第161話 「邪神」、現る
「あ、ループス様!」
突如、水音達の前に現れた黒い狼に向かってそう言った春風。それを聞いて、
『……え?』
と、水音達が首を傾げていると、
「よう!」
と、春風に「ループス」と呼ばれた黒い狼がそう返事したので、
(……る、『ループス様』ってまさか……この黒い狼が、邪神……いや、『月光と牙の神ループス』!?)
と、水音は心の中でそう呟きながら、タラリと汗を流した。普通ならここで、
「え、マジで!?」
と、疑いの目を向けるところだろうが、
(いや、この感じは、ヘリアテス様に似てる?)
と、水音は目の前にいるその黒い狼からヘリアテスと似た雰囲気を感じたので、
(うん、きっと本物なんだろうな)
と、納得の表情を浮かべた。
そんな事を考えていた時、
「あの、ループス様。どうしてこちらに?」
と、春風がその黒い狼……否、ループスに向かってそう尋ねると、
「ああ、なんか来たなって思って、ちょいと様子を見に来たんだ」
と、ループスは明るい口調でそう答えた。
その答えを聞いて、
「な、なぁ水音……」
と、水音の横にいた進が小声で話しかけてきたので、
「ん? 何?」
と、水音がそう返事すると、
「あの黒い狼っぽいのが、ヘリアテス様と同じこの世界の『神様』って事で良いんだよな?」
と、進が「疑ってます」と言わんばかりの表情でそう尋ねてきた。
その質問に対して、
「うん。間違いないく、『本物の神様』だと思う」
と、水音は目の前にいるループスに視線を向けたまま答えると、
「な、なぁ。なんか……ちょっとノリが軽くないか?」
と、進が恐る恐るそう尋ねてきたので、
「う、うーん。実は僕もそう思う」
と、水音は微妙な表情浮かべながらそう答えた。
そんな風に話し合う水音と進を他所に、
「……ハッ! こ、この邪神め! 貴様ぁ、よくもこの私に……!」
と、ジェフリーがループスに向かってそう怒鳴ったが、
「聞こえなかったのか? 『黙れ』と言った筈だハゲジジイ」
と、逆にループスにそう罵られてしまい、
「はがっ! は、ハゲジジイ……」
と、ジェフリーはショックで固まってしまった。
そんなジェフリーを見て、
(うわー、神様からも『ハゲジジイ』って言われてるよ)
(お、お気の毒に)
と、水音達が苦笑いを浮かべる中、
「何があるんだと思って来てみれば、罪もない異世界の子供達にこんなものをつけさせようとしやがって。春風と同じように、俺だって怒ってんだよ」
と、ループスはチラリと地面に落ちてる爆散の腕輪を見ながら、未だに固まっままのジェフリーに向かってそう言った。その口調は静かだが、言葉の1つ1つに強い怒りが込められているのを感じて、水音達は「あ……」と少し泣きそうになったが、今は涙を見せる時ではないと思ったのか、水音達は首を横に振ったり目をゴシゴシと拭ったりした。
その後、ジェフリーはループスから放たれたプレッシャーに耐えられなかったのか、その場にドスンと座り込んで、そのまま動かなくなった。
その姿を見て、
「フン! この程度かよ」
と、ループスは鼻で笑った後、
「んじゃ、俺はこの辺で失礼するわ。ああ、俺の方の準備は出来てるから、いつでもかかってきて良いぞぉ」
と、水音達に向かってそう言うと、素早い動きでその場から去った。
その後、
「……よし。みんな、行こうか!」
と、爽子がそう口を開くと、
『はい!』
と、水音達は力強く頷きながらそう返事した。
その返事を聞いて、
「皆、気を付けて行ってきてほしい」
と、ウィルフレッドが水音達に向かってそう言い、
「そうだぜ。大丈夫だとは思うが、油断はするんじゃねぇぞ。特に水音。お前はちゃんと帰ってこいよ。お前にもしもの事があったら、エレンが悲しむんだからな」
と、ヴィンセントも真剣な表情でそう言った。
その言葉に対して、
「勿論です。絶対に生きて帰りますから」
と、水音は真っ直ぐヴィンセントを見ながらそう言うと、
「うむ、わかれば良いんだ。わかれば、な」
と、ヴィンセントはそう言うと、最後にニヤリと笑った。
そして、そんな2人の会話の後、
「よし。改めて聞くが、みんな、準備は出来ているな?」
と、爽子がそう尋ねて来たので、
『はい!』
と、水音を含めたクラスメイト全員が、再び力強くそう返事した。
その返事を聞いて、
「行こう!」
と、爽子がそう言うと、水音達と共にその場から歩き出し、ループスのもとへと向かった。




