第117話 イヴリーヌの決断
「私は……どのような罰を受けるのでしょうか?」
蹲った状態のまま、震えた声でそう尋ねてきたアメリア。その質問を聞いて、イヴリーヌが「えぇ!?」と驚いていると、
「ね、姉さん! 何を言ってるの!?」
と、エステルが大慌てでアメリアに尋ねた。
その質問に対して、アメリアは体勢を変えないで答える。
「エステル。お姉ちゃんはね、絶対に許されない『罪』を犯してしまった。だから、その『罰』を受けなきゃいけないの」
そう答えたアメリアに、エステルは「そんな!」とショックを受けると、
「そんなの駄目だよ! だって、元はと言えば私の所為なんだから!」
と、エステルは怒鳴るようにそう叫んだ。
その後、エステルはイブリーヌに視線を移すと、
「イヴリーヌ様。今申し上げた通り、姉が罪を犯してしまったのは私の所為なのです。だから『罰』は私1人が全て受けますので、どうか、姉とディック、ピート、そして、兄さん……春風さんを許してください」
と、なんとイヴリーヌに向かって土下座でそう頼み込んできた。
それを見て、イヴリーヌだけでなく水音達までもが「ええぇ!?」と驚いていると、
「ま、待ってくれエステル! そんなの駄目だ!」
「そうだよ! 嫌だよエステル姉ちゃん!」
と、今度はディックとピートが大慌てでエステルを止めに入った。
そして、そんな2人に続くように、
「そ、そうよエステル! あなたは絶対に駄目よ!」
と、アメリアもエステルを止めに入った。
しかし、
「だって! 全部私が悪いの! 私の所為で、大好きなお父さんとお母さんや、村のみんなが殺されて、姉さんが仲間を傷つける事になっちゃって、挙句の果てに無関係な兄さんや、レナさん、グラシアさん、マリーさんまで巻き込んで、だから……!」
と、エステルは頑なに意志を曲げようとしなかった。
その後も繰り広げられる4人の口論に、
(え、えぇ? コレ、一体どうやって止めれば良いんだ!?)
と、水音はどうすれば良いのかわからずオロオロしだした。そして、
「お、オイ、どうすりゃ良いんだよコレ?」
「ど、どうするって……どうしよう?」
「わ、私に聞かないでよぉ」
それは、進達も同様だった。
するとその時、パァンッという大きな音が食堂内に響き渡り、音に驚いた水音達が「何だ何だ!?」と、一斉に音がした方へと振り向くと、
「はいはーい、アメリアちゃんにエステルちゃん、ディックちゃんにピートちゃん。みんなの気持ちはわかるけど、一旦ちょおっと落ち着こうねぇ」
と、そこにはキャロラインが笑顔でパチパチと拍手をしていたので、アメリア達は「あ……」とポカンとした後、
「も、申し訳ありませんでした、イヴリーヌ様」
「「「申し訳ありませんでした」」」
と、イヴリーヌに向かってそう謝罪した。
それにイヴリーヌが「い、いえ……」と、戸惑の表情を浮かべていると、
「イヴりんちゃん……」
と、キャロラインがイヴリーヌに話しかけてきた。
声をかけられたイヴリーヌは、
「は、はいぃ! 何でしょうか!?」
と、驚きながらそう返事すると、
「アメリアちゃん達はこう言ってるけど……イヴリーヌ・ヘレナ・ルーセンティア姫はどうしたいの?」
と、キャロラインは真剣な表情で、イヴリーヌを本名で呼びながらそう尋ねてきた。
その質問を受けて、イヴリーヌは気持ちを切り替えるかのようにゆっくりと深呼吸すると、アメリア達を見て、
「アメリア様。エステル様。ディック様」
と、アメリア、エステル、ディックの3人をそう呼んだ。それを聞いて、名前を呼ばれた3人が「は、はい!」と、緊張のあまり表情を強張らせながら返事すると、
「皆様の事情はよくわかりました。あなた方が嘘を言ってない事も、ちゃんと理解出来ました」
と、イヴリーヌは少し穏やかな笑みを浮かべながら言った。
その言葉にアメリアが「じゃあ……」と口を開くと、
「ですが、わたくしにはアメリア様達をどうこうする権利がありません。ですので、皆様の今後つきましては、お父様……ウィルフレッド陛下と相談して決めさせてもらいます」
と、イヴリーヌはアメリア達に向かってそう言い、最後に、
「不甲斐ない第2王女で、申し訳ありません」
と、付け加えると、深々と頭を下げた。
それを見て、アメリア達は一瞬ポカンとなったが、すぐに真面目な表情になって、
「わかりました。私達はそれで構いません。こちらこそ、大変申し訳ありませんでした」
と、代表するかのようにアメリアがイヴリーヌに向かって再びそう謝罪すると、彼女に続くように、
「「「大変、申し訳ありませんでした」」」
と、エステル、ディック、ピートの3人も、再びイヴリーヌに向かって深々と頭を下げながら謝罪した。




