ツバキ
~「しなの」格納庫~
新型トークロイドは、第七トークロイド小隊に配備された。
『システム起動。自己スキャン開始……オールグリーン。まぶたユニットを開きます』
新型トークロイドが目を開くと、目の前には海自の作業服を着た男がたっている。
「お、起動した。初期不良とかはなかったみたいだな」
『戸籍情報との照合を開始……「内村翔」と断定。所有者として保存しました』
海上自衛隊の整備員、内村翔は、
設定を入力するため、新型トークロイドの電源を起動していた。
『名前を変更しますか? 初期名は「ツバキ」です』
「トークロイドの名前って、多数の苗字や名前からランダムに生成されるんだっけ?」
『その通りです。今回の場合、苗字は「なし」になりましたね』
「なるほど……名前はある程度自由につけて良かったはずだけど……まあ、名前はそのままでいいかな」
『名前を設定。性格設定を行ってください』
「性格……性格かぁ……こっちも自由に設定していいはずだが……う~ん……清楚……とか? うーん……」
『……もしかして未経験ですか?』
「違うよ!? というかなんでそんなことを!?」
『いや、考え方が未経験っぽいなぁと』
「初期設定でそんなこと言うのか、最新機種は……」
『仕草、話し方、表情などからあなたの趣味嗜好を解析し、それに合致する性格に変更しました。
もちろん、任意での性格変更も可能です。つまり、これはあなたの性――』
「みなまで言うな。わかったから……じゃ、まあ、性格は――」
『起動から三分が立ったため、性格変更が不可能になりました』
「清楚――にしたかったけど……まぁ、いいか……」
『フッ……』
「鼻で笑うな。ぶち壊すぞ」
『壊したらあなたが職を失うだけですよ』
「チッ」
***
~コンテナ船「三河丸」船橋~
「凄い嵐だな」
船長がそう言った。
この船は日本からアルケテル王国まで電子機器を運ぶコンテナ船で、今は嵐の中、旧日本海を進んでいた。
「レーダーに反応。前方に船影あり」
「同業者か?あっちも大変だな……」
「いえ、違います。こちらに向かってきています!」
「なんだと?」
船長は双眼鏡を手に取った。
「何だあれ……帆船?」
その時、轟音と共に船が揺れた。
「うわっ!」
「不明船から砲撃!海賊です!」
「救難信号を送れ!面舵一杯!」
通信士がSOSを出し、操舵士が舵を思いっきり回した。
回っている途中も、海賊は砲撃を続けている。
命中弾が少ないとはいえ、民間船には相当なダメージだ。
「くそっ!最大速度で逃げるぞ!」
三河丸は機関全速で逃げ始める。
速度に関してはこちらが勝っているが、相手は関係なしに撃ってきた。
「甲板で火災発生!」
「さっさと消せ!逃げるぞ!」
***
~巡視船「れいめい」艦橋~
「救難信号感知!発信元は民間船「三河丸」!」
「救助に向かう。最大戦速!ヘリも飛ばせ!」
「了解!」
巡視船「れいめい」は最大速度で救助に向かう。
後部甲板に乗せられていたヘリも発艦。三河丸へ向かった。
***
~コンテナ船「三河丸」船橋~
『こちら巡視船「れいめい」ヘリを向かわせるので、甲板に移動してください』
「わかりました!」
「よし、甲板に出るぞ!」
船員たちが甲板へ走ったその時、三河丸に砲弾が直撃。
爆発音とともに大穴が開き、思いっきり傾いた。
それによって積み荷が崩れ、海に落ちて行く。
救命ボートも、船体の傾きによって使えなくなっていた。
「うわっ!」
大きな揺れで、船員たちが海に落ちそうになったその時。
『海上保安庁です!大丈夫ですか!?』
声のした方を見ると、海上保安庁のヘリコプターが飛んでいた。
レペリングで降りてきた隊員が、船員たちをヘリコプターに乗せて行く。
最後に船長が乗り込むと、三河丸の甲板が吹き飛んだ。
「うわっ!?」
その時、もう一発砲弾が命中。
少しすると、船体が真っ二つになって沈没した。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
などと思ったら、
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。




