第157話 対決直前
遅くなりました。
翌日、朝食を済ませた水音達は、フロントラルの大きな門の前に集まっていた。
ウィルフレッドら王族達や、ヴィンセントら皇族達に見守られる中、水音やクラスメイト達と爽子はそれぞれ自分達の装備をチェックしていたが、
(うぅ、僕だけじゃなくみんなも表情がガチガチだなぁ)
と、水音が心の中でそう呟いたように、チラッと見た爽子とクラスメイト達のその表情は、緊張や不安、更には恐怖で強張っていた。勿論、それは水音も一緒である。
そして、
(あぁ、春風も凄く近寄りがたい表情になってる)
当然、その中には春風もいて、彼も爽子とクラスメイト達と同じように、自分の装備をチェックしているが、その表情は水音達以上に強張っていた。
無理もないだろう。何せ今日戦う相手は今、世界を騒がせている「邪神」……いや、正真正銘の「本物の神様」なのだから。
そんな時、
「春風……」
という声がしたので、それを聞いた水音達は「ん?」と声がした方へと振り向くと、
「レナ」
(あ、レナさん)
そこには表情を暗くしたレナが立っていた。
いや、正確には「悲しそうな表情」と言った方が良いだろう。
まぁとにかく、そんな表情をしているレナに、
(こ、困ったな。僕はなんて言葉をかけたら良いんだ?)
と、水音が本当に困った表情を浮かべていると、
「……」
レナは無言で春風に近づき、春風が着ているローブの裾をギュッと掴んできた。
それを見て、歩夢と美羽が「む!」と唸ってレナに近づこうとしたが、春風はそれを無言で制した。
そんな春風に向かって、レナは何か言おうとしたが、
「あ……あ……」
と、声を絞り出すだけで、それ以上何も言事が出来ないでいた。よく見ると、表情は今にも泣き出しそうで、ローブの裾を掴むその手はブルブルと震えていた。そんな彼女に向かって、
「……レナ」
と、春風がそう口を開くと、ソッと裾を掴むレナ手に触れて、
「大丈夫だよ。俺は絶対に勝つし、レナからお父さんを奪うような事も絶対にしないから」
と、穏やかな笑み浮かべながら優しくそう言った。
ただ、その言葉に「むむ!」となったのか、
「ちょっと春風。そこは『俺が』じゃなくて『俺達は』だろう?」
と、水音が春風の肩にポンと手を置きながら、そうツッコミを入れるかのように言った。
そして、水音に続くように、
「レナさん。私達も、雪村と同じ気持ちだ。私達は、レナさんのお父さんとの勝負に勝つし、レナさんからお父さんを奪う事はしない。だから、ほんの少しだけで良いから、私達の事を信じてほしい」
と、爽子もレナに向かってそう言い、
「そうだぜ! 俺ら一応『勇者』なんだからな! 簡単にやられたりしねぇよ!」
「そうそう! おまけに24人もいるし、未熟な見習いとはいえ『賢者』だっているしね!」
「それに、同い年の女の子に『親の仇』って思われたくねぇしな」
「いやそれ、この場で言う事!?」
と、鉄雄らクラスメイト達までもが、レナに向かって明るい口調でそう言った。
そして、
「ね? みんなもこう言ってる訳だからさ、俺達の事、信じて待っててよ。絶対に最高の結末にするからさ」
と、春風が笑顔でそう言うと、レナはボロボロと大粒の涙を流しながら、
「っ」
と、ガバッと春風に抱きついた。
(あ、ちょっとレナさん!)
「うわ! レナ!?」
『あーっ!』
突然の事にそう驚きの声をあげた春風とクラスメイト達。そんな春風に向かって、
「……うん」
と、レナは小さくそう呟いた。
『ジトーーーーー』
と、水音をはじめとした周囲の人達に睨まれる中、
「よしよし……」
と、春風はレナの頭を優しく撫でた。それを見て、
(まったく、春風は……)
と、水音が呆れ顔になっていると、
「ウィルフレッド陛下!」
と、1人のルーセンティア王国の騎士が大慌てで駆け寄ってきたので、
「む、どうした?」
と、ウィルフレッドがそう尋ねると、
「大変です! たった今、数台の馬車が邪神達の横を通り過ぎて、こちらに向かっていると報告がありました!」
と、騎士はその場に跪きながらでそう報告した。
その報告を聞いて、
(え? こんな時に馬車?)
「はぁ? 馬車だぁ?」
と、水音とヴィンセントが首を傾げ、
「何処の馬車かわかるか?」
と、再びウィルフレッドがそう尋ねると、
「そ、それが……馬車は全てルーセンティア王国のもので、その中の1台に、五神教会の旗が立っていたそうです」
と、騎士はウィルフレッドに向かってそう答えた。
その答えを聞いて、何やら不穏な空気を感じたのか、
(……なんだろう。何か凄く嫌な予感がする)
と、水音は心の中でそう呟きながら、自身の胸を手で押さえた。
謝罪)
大変申し訳ありませんでした。この話の流れを考えていたら、その日のうちに終わらせる事が出来ませんでした。
本当にすみません。




