姫子とのバレンタインデー
「お待たせ、姫子」
「ううん、全然待ってないよ」
ファンシーな部屋の隅に置かれたベッドに腰掛け、足をぶらぶらさせているひめの隣に座る。
「疲れたでしょう? 何か飲み物取って来ようか?」
「いや、大丈夫。それよりも……」
ひめにベッドの真ん中に座り直してもらい、その膝に頭を乗せる。膝枕だ。
優しく頭を撫でてくれる。あぁ、癒される……。
何も話さずに、ニコニコと俺の顔を見つめるひめ。
変わったなぁ。ボクから私へと一人称が変わり、無表情だった顔も今では色んな表情を見せてくれるようになった。
他の嫁達とも上手くやっているし、こう見えて舞台のお仕事も増えている。結構忙しくしているみたいだ。
今もテーブルに置かれている台本を読みながら、俺を待ってくれていたのだろう。
「その台本、次の舞台か?」
「うん、次もメイドさんの役なんだ。実はサキュb」
「それ止めた方がよくないか!?」
是非ともお断りしなくては!! ダメ、そんなの絶対にダメ!
高畑社長に詰め寄ってでも止めさせようと決意。
まぁ今考えていても仕方ない。話題を変えよう。なかなか本題に入らないからこちらから振ってみる。
「ひめはどんなチョコをくれるのかなぁ~」
「あ、ゴメンなさい。味見してたら渡す分がなくなっちゃったんだ……」
え、そんな事ってあるか?
ポカンとしていると、ひめが胸ポケットからピンク色のリボンを取り出し、自分の首に巻いた。
「いっぱい食べちゃったから、私もチョコの味がすると思うよ?」
パタンと後ろに倒れ、両手を俺に差し出すひめ。
「はい、優希。どうぞ、私がチョコレート♡」
はい、これにてバレンタインSS企画終了でございます。
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