第168話 「見習い賢者」vs「邪神ループス」・3
4体の分身を自身の体に取り込んだループス。
その姿はまさに、「事情」を知らない者から見れば、正真正銘の「邪神」そのものだった。
「さぁ、第2ラウンドの始まりといこうじゃないか」
そして今、春風に向かってそう言い放ったループスを見て、
(く、なんて禍々しい姿なんだ! 春風、こんな奴に勝てるのか!?)
と、水音はかなり不安になっていると、
「どうした!? 来ないならこちらから行くぞ!」
と、ループスはそう叫んで、春風に向かって突撃した。
「は、速い!」
そのスピードに驚く爽子を他所に、ループスは春風目掛けて右手の鋭い爪を振り下ろした。
当然、春風はすぐに後ろに飛び退こうとしたが、その最中に振り下ろされたループスの右手から風の刃が放たれたので、春風は咄嗟に左腕の籠手で防御した。
ザザザと音を立てて地面に着地した春風。
しかし、その左腕の籠手をよく見ると、大きな斬撃痕がついてたので、
「ああ! 雪村君の籠手が!」
「な、なんて威力なんだ!」
と、純輝と爽子はショックで大きく目を見開いた。
だが、そんな2人を他所に、
「そーら、もう1丁いくぞぉ!」
と、ループスは春風に向かって再び風の刃を放ったので、
「『アクセラレート』!」
と、春風はすぐに自身に風属性の強化魔術をかけてその攻撃を回避したが、
「ほらほらぁ! もっといくぞぉ、もっとぉ!」
と、ループスは何度も風の刃を放ってきた。
春風に迫る無数の攻撃を見て、
「に、逃げろ雪村ぁ!」
と、爽子は春風に向かってそう叫んだ。
だが、
「……調子に、乗らないでください!」
なんと、春風は自分からループスに向かって突撃し出したのだ。
「は、春風!?」
「何をしてる雪村!」
と、驚く水音と煌良。
その間にも、風の刃が春風迫る。
しかし、
「『アクセラレート』!」
春風は更に自身に風の強化魔術をかけた。
強化されたスピードをもってループスに向かう春風。
当然、風の刃をもろに受けたが、そのスピードが勝ったのか、少し肌やローブを切り裂いただけで、それほど大したダメージにはならなかった。
それを見て、
「ゲゲ! なんて奴だ!」
と、ループスが驚くと同時に、
『おお、凄い!』
と、水音ら勇者達の歓声があがった。
その後、迫り来る春風に危険を感じたループスは、すぐに背中の翼を動かして空に逃げようとしたので、
「ああ! 空に逃げる気だ!」
「狡いぞぉ!」
と、勇者達からそんな怒声があがる中、
「逃すかあああああ!」
と、春風はそう叫ぶと、ループスの尻尾にガシッとしがみついた。
そして、
「『ヒートアップ』! 『ヒートアップ』! 『ヒートアップゥ』!」
と、春風は自身に3回も炎属性の強化魔術をかけると、
「おおおんんんどりゃあああああああっ!」
と、その尻尾を思いっきりぶん回して、ループスを地面に叩きつけた。
「ゴホアアア!」
思わぬ大ダメージを受けたループス。そんなループスを見て、
『オオオ!』
(や、やった! 凄いよ春風!)
と、再び勇者達がそう歓声をあげた。
その後、
「もう1回ぃ!」
と、春風は再びループスをぶん回そうとしたが、
「さぁせぇるぅかあああああああっ!」
それよりも早く、ループスは尻尾を全力で振り回した。
「う、うわぁ!」
当然、その所為で春風は尻尾から離されてしまい、体を地面に何度もバウンドさせた。
それを見て、
『ああ! 雪村ぁ!』
『雪村君!』
と、勇者達がそう悲鳴をあげていると、
「中々やるようだな。だが、コイツで最後だ」
と、地面に降りていたループスはそう言って、全身に力を込め始めたので、
(あ! ループス様が何か大きな事をやろうとしてる!)
と、驚く水音を他所に、丁度立ち上がっていた春風は、
「それなら、こっちもとっておきを見せてやる」
と、目の前のループスに視線を向けながら、小さな声でそう言ったので、それが聞こえていた水音は、
(え? 『とっておき』って……?)
と、首を傾げた。
そんな水音を他所に、春風はゆっくりと目を閉じて、
「風よ。炎よ。そして水よ。俺の声を聞き、俺のもとに集まれ」
と、静かな口調でそう言った。
その瞬間、その場の雰囲気がガラリと変わったの感じたのか、
(な、何だ? 何をする気なんだ春風!?)
と、水音が戸惑いの表情を浮かべた。当然、爽子ら他の勇者達も同じ表情をしていたが、春風はそれに構わず続ける。
「吹き抜ける風よ、天を舞う『翼』となれ。燃え盛る炎よ、敵を蝕む『痛み』となれ。湧き上がる水よ、友を救う『癒し』となれ!」
その言葉を聞いて、
「お、お前、それは……!」
と、ループスが驚いていると、
「『化身顕現』! 羽ばたけ、『フェニックスゥ』!」
と、春風はカッと両目を見開きながらそう叫んだ。
次の瞬間、春風の全身が、緑、赤、そして青い光に包まれた。
その後、まるで弾けたかのようにその光が消えると、
(あ……『鳥』だ)
現れたのは、1羽の美しい真紅の鳥だった。




