第153話 対決前夜・3
(え、えぇ? 何この状況? 何でエヴァン君と小日向さんが!?)
と、目の前にいる騎士とクラスメイトの少女を見て、水音はそう戸惑いながらも、その少女について思い出し始めた。
彼女の名前は、小日向優。
水音のクラスメイトにして、エルードに召喚された「勇者」の1人だ。
性格はとても真面目で、同じくクラスメイトの1人で親友である御影千寿と共にクラスを支える委員長的な人物である。
水音自身はクラスメイトである以外で小日向優……以下、優との付き合いはないが、思い出す限りでは彼女に関する恋愛話は聞いてないので、現在、自分の目の前で起きてる事に内心では驚いていた。それ故に、
「え、ええっとぉ、これどういう状況?」
と、水音が小声で祭達にそう尋ねると、
「し、知らないわよ! 私達だって今ここに来たばかりなんだから!」
と、祭が怒鳴るようにそう答えた。勿論、水音と同じように小声で、だ。
その後、
「静かに! 2人が何か話すぞ!」
と、絆も小声でそう言ってきたので、水音と祭は黙って様子を見る事にした。
さて、一方水音達に見られているとは知らないエヴァンと優はというと、
「「……」」
2人とも恥ずかしそうに顔を赤くしながら黙ったままで、一言も声を発しようとしなかったが、
「「あ、あの……!」」
と、2人同時にそう口を開いたので、
「な、何?」
「え、えっと……優こそ、どうしたんだ?」
と、お互い更に顔を真っ赤にしながらそう尋ねあった。
それを聞いて、
「ゆ、優!? 今、エヴァン君、小日向さんの事、名前で呼ばなかった!?」
「よ、呼んだ呼んだ! 確かに、『優』って呼んでた!」
「何だ!? アタシらが帝国に行ってた間に何があったんだ!?」
「……」
と、水音達は驚きのあまり目を大きく見開いた。
その後、エヴァンと優はお互い深呼吸すると、また暫く黙り込んだが、
「……エヴァン……さん」
先に優が口を開いたので、エヴァンはそれに「な、何だ?」と返事すると、
「その……雪村君には、会えたの?」
と、優は気まずそうな態度でそう尋ねた。
その質問を聞いて、エヴァンは「あ……」と声をもらすと、
「ああ、会えたよ。あの日の事、彼に謝罪した」
と、夜空を見上げてそこに浮かぶ月を眺めながらそう答えた。
その答えを聞いて、優が「そう……」と呟くと、
「ただ、その前に彼に『あの日のリターンマッチをしないか?』と尋ねられて、私は……彼と戦ったんだ」
と、エヴァンはそう話を続けたので、
「は、はぁ!? 戦ったって、何をやってるの!?」
と、優は驚きのあまりエヴァンに掴み掛かる勢いでそう問い詰めたが、すぐにハッとなって、
「ご、ごめんなさい」
と、謝罪した。
それを聞いて、エヴァンが「いや、気にしないでくれ」と言うと、
「そ、それで、勝敗はどうなったの?」
と、優が再びそう尋ねると、
「結果は、私の負けだ。そして、それが決まった後、私は彼にあの日斬りかかった事を謝罪したんだ」
と、エヴァンはその時の事を説明し始めた。
そう、春風とのリターンマッチから、彼に負けた事。その後、春風に謝罪した後、春風からも……。
ーー指、怪我させたり、蹴り飛ばしたりして、すみませんでした。
と、謝罪された事についても、だ。
その話をして、
「そ、そんな事があったんだ。雪村君、優しすぎるよ」
と、優は最後呆れ顔になると、
「……そうだな、彼は優しい人間だよ。あれから彼とは何度も話をしたりしてるんだ。口では『自分の幸せの為に人を利用してるだけ』などと言ってたが、それでもこの世界の為に一生懸命動いているんだ。悪いのはこちらだというのに……」
と、エヴァンはそう言うと、最後は本当に申し訳なさそうな表情になった。
それを聞いて、優は「そ、そうなんだ」と言うと、
「じゃあ、あなたはもう雪村君に対して何か思ったりしてないの?」
と、エヴァンに向かってそう尋ねた。
その質問を受けて、
「ああ。私はもう、彼に対して恨みも怒りも抱いてはないよ。寧ろ、『良き友人』が出来たって思ってるんだ」
と、エヴァンは穏やかな笑みを浮かべながらそう答えた。
その答えを聞いて、優が「そうなんだ」と笑みを浮かべる中、
「ああ、確かに春風とエヴァン君、あれからすっかり仲良くなったなぁ」
「うんうん。彼、人と仲良くなるの凄く上手いよねぇ」
「ああ。普段教室で見てる時とはえらい違いだな」
「そ、そうだね」
と、水音達はウンウンと頷きながらそう言いあった。
すると、
「優……」
と、エヴァンはガラリと真剣な表情になって優を見つめてきたので、
「な、何?」
と、優は若干警戒すると、
「明日、優もループス様と対決するのだろ?」
と、エヴァンは真剣な表情を崩さずにそう尋ねてきた。
その質問を聞いて、水音達が「むむ!?」と緊張する中、
「う、うん、そうだけど……」
と、優が恐る恐るそう答えると、エヴァンは更に真剣な表情で、
「私は……優に戦ってほしくないと思ってる」
と、優に向かってそう言った。




