて灰になっちゃったけど、カルミアが本体の株を預かっていたから無事だったよ。
◇◇
────────ルーネは、カルミアや先輩やみんなと一緒に、また冒険の旅に出る。
今度は砂漠の国だって。
きっとまたカルミアはいっぱいいっぱいトラブルに巻き込まれる。
ルーネはもっともっと強くなって、カルミアや先輩たちをみんな守るんだ。
──── おしまいだよ ────
お読みいただきありがとうございました。
公式企画 冬の童話2024 四作品目となります。
このお話しは拙作【錬生術師、星を造る】作品内でノヴェルという少女が、ルーネというアルラウネの子に、言葉を教えるために魔本を自分で作って読み聞かせる話しがもとになっています。
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