第163話 勇者達(と春風)vs「邪神ループス」・2
「行くぞ!」
と、そう叫んだ爽子と共に、水音ら勇者達と「見習い賢者」の春風は、ループスに向かって突撃を開始した。
そんな彼女達に対して、
「ほほう、突撃するか。だったらこっちは……行け、我が分身達よ!」
と、ループスは余裕に満ちた態度で、自身の周りにいる4体の黒い獣ーー「邪神の眷属」ことループスの分身達にそう命令した。
そしてその命令を受けて、熊、蛇、大鷲、そして虎の姿をした分身達がそれぞれ動き出したので、
(う! 向こうも動いた……!)
と、水音が突撃しながらも警戒し、
「来るぞ! みんな、注意しろ!」
と、爽子がそう叫ぶ中、最初に水音達の前に立ったのは、虎の分身だった。
虎の分身は真っ直ぐ水音達を睨みつけると、
「グオオオオオオオ!」
と、大きな声で吠えた。
次の瞬間、虎の分身から激しい衝撃波が放たれて、
(げ! あんなのくらったらやばい……!)
と、水音がそう感じた次の瞬間、
「「「ロックブロック!」」」
と、耕、恵樹、そして春風の3人が水音達の前に出て、土の防御魔術を唱えた。
すると、3人の前に3つの大きな岩の壁が現れて、
「さぁ早く、この壁の裏に!」
と、耕がそう叫ぶと、水音は急いでその岩壁に隠れて衝撃波をやり過ごした。
しかし、
「クックック! 甘いぜ!」
と、ループスがそう叫んだその時、3つの岩壁の隙間から蛇の分身が現れて、大きな口を開いた。
それを見て、
「げげっ! やべぇ!」
と、鉄雄が驚きの叫びをあげると、
「……ハッ! みんな、逃げろ!」
と、我に返った爽子もそう叫んだので、それを聞いた水音達はすぐにその場から岩壁の向こうへと駆け出したが、
『……あ!』
そこには、既に熊の分身が待ち構えていた。
(い、いつの間に……!)
と、水音が驚いていると、熊の分身は左右の前足に自身の力を込めると、それを水音達に向かって思いっきり振り下ろした。
その瞬間、鋭い斬撃が放たれたので、
(うわぁ、冗談だろ!?)
と、水音達は急いでその斬撃を回避したが、
「……あれ? う、うわ!」
急に凄まじい風が吹いて来て、それが水音達の体を宙に浮かせた。
(い、一体、何が起きた……って、あ!)
突然の事に水音がふと前を見ると、そこには左右の翼を大きく動かす大鷲の分身がいたので、
(そうか、この風はアイツの仕業か!)
と、そう理解した水音がどうにかその場から動こうとした、まさにその時、大鷲の分身が自分達に向かって突撃してきたので、水音も他の勇者達も急いでそれを回避しようとしたが、残念な事に間に合わず、
『うわあああああっ!』
『きゃあああああっ!』
と、突撃をくらった水音達は、全員地面に落下していった。
(こ、このままじゃやばい……!)
と、水音がそう感じたまさにその時、
「……え? あれ?」
突然何処からか優しい風が吹いてきて、それが水音達の落下を防いだだけじゃなく、全員を優しく地面に降ろしたのだ。
「い、今の風は一体……って、ん?」
と、地面に着地した水音が、「何かおかしい」と言わんばかりに周囲を見ると、
(先生。正中君、力石君。それに春風だけ!?)
と、自分の他に爽子、純輝、煌良、そして、春風しかいない事に気付いて、水音は更にキョロキョロと周囲を見回すと、
「……あ、みんな!」
自分達から少し離れた位置にループスの分身達がいて、その前には他のクラスメイト達がそれぞれ5人ずつ配置されていたので、
「嘘だろ? 分断されちゃった……」
と、水音がショックを受けていると、
「よう、雪村春風」
「……あ、ループス……様」
「クックック……」
自分達の目の前にループスがいた。
ループスはキラリと目を輝かせると、
「ええっと。俺の前にいるのは、雪村春風と桜庭水音。そして、朝霧爽子に、正中純輝と力石煌良、か」
と言ってきたので、
「ど、どうして、僕達の名前を……!?」
と、名前呼ばれた純輝は思わずビクッとなり、
「流石は『神』……といったところか」
と、煌良はタラリと汗を流しながら、落ち着いた口調でそう言った。
その後、
「ほほう、勇者達の中でもかなり高い能力を持った者達か。まさにこの俺の相手に相応しい奴が来たって訳だな」
と、ループスがまるで分析したかのようにそう言ってきたので、
「あ、あれ? 俺は? 勇者じゃないですけど俺は?」
と、春風が「ちょっと待って」と言わんばかりにループスに向かってそう尋ねると、
「ん? お前か? お前は……ノーコメントで」
と、ループスは申し訳なさそうにそう答えたので、
(いや、なんでやねん!)
と、水音は心の中でループスに向かってそうツッコミを入れた。




