012
ラッシュラッシュラッシュ! 目にも留まらぬ早業で剣と拳が交差する、まるで手や剣が増えたかのようなブレである! リスクは光のエレメンタル、スズは闇のエレメンタルをドローした、互いに兄と弟から受け継いだ能力だ、心なしかリスクは光の風のように、スズは闇の火のようになっている。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「はあああああああああああああああああああああああ!!」
光のエレメンタルと闇のエレメンタルが交差する。それは決戦の舞台が楽園エデン全体へと拡大した事を知らせるものであった。
「せい!」
スズが右足を大きく上げてリスクの腹をつく、リスクは大きく飛び城の外へ落っこちてしまった、そしてそのまま下へ落下、だが無傷で着地する。50階ほどの屋上から下を眺めるスズ、上を見上げるリスク、そのままスズは下へ落下する、上へ上昇するリスク、その光景は光の速さのごとく、漆黒の闇のごとく。両者は25階ほどの丁度中央で激突する、そこからのラッシュ、リスクはスズの木刀を受け止め、間合いを取る、まるで城に張り付いてるかのように二人は空中で静止する。そこから急接近して衝突、今度はリスクがスズを蹴り城の屋外へと吹き飛ばす、その向こうには6000人の軍勢と10万人の軍勢が戦っているちょうど中央だ。
激戦区。そこに二人は降り立った、だが二人は周りの大群、人々を無視する、互いの強敵が誰なのかを二人は理解している。
そこから二人はまたも急接近、瞬間衝撃波、周りの敵も味方もその爆風に巻き込まれて吹き飛ぶ。その時。オリオン座の流星が飛んできた、それをリスクとスズは二人で一撃で粉砕する。
「邪魔すんな!」
「邪魔しないでよね!」
以前ブロードがレイシャを助けようとしたときに全身全霊で止めたあの流星を二人は軽々と粉砕した、リスクの加勢のつもりで攻撃を放ったオリオン座だがそれを自粛する。
極悪神ゼウスがスズに攻撃を開始してもいいかな? っと聞く。
「そろそろ準備運動もいいだろう、やるぞ……」
「うん」
ミュウもリスクに構えるように促す。
「くるぞ! 時間もない! 一気に行くぞ」
「おう!」
まるでリスクとスズ、二人ともガトリングガンでも乱射するかのように能力のエネルギー弾を両手に集め能力と言う名のエネルギーを発射する。白い光の能力がリスク、黒い闇の能力がスズの能力。
「おらああああああああああああああああああああ!」
「うらああああああああああああああああああああ!」
「はあああああああああああああああああああああ!」
「があああああああああああああああああああああ!」
「始まりの風! 暴龍の牙! 無秩序な冠!」
「無音の永眠! 古の黄金! 最果ての大地!」
リスク側は、滅びの呪文をかたどった光風を纏った拳撃。その拳撃は太古の恐竜のように強固な雷牙と化す。その拳は規則正しい理を無視して貫通する。
スズ側は、無音による斬撃は敵を永遠の眠りへと誘う。黄金に輝く斬撃はマトリョシカの装甲おも削ぎ落とす。雨が滴るダメとなった大地を背景に再び剣は抜刀される居合いの型。
「幻視の魔弾! 断罪の紅月! 平穏の終焉!」
「再誕の嵐! 癒しの源泉! 想装の果実!」
リスク側は、ジェット機のごとく放たれる拳はガトリングガンのように非現実的な幻想への扉を開く。熟練せし罪深き拳は波紋を纏い極限の正拳突きを叩き込む。いつも通りの日常が終わりへと誘われるスローモーションの拳撃。
スズ側は、古より伝わりし斬風は灰と化し再誕する、悪夢はやがて一つの真実へと辿り着く。温水の剣は傷つけるためではなく相手を思いやる癒しへと変わる。時が逆回転する白刀は斬るものを1分前に巻き戻させる、斬ったものには何故か目の前にリンゴが現れる。
「無二の殺陣! 心終の零! 千幕冒魂の意志!」
「影業の散歌! 多重分身の蒼雷剣! 千幕冒魂の意志!」
リスク側は、後にも先にも二度とない、一つの人生が終わりへと誘われるほどの拳撃は、始まりの一歩を踏み出させる。四肢を回転させた拳は心無き相手に死の感情を芽生えさせ、モノとなったと幻覚する。
スズ側は、影を纏いし業深き剣は散歌を響かせ拡散する、自身も傷つく諸刃の剣。旅重なる雷撃は、蒼き竜の意志を継ぎ進化する。
そして最後の技は。ゆめうつつうつつのゆめを体現した者が放てる剣撃と拳撃、自身に響いている千もの魂を相手の心に響かせる。を双方放ち、相殺させた。
「な……なんだ!? うちの攻撃をスズが全部打ち消しちまう!」
「相反する攻撃をして打ち消してしまっているな」
「あんたバカねリスク……陰陽論って知らないの?」
「はっはっは愉快愉快! 爽快じゃ!」
「森羅万象、宇宙のありとあらゆる事物をさまざまな観点から陰と陽の二つのカテゴリに分類する思想よ」
「おーそうなのかー」
「か……勘違いしないでよね! あんたの為に教えてあげたんじゃないんだからね!!」
「おーそうなのかー」
具体的には、闇・暗・柔・水・冬・夜・植物・女、光・明・剛・火・夏・昼・動物・男などに分けられる。これらは相反しつつも、一方がなければもう一方も存在し得ない。森羅万象、宇宙のありとあらゆる物は、相反する陰と陽の二気によって消長盛衰し、陰と陽の二気が調和して初めて自然の秩序が保たれる。
リスクはにやりと笑い自信満々に攻撃を執行する!
