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大混乱


エールラフィン山がうなり、地面や空気が揺れ動く。

そして、轟音と共に山頂が爆発。雪が一瞬にして溶け、津波となって斜面を流れ落ちる。

山頂からは巨大な火柱が上がり、火山灰や火山弾が空から降り注いだ。


「噴火だっ!」

『総員、ガスマスク装着! 火山ガスが来るぞ!』


火山ガスが爆風と共に周辺を襲い、動物たちがバタバタと倒れて行く。

自衛隊や登山隊は即座にガスマスクを付けたため無事だったが、町は大変なことになっていそうである。


『ACPより全機! 民間人を救助し、半島から離脱せよ!』


火山噴火により、自衛隊は現場の判断でジェレタ半島の民間人を救助することにした。


***

~ジェレタ半島・ジェレタ州庁舎~


「州知事、王国保安隊からの連絡です!

なんと、エールラフィン山が噴火した模様です!」

「なんだって!? 被害状況は!」

「ジェレタ魔力発電所が、火山弾の直撃により完全に停止!

復旧には数か月かかるそうです!

これの影響で、ノヴァリスティア市、セレスタリア市、イリュミナリス市、

クリスタリウム市、ネラッタース市、レトリウス市、ファシール市……

以上、計7つの都市で電力供給が遮断され、大停電が発生!

さらに、半島周辺の給電設備がすべて停止! 州外でも大停電が……!」

「ライフラインや交通網は!?」

「ルスア州間高速道路の一部が降灰の影響で機能を停止!

州内のライフラインは軒並み停止し、交通で混乱が発生しています!

道路には、緊急出動した消防車や救急車がひしめき合うように止まっており、

続々と集まってきた医療関係者たちは、

患者の応急処置に追われながら移動しています!

あ、あと、州内に偶然いた自衛隊が市民の救助活動を開始しているそうです!」

「州警察を救助に当たらせろ! あと中央政府に連絡! 援助を頼め!」

「了解!」


***

~ジェレタ半島・ノヴァリスティア市~

ノヴァリスティア市は、ジェレタ半島南部に位置する人口3万人ほどの都市だ。

給電設備の停止により大停電の発生している市内では、

あらゆる公共施設が停止し、停電による混乱は瞬く間に拡大していた。

多くの市民が市外へ避難するため、建物の外に出る。

すると、時速100㎞ほどの火砕流が、あっという間に彼らの命を摘み取っていった。


「なっ!?」

「きゃああああああ!」


火砕流を逃れたとしても、今度は雪解け水の津波と『魔力流』が街を襲う。

魔力流とは、簡単に言うと『魔力の波』のことである。

魔力流は膨大な魔力が一気に放出されることで発生し、

強力な魔力流は、人間の世界では考えられないような現象を起こすのだ。

今回魔力流が発生した原因は、エルラトが火山に飛び込んだことである。


「な、なんだこれ!?」


魔力流に飲み込まれた市街で、一人の市民がそう叫んだ。

市街では物理法則が崩壊し、区画は乱雑に置換され続けている。

川は逆流し、海から山へ流れて行った。

さらに、道路は道路でなくなり、まるで生きているかのように波打っている。

人々は置換され続ける他の地域に飲み込まれ、消失したり切断されたり、パニックだ。

救助を行っている自衛隊機や警察機も変わり続ける街に翻弄され、

市内への着陸ができず、市街地上空で見守り続けるしか無かった。


「いったい何が起こって……」


魔力流はノヴァリスティア市だけでなく、半島すべてを襲っている。

各地で区画置換が起こっていたその時、轟音と共に地面に巨大なひびが走った。

度重なる区画置換に、地盤が耐え切れなくなってきているのだ。

半島は、沿岸部から海へ沈んでいく。

そこでやっと、区画置換や転移現象は収まりを見せたものの、

もはや沈没は止めようがなかった。

ジェレタ半島は大陸から分離し、南側から沈んでゆく。

地面が一際大きく揺れると、完全に崩壊。

バラバラになり、海に飲み込まれていった。

最終的に、エールラフィン山だけが海の上に残ったが、それもどんどん沈んでいく。

そして、海水が火口に流れ込んだかと思うと、轟音と共に水柱が立ち上がった。


「爆発……!?」

「水蒸気爆発……じゃないか?」


立ち上がる水柱を見て、香川と田中がそう話す。

水柱は雲の上まで立ち上がり、しばらくして水しぶきが降り注いだ。

爆発により発生した大津波が、ユトラ大陸に襲いかかる。

その津波は、海岸線にあった全てを簡単に押し流した。

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