第138話 ループス&眷属出現と……
(お、オイオイ。冗談でしょ?)
「邪神」こと「月光と牙の神ループス」がフロントラルに向かって来てる。
オードリーから発せられたその言葉は、水音に大きな衝撃を与えた。
いや、衝撃を受けたのは水音だけではないようで、ふと周りをよく見ると、春風をはじめとした部屋の中にいる者達全員も、オードリーの言葉にタラリと汗を流していた。
そんな状況の中、
「それは、本当なのドリーちゃん?」
と、尋ねてきたキャロラインに対して、
「ええ、本当です。後、こんな時に私を『ドリーちゃん』と呼ばないでください。真面目な話ですので」
と、オードリーはキャロラインをギロリと睨みながら答えた。当然、キャロラインは「えぇ?」と頬を膨らませていたので、
(ああ、こんな時でもブレないなぁこの人は……)
と、水音は呆れ顔になった。
それからすぐに、
「あの、オードリーさん。それで、ループス様はあとどれくらいでここに着くのですか?」
と、春風がオードリーに向かってそう尋ね、それにオードリーが「それは……」と答えようとすると、
「失礼します」
という声と共にオードリーの秘書が部屋に入ってきて、そのままオードリーの隣に立つと、
「市長、先程新たな情報が2つ入りました」
と、報告してきたので、その言葉に水音が「え?」と小さく反応する中、
「2つ……ですか。1つは何ですか?」
と、尋ねてきたオードリーに、秘書は答える。
「ループス様とその眷属達は、既にこのフロントラルから少し離れた森の中にいるとの事です」
そう答えた秘書の言葉に、
(え、もうそこまで来てるの!?)
と、水音再び衝撃を受けている中、
「予想よりも早い到着ですね。それで、もう1つは?」
と、オードリーが更に秘書に向かってそう尋ねてきたので、
「ループス様がこちらに向かっているという情報を受けて、ルーセンティア王国のウィルフレッド国王陛下と、ストロザイア帝国のヴィンセント皇帝陛下もこちらに向かっているそうです」
と、秘書は言い難いそうな表情でそう答えた。
その答えを聞いて、
「え、お父様が!?」
と、イヴリーヌが驚きに満ちた声をあげて、
「……は?」
と、キャロラインはもの凄く嫌そうな表情でそう呟いた。
(ああ、キャロライン様。もの凄く嫌そうな表情をしてるなぁ)
と、水音が心の中でそう呟いていた、まさにその時、
(……ん? 何、この音?)
と、部屋の外から何やら妙な音がしたので、
(あれ? この音、何処かで……)
と、その音に聞き覚えがあったのか、水音はその音を思い出そうとして幾つもの「?」を頭上に浮かべていると、
「屋上から聞こえますね」
と、オードリーが気付いたかようにそう言ったので、水音達は彼女と共に屋上に向かった。
そして、全員が屋上に出ると、音は上空から聞こえたのがわかったので、水音達が一斉に上を向くと、
「……え? 船!?」
「ちょ、何あれ!? 船が浮いてる!?」
と、そこにあったとあるものを見て、驚きに満ちた声をあげた春風とレナを前に、水音が口を開く。
「あれは……ストロザイア帝国の、『魔導飛空船』だ!」
そう、その正体は、かつて水音達がルーセンティア王国を旅立ったあの日に乗った、「魔導飛空船」だったのだ。
すると、
(……ん? ちょっと待って)
と、何かに気付いた水音が、ふとその魔導飛空船の隣に視線を向けると、
(あれ!? もう一隻ある!?)
なんと、その魔導飛空船のすぐ隣に、同じ船がもう一隻あったのだ。
そのもう一隻の魔導飛空船を見て、
(完成していたんだ!)
と、水音がそう感心すると、
「え!? もしかして、あれが水音達が乗ったって言ってた!?」
と、春風が驚きに満ちた表情でそう尋ねてきたので、
「ああ、間違いないよ。でも、2隻目も出来てたのは驚いたけど……」
と、水音はもう一隻の魔導飛空船を見つめたままそう答えた。
するとその時、最初の一隻から、
「オーイ! 俺が来たぞぉおおおおおっ!」
と、笑顔のヴィンセントが腕を振りながらひょっこりと顔を出してきたのが見えたので、
「「「はぁ……」」」
と、キャロライン、レオナルド、アデレードは溜め息を吐き、
「「「「「「ヴィンセント陛下……」」」」」」
と、水音、進、耕、祭、絆、祈の6人は呆れ顔でそう呟いた。




