第164話 勇者達(と春風)vs「邪神ループス」・3
「ん? お前か? お前は……ノーコメントで」
と、申し訳なさそうにそう言ったループスに向かって、
(いや、なんでやねん!)
と、水音が心の中でそうツッコミを入れると、
「え、ちょっと!」
と、春風が1歩前に出ようとしたので、水音はハッとなって、
「春風、取り敢えず落ち着いて」
と、春風の肩をガシッと掴みながら言った。
その後、春風は深呼吸すると、
「先生、この状況どうしますか? 俺と違って先生達は『勇者』なんですから、簡単にやられたりはしないでしょうけど……」
と、爽子に向かってそう尋ねた。
その質問を聞いて、水音は改めて周囲を見回すと、
(そうだ。春風の言う通り、僕達は『勇者』だから、そう簡単にやられたりはしないと思う。でも、今のこの状況も良くはないってのも事実だけど)
と、表情を暗くしながら、心の中でそう呟いた。
確かに、春風の言う通り水音達は「勇者」である。しかし、分断されて戦力が減ったうえに、今自分達の目の前にいるのは力を奪われた状態とはいえ本物の「神様」なのだから、それが水音を不安にさせてしまっているのだ。
そんな心境の水音を他所に、爽子は手に持ってる長剣を翳して、
「みんな、『神器』を使うぞ!」
と、叫んだ。
その叫びを聞いて、
(っ! そうだ。『偽物の神様』から植え付けられたものだけど、僕達にはこのスキルがある!)
と、水音は今思い出したかのようにハッとなると、純輝や煌良、そして分身体の前にいるクラスメイト達と共に、
『はい!』
と返事した。
そして、水音をはじめ、クラスメイト達がそれぞれ自分達の武器を翳して、爽子と一緒に、
『[神器召喚]!』
と、声高々にそう叫んだ。
次の瞬間、水音ら勇者達の手に持ってる武器が白い光に包まれて、それらが全て別の形へと姿を変えた。
それは、「天使の翼」を思わせる装飾が施された、何処か神々しいものを感じさせる純白の武器で、如何にも「悪しき存在を滅ぼす為のもの」と呼ぶに相応しいものを感じさせた。
(これが……僕の『神器』)
と、心の中でそう呟く水音が手にしてるのは、それまで自身が使ってた「剣の形をした金棒」ではなく、他の勇者達と同じような純白の武器で、見た目的にはまさに「本物の大剣」のようだ。
さて、それぞれ自分達の神器に見惚れている水音ら勇者達を前に、
「おお、アイツらの力を感じるな。全く、腹立たしい事このうえないぜ」
と、ループスは水音達が持つ「神器」を見ながら、忌々しいものを見るかのような表情になった。
そんなループスを前に、
「雪村」
「何ですか先生」
「強化系の魔術は持ってるか?」
と、爽子が春風に向かってそう尋ねてきたので、
「はい。風、炎、土属性の強化魔術を持ってます」
と、春風がそう答えると、
「そうか。それじゃあ、私が合図したら、すぐにそれを私にかけてくれ」
と、爽子は真っ直ぐループスに視線を向けたままそう言った。
その言葉に春風が「わかりました」と返事すると、
「春風、それなら僕にもそれをかけてくれ」
と、水音もお願いしてきた。そしてそれに続くように、
「ぼ、僕にも頼む!」
「俺にもだ」
と、純輝と煌良も便乗してきたので、
「オッケー。それじゃあ全員にかけるよ」
と、春風はそう言うと、持っている自身の武器である杖を握る力を強くした。
その後、水音達がループスに向かって神器を構え直すと、
「フン。来るなら来い。返り討ちにしてやるぜ」
と、ループスも戦闘態勢に入った。
睨み合う両者の間を、ヒュウッと風が吹き抜ける。
そして、
「雪村、頼む!」
と、爽子がそう叫ぶと、
「『アクセラレート』 『ヒートアップ』! 『プロテクション』!」
と、春風は素早さを強化する風属性の「アクセラレート」、戦闘力を強化する炎属性の「ヒートアップ」、そして防御力を強化する土属性の「プロテクション」を、水音、爽子、純輝、煌良の4人にかけた。
その瞬間、水音達の体を、緑、赤、オレンジの光が包み込み。
その光を受けて、
(こ、これが、春風の強化魔術か!)
と、水音が心の中でそう感心し、
「す、凄い、力が漲ってくる!」
と、純輝は表情を明るくした。
その後、
「みんな、いくぞ!」
と、爽子が再びそう叫ぶと、
「「「はい!」」」
と、水音、純輝、煌良がそう返事をし、爽子と共にループスに向かって突撃を開始した。




