第139話 再会、「皇帝」と「国王」
その後、市役所上空に現れた2隻の魔導飛空船は、そのまま屋上に降りようとしたが、
「ここだと迷惑ですので、都市の外に降りてください!」
と、市長であるオードリーに叱られてしまったので、彼女の言葉に従うように、2隻の魔導飛空船は都市の外に降りる事になり、それを追うように水音達も、すぐに市役所を出て都市の外へと向かった。
そして、
「よう、キャリーにレオンにアーデ! 数日ぶり……」
と、その内の1隻から出てきたヴィンセントが、キャロライン、レオナルド、アデレードに向かって元気良くそう挨拶しようとした、まさにその時、
「ふん!」
ーーグワシッ!
「んお?」
ーーギュウウウウウッ!
キャロラインがヴィンセントの頭を鷲掴みし、それを握り潰すかのように思いっきり力を入れてきたので、
「あだだだだだだだっ!」
と、ヴィンセントは本気で痛そうに悲鳴をあげた。
そんな状態で、
「い、痛い! 痛いぞキャリー!」
と、キャロラインに向かって文句を言うヴィンセントだが、
「何で陛下がここにいるんですか? エレンちゃんはどうしたんですか?」
と、キャロラインは握力を強くしながら冷たい口調でそう尋ねるだけで全く手を緩めようとしなかったので、
「いだだだだだっ! ま、待て! は、話を……!」
と、ヴィンセントは痛みに苦しみながらも必死になって弁明しようとした。
そんな彼らを見て、
(ああ、キャロライン様。もの凄く怒ってるなぁ)
(うん、怒りのオーラが凄い出てるのがわかるよ)
(ヴィンセント陛下、お気の毒に……)
と、水音達は「はは……」と苦笑いを浮かべながら、心の中でそう呟いた。
それから少しして、漸く解放されたヴィンセントは、キャロラインに向かってフロントラルに来た理由を説明した。その説明を聞いて、
「……なるほど、『邪神がここに向かってる』って情報が入ったから、エレンちゃんに留守番をさせて大急ぎで聞きに来たと?」
と、冷たそうな表情でそう尋ねてきたキャロラインに、
「そ、そうだ」
と、ヴィンセントは苦しそうに肩だ息をしながらそう答えた。
ただ、その時のヴィンセントの表情がほんのり赤くなっているのが見えたが、
(……うん。今のは、見なかった事にしよう)
と、水音はそれをスルーする事にした。
すると、
「あ、そうそう! 水音! それに祈!」
と、ヴィンセントが水音と祈に声をかけてきたので、それに2人が、
「「は、はい!」」
と、返事すると、
「エレン……エレクトラからの伝言だ。『私は信じて待ってるから、必ず生きて帰ってこい』だとよ」
と、ヴィンセントは真剣な表情でそう言った。その言葉を聞いて、水音と祈はお互い顔を見合わせた後、ヴィンセントに向き直って、
「「確かに、受け取りました」」
と、真剣な表情でヴィンセントに向かってそう言った。
そんな2人を見て、ヴィンセントがニヤッと笑いながら「よし!」と呟いていると、
「それで、何で魔導飛空船を2隻もここに持ってきたんですか?」
と、キャロラインが再びそう尋ねてきたので、それにヴィンセントが「それはなぁ……」と返事すると、もう1隻の方に視線を向けた。
すると、そのもう1隻の魔導飛空船の扉が開かれて、
「イヴリーヌ」
「お、お父様!」
その中から、ルーセンティア王国国王ウィルフレッドが現れた。その姿を見て、
「お父様、どうしてこちらに!?」
と、イヴリーヌがウィルフレッドの傍へと駆け寄りながら、彼に向かってそう尋ねると、
「帝国と同じように、こちらにも『邪神がフロントラルに向かっている』という情報が入ってな。其方達が心配になって急いで急いでこちらに向かおうとした時にこの船が飛んできて、そのままこれに乗ってきたのだよ。ああ、因みに、マーガレットとクラリッサには、万が一に備えて国に残ってもらってる」
と、ウィルフレッドは真面目な表情でそう答えたので、
「そ、そうだったのですね」
と、イヴリーヌが納得の表情を浮かべると、
「ああ、そうだ。ここに来ているのは私だけではない」
と、ウィルフレッドはそう言って、自身が出てきたもう1隻の魔導飛空船に視線を向けた。
それにイヴリーヌだけでなく、水音達も「え?」と気になってウィルフレッドと同じように魔導飛空船を見ると、
(……あ)
『あ!』
その中から、見覚えのある1人の女性と数人の少年少女達が現れたので、
「先生!」
「それに、正中君達も!」
と、水音達がそう驚きに満ちた声をあげると、その女性ーー爽子と、少年少女達ーー純輝クラスメイト達のもとへと駆け出した。
「……」
ただ1人、春風を除いて。




