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訳ありシスターと村人の関係


お知らせ

第一話部分に、新話を追加いたしました。(2021/06/20)




「やーい! 汚い墓掘り女っ!」

「早くこの村からから出てけ! 男に媚びて教会に居座る淫乱女っ!」



 教会業務を終え、食料確保のため久しぶりに協会の敷地外へ出た私へ、子供たちの罵声が飛ぶ。ついでに小石もガンガン飛んできた。


 常日頃から私へぶつけまくっている甲斐あってか、彼らの命中率はそこそこに高い。小石といえども普通に痛かった。



「…………。」



 子どもとは素直で残酷だ。

 いつも親たちが私を噂している言葉をそのまま私へぶつけているんだろう。


 言い返したい気持ちをグッとおなかの深い所へ押し込めて、代わりにフードの端を引っ張る。

 いつにもましてフードを深く被り顔を完全に隠すと、俯いたまま早足で歩いた。


 今は言葉だけだが、私の安易な行動が教会を追い出される火種となる可能性は十分にある。

 私は引き継ぎの際、先代の修道士よりこの協会を守るようにと言い付かった。

 村人たちに下手な口実を与えないよう、子ども相手といえども強く出ることは出来なかった。


 これ以上の関係悪化を避けるため、村人たちとの接触も最低限にしている。


 私は脇目も振らず目指していた店へ入り日持ちする食料を両手いっぱいに抱えると、店主の元へ向かった。



「早く出てってくれないか。あんたがいると、死臭が商品にうつる」



 嫌そうな顔で私から代金を受け取った店主は、蠅でも追い払うかのようにしっしと手を振る。



「…………。」



 素早く頭を下げる。長いシスターコートの裾を翻し、そそくさと店を出た。


 店から離れると固く結んでいた口を開き、ふぅと小さく息を吐く。


 洗濯はこまめにしているつもりだが、死体の引き取りと埋葬業務でついた匂いはそんなに酷いだろうか。

 フードの内側の匂いをクンクンと嗅いだ。


 しかし後ろから聞こえた誰かの声により、その行為は中断された。



「あの女、まだ教会に居座っているのね」

「冒険者から巻き上げた汚ねえ金で、よく買いものなんかできるよな?」

「ほんとね、厚かましいわ。恥ずかしくないのかしら?」



 わざと私に聞こえる音量で話す村人たちに、ビクッと肩が震える。


 たいした特産品のないこの村は貧しい。

 生活の貧しさは心まで痩せ細らせるのだろうか。

 冒険者たちから高額な蘇生費を受け取る私は分かりやすい僻みの対象だった。


 だが嫌われている理由はそれだけではない。


 その一番の理由は、私はシスターなのに村人達の蘇生をしないからだ。


 私の前にこの教会を守っていた修道士は、彼らへの蘇生も分け隔てなく行なっていた。

 私には決してできないことだ。つまり、この仕打ちも仕方がないものだと諦めている。


 村人たちは、私が先代に媚びてこの教会を譲り受けたと思っているようだが、別に間違ってない。 

 共に過ごした時間は短かったが、それでもあの頃の思いが消えることはなかった。



「しかもね、今度は勇者様に入れ込んでるって噂よ。ほら、あの魔物討伐で有名なロキ勇者様が、教会からしょっちゅう出てくるんですって」

「うっわ、えげつねぇ。それでも修道女なのか? そういえばよ。前にいた修道士様が連れていた子って、どうなったんだ? 最近見ないよな?」

「あぁ、あの小さな子ね。なんでも、あの女が邪魔になって殺したって噂よ」



 勇者云々については聞き捨てならないが、あの幼子がどうなったのかについては触れられたくないことだった。

 その心の内を表すかのように、また肩が震える。私の肩はなんて正直者なのか。


 そんな私の様子を見咎めた村人たちは、罪を認めた罪人を罰する免状を得たようだ。

 ここぞとばかりに声のボリュームを大きくする。



「最っ悪な女だな! あ、それと勇者様といえばあの話、聞いたか? 彼が村のすぐ近くで魔物の巣を見つけたって話!」

「えぇ、聞いたわ! 小さいのも沢山いたけど、残らず皆殺しにしてくれたって話でしょう? さすが勇者様だわ!」

「早いうちに討伐してくれて本当に良かったわよね。魔物って、小さくてもすぐに大きくなるんだから!」



 震えを押さえようと、無意識に体の前で両腕を組む。


「全く、最近はこの村を襲撃する魔物の数も多いし、あの女が来てから碌なことがないぜ!」

「とんだ疫病神ね! 早くこの村から出て行ってくれないかしら!」



 この場にうずくまりたい。そんな衝動を必死で抑えた。


 しかし彼らの言う通り、教会を守るのが先代から私へうつってから、確かに魔物の襲撃率が上がっていた。そして私はその理由についても心当たりがある。



 ……痛い。すごく痛い。



 さっき子どもたちから、石をぶつけられた背中が酷く痛む。 

 だが本当に痛いのは、心無い言葉が刺さった胸の中だった。痛すぎて苦しい。


 村人の言葉に何一つ言い返せない私は、背中を丸め逃げるようにその場を去ったのだった。



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