第112話 待ってる間に
「それじゃあ早速作ってくるから、ちょっと待っててね」
そう言うと、春風は凛咲と共に家の中にある台所に向かった。その間水音達はというと、皆、春風達が作る食事を楽しみにしながら食堂で待つ事になった。
それから少しして、
「うーん、つまんなくなってきたわねぇ」
と、アマテラスは退屈になってきたのか、
「あ、そうだイヴリーヌ姫」
と、イヴリーヌに話しかけたので、
「は、はい! 何でしょうか!?」
と、いきなり声をかけられたイヴリーヌが驚きながら返事すると、
「丁度良いから、彼女達から話を聞いたら良いんじゃない?」
と、アマテラスはとある方向に親指の先を向けながらそう言ってきた。
それにイヴリーヌだけでなく水音達までもが「え?」とその方向を見ると、
『……あ』
そこには、アメリア、エステル、ディック、ピートの4人がいたので、
『あ、そういえば』
と、イヴリーヌや水音達も思い出したかのようにそう声をもらした。
その後、イヴリーヌが「コホン」と咳き込むと、真面目な表情になってアメリア達に近づき、
「アメリア様……」
と、声をかけた。
それに反応したのか、アメリアはその場に跪こうとしたが、
「ああ、そこまでする必要はありません。どうかそのままでお願いします」
と、イヴリーヌがそう言ってきたので、アメリアは「ですが……」と躊躇ったが、
「お願いします」
と、イヴリーヌにもう一度そう言われてしまい、アメリアは「わかりました」と従う事にした。
その後、
「アメリア様。あなたの話を聞かせてください。『断罪官』であったあなたが、何故、彼らを裏切る事になったのか。そして、どのようにして春風様と出会ったのかを」
と、イヴリーヌはアメリアに向かってそうお願いし、それに続くように、
「そうねぇ。私達にも教えてくれると嬉しいなぁ」
と、キャロラインもノリノリといった感じでそう言ってきた。勿論、そんなキャロラインを、レオナルドとアデレードが「やれやれ」と言わんばかりの呆れ顔で見ていた。
まぁそれはさておき、食堂内が一気に重苦しい雰囲気になり、ゴクリと唾を飲む水音達に見つめられる中、イヴリーヌとキャロラインからお願いされたアメリアはというと、
「そ……それは……」
と、辛そうな表情で答えるのを躊躇っていた。
その時、
「姉さん」
と、隣に立っていたエステルが声をかけてきたので、ハッとなったアメリアはすぐにエステルを見た。
「もう、良いんだよ」
と、覚悟を決めたかのようにニコッと笑いながら、穏やかな口調でそう言ったエステルに、
「え……エステル……」
と、アメリアは今にも泣き出しそうな表情になると、
「アメリア」
「アメリアさん」
と、ディックとピートもエステルと同じような表情で声をかけてきたので、それを見たアメリアは耐えられなくなったのか、
「うぅ……」
とうとう涙を流してしまった。
それを見て、水音をはじめとしたその場にいる誰もが「うっ!」と申し訳なさそうにしていると、
「イヴリーヌ様。キャロライン様」
と、エステルがイヴリーヌとキャロラインに声をかけてきたので、
「は、はい」
「何かしら?」
と、2人がそう返事すると、
「姉が断罪官を裏切る事になったのは、私が原因だからです」
と、エステルはまっすぐ2人を見ながらそう言った。
その言葉を聞いて、
(え? 『私が原因』ってどういう事なんだ?)
と、水音が疑問に思っている中、
「あらあら。それはどういう意味なのかしら?」
と、キャロラインがそう尋ねてきたので、
「エステル……!」
と、アメリアがエステルを止めようとしたが、
「姉さん、『もう良い』って言ったでしょ?」
と、エステルに拒絶されてしまい、アメリアはそれ以上何も出来なくなってしまった。
そんなアメリアを見た後、エステルは再び真っ直ぐイヴリーヌとキャロラインを見て、
「改めて自己紹介させてください。私の名前は、エステル・スターク。固有職能『呪術師』の固有職保持者です」
と、そう自己紹介した。




