採石場
「よし。まずはこの地図を見てくれ」
そう言って、香川が地図を広げる。
登山道を表している一本の線が折れ曲がりながら山頂まで伸びており、
その途中に『採石場』と『神殿』の二つが描かれていた。
「神殿までは安全な道が続いているが、
それよりも奥は老朽化で危険なことになっている。
そのため、ところどころはこの赤線に沿って動くこととなるぞ。いいな?」
赤ボールペンで地図に書き込み、隊員に見せる香川。
それを見て、隊員の一人である田中健が言った。
「ちょっと待ってください。ここ、山を一周するんですか?」
「その通り」
田中が指さした先には、香川が書き込んだ赤線があった。
その赤線は山の右端まで伸びており、そこから点線が反対側まで伸びている。
点線の先から通常の赤線が伸び、元の登山道に合流していた。
これはつまり、山を一周しているということなのだ。
「わざわざ一周しなくても……」
「他の道は危険だからな。安全第一だ」
「な、なるほど……」
香川は地図をたたむと、隊員たちに言った。
「さて、行くぞ」
***
~エールラフィン山・標高1000m付近~
「採石場が見えてきたな……よし、このあたりで小休止だ!」
登山隊は、かつて神殿の建築用に作られた採石場にたどり着いた。
現在は使用されていないため、彼ら以外に人はいない。
隊員たちは水分補給や食事をとり、休み始めた。
「しかし、こんなところに採石場を作る意味はあったんだろうか。
もっとふもとの方でよかったんじゃ?」
切り出された状態で放置された石に腰掛け、田中が言う。
「神殿まで運びやすいようにでしょう」
近くにいた隊員の一人、瀧田梨花がそう答えた。
「だったら、神殿を低い場所に作ればいいんじゃ?」
「神っていうのは、高い位置にいるもの……
少なくとも、多くの国ではそう考えられていました。
神殿を高い位置に作ったのは、少しでも神に近づこうとしたからでしょう」
「はぁ、なるほど……」
会話が途切れたところで、香川がみなに言った。
「そろそろ出発しよう」
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
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