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第二次反惟宗連合

――――――――――1572年3月1日 願証寺 顕如―――――――――――

「失礼いたしまする」

大樹からの書状を読んでいると証意が入ってきた。

「顕如様、加賀の七里頼周殿より書状が届いております」

「おぉ、そうか」

どうやらうまく惟宗の目を盗んで書状を届けることができたようだな。

「それで頼周は何と」

「必ずや顕如様の御望みどおりにして見せるとのことです」

「そうかそうか。さすが頼周よ」

これで当分は惟宗が近江に手を出す余裕はなくなるの。あとは惟宗が越前で手間取っている間に北近江を久政派で統一しそれに最も協力した本願寺の影響力を大きくする。惟宗は先の戦で多くの負担を国人衆に強いた。そのせいであの時ほどの兵を動かすことはできないはずだ。事実、越前攻めは4万しか動かしていない。当分はそれが続くであろう。その間に北近江を統一することは簡単だ。

「しかし顕如様。頼周殿になにを頼まれていたのですか」

「ん?証意には言っておらんかったか。大樹から久政への援助拡大を求められているのは知っておるな」

「はい。すでに頼廉殿が堅田の門徒を指揮するために現地に赴いたと聞いています」

「うむ。だが北近江が久政のもとに落ち着く前に惟宗が越前攻めを終わらせてしまっては意味がない。それで加賀・越中の門徒たちを使うことにしたのだ」

「加賀・越中の門徒ですか。確かにあそこの門徒たちを使えば北近江が落ち着くまで惟宗を越前に釘付けにすることができるでしょう」

加賀・越中・越前の門徒を合わせれば4・5万ほどになるはずだ。惟宗を越前に釘付けにすることなど容易なこと。あとは北近江を統一した久政に越前攻めを行わせて惟宗を挟撃する。その頃には織田が動けるようになっているだろう。国康めを討ち取る絶好の機会よ。武田が妙な動きをしているようだが本願寺が仲立ちすれば武田・織田で争うことはないだろう。徳川を贄にすることになるが徳川は三河で門徒たちを殺した愚か者。潰れようがどうでもよいわ。

「しかし加賀・越中は上杉と敵対していたと記憶していますが」

「大樹が上杉に和睦を命じる。あの上杉が大樹の命令を無視するとは思えん。それに武田と北条が和睦をしたことで北条との同盟が怪しくなってきた。そちらに力を入れるためにも和睦は受け入れるはずだ」

「それはそれは。さすがは顕如様にございます」

「当然よ。九州の田舎侍ごときにこれ以上好き勝手させてたまるか。証意、伊勢の門徒たちを動かせるだけ北近江と越前に送り込め」

「はっ」


――――――――1572年3月10日 躑躅ヶ崎館 武田勝頼――――――――

「徳川を攻める」

上座に座る父の言葉にどよめきが起きた。昨年から今川領をめぐって織田・徳川と交渉を続けていたがついに攻め込むのか。

「しかし本願寺からは織田と敵対しないようにと使者が来ていたはずでは」

最初に意見を述べたのは信廉叔父上だった。そういえば最近坊主の出入りが増えていたが本願寺だったか。織田もその頃から出入りが増えていたからあまり気にかからなかったな。

「織田との話はついてある」

「と言いますと」

「織田は徳川との同盟を適当な理由で放棄することにした。そして我らが攻め込むのと同時に三河に攻め込むことになった」

「なっ」

先程とは比べ物にならないほどのどよめきが起きた。織田はあれほど徳川のために我らの遠江侵攻を阻止するべく交渉をしていたというのに。それを捨てるというのか。いや、もう交渉での決着は無理だと判断したということだろうか。そしてどうせ徳川が攻められるのであればそれに便乗して領地を広げようということか。武田と敵対して惟宗に背後を突かれるよりは武田と協力して徳川を潰したほうが惟宗との戦に集中できるという考えかもしれん。

「後顧の憂いとなるであろう徳川を潰した後は織田とともに上洛し、惟宗を畿内より追い払う」

父上の言葉に三度どよめきが起きる。それも仕方ない。まさか上洛戦を行うところまで考えておられたとは。

「父上、そのことを大樹には」

大樹がこのことを聞けばお喜びになられるだろう。以前から要請していた私への偏諱も認めてもらえるかもしれない。

「伝えていない。大樹の周りには惟宗の忍びが多くおろう。細川の時のような裏切者がいるかもしれん。それに大樹が動けば惟宗も上洛戦の事に気が付くだろう。惟宗にとっては我らが戦の準備をしているのは徳川攻めのため。そう思わせておかねばならん。皆もくれぐれもほかに漏れないよう徹底させよ」

伝えていないのか。確かに惟宗にこの話が漏れたら多少無理をしてでも多くの兵を畿内に集めて織田攻めを行うだろう。そうなれば今回の戦はご破算だ。偏諱や官位は少し惜しいが上洛すれば問題ないか。

「細かいところはこれから軍議で決めていくが大まかなところは徳川討伐と織田と合同での上洛戦だ。そのつもりで戦に備えよ」

「「「ははっ」」」

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