ゆーちゃんなっちゃんひーちゃん
全編関西弁でお送り致します。
夏希視点
「ゴメンて、なっ? 許してや、うちかて社長に言われて、なっ?」
アカン、完全に拗ねてるわ。ステージではあんなにノリノリでシャウトしてたのに、我に返ったら思い出してめちゃくちゃハズいパターンらしい。
そやかてうちもステージで歌ったやんか。って言うてもアカンか。
ライブが終わった後、うちと優希は真っ直ぐスペックスビルに帰った。どっかで休憩するかなぁとちょっとだけ期待してたけど、ゆーちゃんはそれどころやなかったみたい。
希瑠紗丹としてステージに上がったんであって、我に返ったゆーちゃんは頭掻き毟って恥ずかしがってた。
こんなんでうちの彼氏役のオファー受け入れてくれるんやろか……。
「ひめ~、夏希が俺を裏切った、あの怪しい社長に俺を売ったんや。もう嫌や~」
大きなベッドの上で、ゆーちゃんは姫子に抱き着いて胸に顔をスリスリしてる。ひーちゃんも満更でもなさそうな表情。
何か嫌ぁ~な感じ。頭をヨシヨシと撫でられて、子供やないんやから。
「ゆーちゃん、ちょっとひーちゃんに甘えすぎちゃう? そんなにのしかかったらひーちゃん潰れてまうで」
「私は大丈夫」
ひーちゃんに否定された。ひーちゃんもゆーちゃんの事大好きやもんな。顔見てたら分かるわ。
でもうちかて大好きやし。うちかてうちの事情があって、ゆーちゃんをあのステージに送り出したわけやし。
高畑社長から結城エミルに映画主演の話が来てるって伝えられた。恋愛映画で、相手役はまだ決まってないらしい。
社長はどうもゆーちゃん、希瑠紗丹を主演でデビューさせたいらしくて、内々で牡丹さんに打診してるらしい。
牡丹さんのリアクションは悪くはないらしいけど、社長の感覚やからハッキリとは分からん。うちから牡丹さんに聞くのはアレかなぁと思って聞けてない。
でも、正直うちはゆーちゃんに相手役をしてほしいと思ってる。理由は、キスシーンがあるから。
初めてゆーちゃんと抱き合った夜、いつかは俳優さんとそんなお仕事をする日が来るかも知れんて言うたけど、今はとてもやないけど無理。
ゆーちゃん以外の人とそんな事をするなんて、お芝居であっても絶対に無理。多分身体が拒否反応示すと思う。
だから相手役をゆーちゃんにしてほしい。
でもホンマの理由は……、堂々とみんなの前でイチャつけるから。
「もうっ! いつまで拗ねてんのっ!?
ひーちゃんばっかズルいわ、うちかてゆーちゃんとチュッチュしたいのに!!」
ひーちゃんの上に乗っかってるゆーちゃんの上にさらに乗っかる。ゆーちゃんの首筋に唇を当てて、鼻から思いっきり息を吸い込む。
はぁ……、ゆーちゃんの匂いは落ち着く。落ち着くのに胸がドキドキする。不思議。
「……、重い」
ひーちゃんからクレームが出た。でもしゃぁないやん、ゆーちゃんがどかへんねんもん。
「ほらゆーちゃん、ひーちゃんが困ってんで?」
「いや、優希じゃなくてなっちゃんが……」
「嫌や! うちは絶対にどかへん!! これはうちのモンやもん!!!」
ゆーちゃんの背中の上で手足をバタバタさせる。アカン、何やろうこの小学生みたいなノリ。めっちゃおもろい。ゆーちゃんの事を素直に好きやって言える空間、ヤバいかも知れん。
ゴロンと、ゆーちゃんが無言で寝返りしてひーちゃんの上からどいた。すかさず抱き着いてゆーちゃんの胸に顔をスリスリする。
「あ……」
ひーちゃんの口からこぼれた声にもキュンとする。本当に悔しそうな、本音の声。ひーちゃんも何も取り繕う事なく、心の底からゆーちゃんを求めてるんが分かる。
同じ嫁仲間として、ひーちゃんの事も愛せる。そう思える。だからゆーちゃんの胸から顔を上げ、ひーちゃんの唇を奪う。
「ちょっ!? ん~!!」
仰向けになったひーちゃんの両腕を押えて、重ねるだけのキスをする。薄目を開けてひーちゃんを見ると、目を見開いてびっくりした表情。可愛い、愛おしい。もっとしたくなる。
唇をこじ開けて、そろり。
「はぁっ……」
鼻から抜ける甘い声。ひーちゃんがゆっくりと目を閉じたのを見て、押えていた手を離して胸に手を……。
パシンッ!
「ええ加減にせぇよ夏希。それ俺の嫁。勝手にチューすんな!」
ゆーちゃんに頭を叩かれた。
「ええやんかっ! あんたのモンはうちのもんやっ!!」
「んなアホな話あるか! 見てみぃ、ひめが固まってるやないか!!」
「固なってんのは、ひーちゃんだけかな……?」
「やかましいわ! 誰が親父キャラになれ言うた!!」
「優希、ボク、奪われた……」
「ひめがボクっ子に戻ってるやないか!」
「じゃあゆーちゃんがチューして元に戻してあげたら?」
「コラっ! そう言いながら俺の服に手を掛けんな! 俺は怒ってんねんぞ」
「またまたぁ、そうは言いつつ抵抗出来ないゆーちゃんなのであった~」
「早く、ボクを元に戻して」
「待ってろよひめ~! 今俺がむちゅぅ!?」
ハーレムってのも、案外悪くないもんやな。
いつもありがとうございます。
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