情とビジネス:11/3に本筋を変更しております。
11/4 感嘆符後のスペース追加、三点リーダーを偶数に変更、ルビ等その他追加修正
お話の最後をかなり修正し加筆しております。
本筋が変わっております、申し訳ありませんが再読頂ければありがたいです。
カラオケ大会が盛り上がった為、俺達は宮坂家に泊まらせてもらう事になった。
基夫さんと石田さんは2人別々のタクシーに乗って帰った。
進展があったのかはまた夏希を通して確認しよう。状況次第では基夫さんが瑠璃の元カレである事を伝えなければならないかも知れないしそうでもないかも知れない。
正直人の恋愛に口出しする状況ではないけどね。
タクシーを見送りながら、夏希に気になっていた事を確認する。
「そう言えば、石田さんは何でここまでついて来たんだ?」
「何かね、高畑社長に言い付けられた事があるからって言ってたけど、さっき聞いたらもう終わったから大丈夫って言ってたよ」
がっつり嫌な予感がするんですけれども……。
「エミルの次の映画って、相手役の男が歌うシーンとかあるのか?」
「ううん、ないよ。女子高生が悪役令嬢として異世界に転生する話」
あ、そう。なら大丈夫かな?
それにしても異世界転生で悪役令嬢か、映画界にも転生ブームが起こるんだろうか。
「優希、寝る前に応接室に来てくれ。基夫君との話を説明しておく。
うちの子らも一緒だが、夏希ちゃんとひめちゃんはどうする?」
賢一さんから、今日の買収交渉について話があるそうな。
ひめを見ると、すごく眠たそうに瞼を擦っている。
夏希が気を利かせてか、一緒に寝ようと客間へと連れて行った。年上なのに扱いが幼女だな。見た目は高校生くらい、いや中学生か。
もうちょっと頑張って起きとけよ。
結局三姉妹と、賢一さんが待つ応接室へと向かった。
お酒を飲んだ割にはキリリとした顔付きで、トプステを巡る問題についての話が始める。
「とりあえず基夫君は買収自体は受け入れた。具体的な金額はこれから牡丹が詰めろ。
ただ、トプステの決算書が手元にある以上、適正価格以下で買えるよう交渉してみろ。瑠璃とのいざこざがあったとは言えこれはビジネスだ。情に金を払う必要はない」
あんなに基夫さんに対して親身に話をしていたのに、ビジネスとなると話が違うらしい。
日本を代表する企業グループの経営者だった賢一さんの言う事だ。そうは思うのだが、すんなりと納得は出来ないな。
だからと言って全くの素人である俺が出張っても話がややこしくなるだけだ。
頷いている牡丹に任せるとしよう。
「今後はトプステを買った後の経営方針だ。
優希が買うと言ったからには、何か具体案があるんだろうな?」
経営者の目つきのまま、賢一さんが俺を見つめる。睨み付けられているわけでもないのに、身体が強張り緊張する。
今さら頭に来て言っただけですなんて今さら言えない……。
「そうですね、買収金額によって今後の路線を考えようと思っていたんですけど……」
リーズナブル路線か、もしくは高級志向路線か。話として出ていたのは事実だ。
「それでは遅い。買ってから考えるなんて事普通はないぞ。目的がないのにおいそれと他人の会社に手を出すなんて有り得ん」
ですよねー。さてどうするか。
瑠璃との私情があったにせよ、買おうと言ったのは俺だ。そしてもう話は進んでしまっている。
後は頼むよなんて言っていいのは、後継者が決まっている勇退前のお爺様だけだ。
何をすれば売れるだろう、売れるイコールお客様が多く通って頂ける店作り。今までのお断り屋ではダメだ。何か特別な売りが必要だと思う。
現在はお金を持っている個人が相手。あくまで金を払う人とお客様は同一人物。
既存のサービスではどうだ? イメクラまで行かなくても、キャバクラなら接待で使う事もあるだろうし……、それだ!
「現在お断り屋のお相手は一個人のアクトレスですよね? では顧客を企業にして、接待や福利厚生に使ってもらえるように団体会員制度を作りましょう。
RPGで言うところのパーティーもしくはクランの登録という形にして、会社の経費でプレイ出来る環境を整えましょう」
それなら今まで利用出来なかった顧客層をお断り屋業界へ取り込めるんじゃないだろうか。
「男が会社の接待でクラブやキャバクラを使う事をイメージしたんだろうが、今のご時世では経費として認められなくなって来ている。そう簡単に会社単位での顧客は増えんぞ」
うっ、そうなのか。ドラマや映画のせいでバンバン高い酒が空けられて行くようなイメージしかなかったわ。
うーん、ならどうするか。
あ、会社単位での顧客がダメなら会社単位での株主ならいいんじゃない?
「顧客としてではなく企業に株主になってもらうのはどうでしょうか。自社の出資先のサービス利用なら、接待ではなく宣伝になります。
勤め先の出資しているサービスの利用なら、福利厚生としても認められ易くなるのでは……?」
「なるほどな、今考えたにしてはなかなかだな」
マルっとお見通しらしい。
「瑠璃、その線で経営計画を立ててみろ。優希と2人で話し合って決めるんだ。瑠璃だけで決めず、優希にも考えさせろ。
どこまで成長するか見ものだな」
成長を見込まれているらしい。
ともあれ、今回のスペックスとトプステ間で起こったトラブルは、終息の方向へと進み始めた。
名目上はまだ話が出ただけで具体的に進んではいないリアル迷宮、プレイヤーVSアクトレスのイベントの為の提携だった訳だが、終わってみるとスペックス主導の業界再編劇となってしまった。
「ところで優希、トプステの株を基夫君だけでなく投資会社からも買って、100%子会社にしようとなると、いくら必要か想定しているか?」
……、全く分かりません。
「今後は行動を起こす前にある程度の試算をするように。牡丹は必要な資金が分かり次第優希に説明するように。瑠璃はその出資金額を取り戻すのにどれだけの期間にどれだけの売り上げが必要か教えてやれ。
お前らも役員に取り立てたからには、キッチリと育てるように。ほっといて経営者として一人前になる奴なんてまずいないんだからな」
「「「はい」」」
と言う事で、今後はトプステの運営をどうするか、そしてその先にあるリアルダンジョン計画をどう進めて行くのかを考える事になる。
賢一さんはそれらの会社経営を通して、俺を経営者として育てようというつもりらしい。
プレイヤーに経営者に株主に、そして芸能活動となると本当に身体がいくつあっても足りなさそうだ。
今現在嫁達を持て余しているというのに……。
少し時間が遅いが、今回の騒動でお世話になってしまった道子さんへ電話を掛ける。
数コールで電話を取って下さった。
「遅い時間に申し訳ありません、希瑠紗丹です」
「あぁ、こんばんは紗丹君。どうしたの? またトプステと何かあった?」
姐さんモードではない様子、ご自宅でゆっくりされていたようだ。申し訳ないな。
「その節はご迷惑をお掛け致しました。
実は、スペックスがトプステを吸収合併する方向で話が進んでいまして……」
そこまで伝えると、道子さんは全てを汲んで下さったようだ。
「なるほどね、分かりました。下の方にストップを掛けておくね」
「ありがとうございます、よろしくお伝え下さい」
時間も時間なので、早々に話を切り上げて電話を切る。
さて、次は瑠璃と牡丹と話をしないとな。
お読み頂きましてありがとうございます。
活動報告にも書いておりますが、この更新からしばらくお休みさせて頂きます。
連載再開は来週くらいから、更新頻度は週に2・3回程度で考えています。
今後ともよろしくお願い致します。




