第141話 「全て」を知る時へ
(よ、良かったぁ)
春風と爽子達との感動の再会(?)を見て、水音がホッと胸を撫で下ろしていると、
「久しぶりだな、雪村春風殿」
と、ウィルフレッドが春風に向かってそう言ってきたので、それに気付いた春風がその場に跪こうとしたが、
「ああ、そのままで良い」
と、ウィルフレッドに止められたので、春風は跪くのやめて、その代わりに、
「お久しぶりです、ウィルフレッド陛下」
と、ウィルフレッドに向かって深々と頭を下げながらそう言うと、ウィルフレッドはジッと春風を見つめて、
「その姿、元気そうで何よりだ」
と、穏やかな口調でそう言ってきた。そう言ったウィルフレッドの言葉に対して、
「はい、あれから良い人達と出会い、その人達に助けられてきましたから」
と、春風は頭を下げた状態のままそう返事した。
そんな様子の春風を、水音が何とも言えない表情で見つめていると、
「オーイ、俺にも挨拶させてくれぇ」
と、ヴィンセントが軽い口調でそう言ってきたので、
(あ、ヴィンセント陛下忘れてた)
と、水音は心の中で失礼な事を呟いた。
その後、
「お前が、雪村春風だな?」
と、春風に向かってそう尋ねたヴィンセントに対して、
「はい、自分が雪村春風ですが、貴方は?」
と、春風は警戒しながらヴィンセントに向かってそう尋ね返すと、
「ん? 俺か? はじめまして。俺はストロザイア帝国皇帝、ヴィンセント・リアム・ストロザイアだ。お前の事はウィルフや水音達から聞いてるぜ。ああ、跪かずにそのままで良いぞ」
と、ヴィンセントは自身の腰に手を当てながら、ドーンと胸を張ってそう自己紹介してきたので、それを聞いた水音は、
(ヴィンセント陛下、ちょっとノリが軽すぎじゃないですか?)
と、「はは」と頬を引き攣らせながら、心の中でそう呟いた。
そんな心境の水音を他所に、
「お初にお目にかかります、ヴィンセント陛下。自分は、雪村春風と申します。水音達が大変お世話になったとお聞きしました」
と、春風はウィルフレッドの時と同じように、ヴィンセントに向かって深々と頭を下げながらそう自己紹介してきたので、それを聞いたヴィンセントは、
「いやぁ、俺は大した事はしてないんだがなぁ」
と、恥ずかしそうに顔を赤くしながらそう言った。
しかしその後、
「あの、無礼を承知でお尋ねしますが、水音達からどれくらい自分の事を聞いたのですか?」
と、春風が自身の胸に手を当てながらそう尋ねると、
「ん? そうだなぁ。大体のとこだと、お前と水音の出会いからと、その後の冒険譚。そして……お前が、断罪官のギデオン・シンクレア大隊長をやっつけた『見習い賢者』の固有職保持者だってのと、そんなお前の正体は、何か特別な事情……いや、『使命』を持ってこの世界に来た存在ってところだな」
と、ヴィンセントはそれまで照れていた表情から一変してキリッとした真面目な表情でそう答えた。
その答えを聞いて、純輝が「え?」と小さく声をもらすと、
『そ、そ、そうなんですよ!』
と、水音だけでなく、進、耕、祭、絆、祈、歩夢、美羽、鉄雄、恵樹、詩織までもがそう声をあげてきたので、
「うお! 何だよいきなり!?」
と、ヴィンセントは思わず驚きの声をあげたが、そんな彼に構わずに、
「先生! そしてみんな! 僕達は春風から、全ての事情を聞きました!」
と、水音が爽子や純輝ら他のクラスメイト達に向かってそう言ってきたので、
「え、ほ、本当か!?」
と、それを聞いた爽子がそう尋ねると、
「はい! やっぱり、理由があったんです! あの日、彼が私達のもと去った理由が!」
と、今度は美羽が爽子に向かってそう答えた。
そして、そんな美羽に続くように、
「そうです、お父様。そして、ヴィンセント陛下」
と、今度はイヴリーヌが真剣な表情でそう口を開いたので、
「そうか、イヴリーヌも話を聞いたのだな?」
と、ウィルフレッドがそう尋ねると、イヴリーヌはコクリと頷きながら、
「はい、お父様。彼は、春風様は……大切なものを守る為にこの世界に来たのです」
と、ウィルフレッドに向かってそう答えた。
その答えを聞いて、周囲から「え? え?」と声が上がる中、
「へへ、どうやら、詳しい話を聞く必要があるみてぇだな」
「うむ、そのようだな」
と、ヴィンセントとウィルフレッドがそう口を開き、場所を変えるかという流れになると、
「それでしたら、市役所に戻りましょう。お話はそちらで」
と、それまで黙っていたオードリーがそう提案してきたので、
「おっしゃ! じゃ、そうするか!」
「ああ」
と、ヴィンセントとウィルフレッドはそれに賛成し、その後、全員が市役所へと戻った。
その道中、
(ついに、みんなも全てを知る時が来たんだな)
と、水音はゴクリと唾を飲みながら、心の中でそう呟いた。