「じゃあこの能力ならどうだ! 最強の能力! 時間を操る能力!!」
スズはにやりと笑い自信満々に攻撃を執行する!
「甘い! 時間なら空間を操る能力!」
瞬間衝撃波がほとばしった、白と黒の衝撃波は空間を包み二人は立っていた。
「な……何にも起きねえ……」
「あんたが過去に行ったのか未来に行ったのかそんなの関係ない、私の空間を操る能力が過去も未来も、全部今に変えた、だから何も起きない。
もとより時間を操る能力も空間を操る能力も同じ能力なのよ、おわかり?」
「ちっくしょう! 最強の能力だと思ったのに!!」
リスクはがっかりするがすぐに次の手にでる。
「じゃあこれならどおだ! ビックバンバースト!」
「それも甘い! あんたが拡散系だったら私は集束系ブラックホール!!」
この宇宙には始まりがあって、爆発のように膨張して現在のようになった。とされるビックバン、リスクが夢見た、本物のビックバンによる攻撃、それが今現実のものとなる!
極めて高密度かつ大質量で、強い重力のために物質だけでなく光さえ脱出することができない天体であるそれがブラックホール、本物のブラックホールをスズが放つ!
「ビバビバビバビバビバビバビバビバビバビバビバビバビバビバビバビバビバ」
リスクが拡散系の爆発系最強の技なら、スズは収束系最強の摂理、真理を解き放つ!
「ブラックホール! ブラックホール! ブラックホール! ブラックホール!」
それを言っていてスズは「長い!」っと言葉を省略することに決めたようだった。
「ブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラ」
ビックバンが宇宙誕生の力ならブラックホールは宇宙の終焉を告げる力、今ここでは宇宙の始まりと終わりを同時に見ていることになる。力は互角、いやスズの方が勝った、信仰の強さだからなのだろうか、神としての格がゼウスにはあった。それとたった1レベルしか差がないがそれが勝敗を大きく左右していると言っても過言ではないだろう。とにかくリスクは一瞬のスキをスズに見破られ接近され腹に思いっきり蹴りをお見舞いさせられた。楽園エデンから大きく飛ばされ、宇宙へと体は飛ばされた。戦いの舞台は遂に宇宙へと場所を変える、誰にも邪魔されない一騎打ちの戦いである。
楽園エデンから大きく飛ばされ、宇宙へと体は飛ばされた。
戦いの舞台は遂に宇宙へと場所を変える、誰にも邪魔されない一騎打ちの戦いである。パワーインフレと言う言葉がある。敵や味方の強さが急激に高まる現象のこと。
結果的に地球をエネルギー弾一発で破壊できる存在や、銀河レベルの巨大な敵が出現するなど、スケールもレベルもよくよく分からないぐらいの領域にまで達していくことになる。
これが今リスクとスズが陥っている状態である。ただしこの状況、条件には、レベルがそれぞれ100を超え常人の100倍の肉体を得ている事。
リスクの兄ザンベルトの光のエレメンタルとスズの弟ヨシュアの闇のエレメンタルをそれぞれつけている事。更に神ミュウ、神ゼウスをリスクとスズは憑依させている事。その効力が3分しか持たないと言う事に起因している。
これだけの運と偶然と奇跡が重なり合わさらなければこれ程のバトルは拝めないのだ。
「月閃!!」
その攻撃を避けるリスク、避けたのだが…そのすぐ近くにあった冥王星が木端微塵に砕け散ってしまった。リスクとスズが居るのは宇宙である、地面はない、無重力ではあるがリスクは光の力で、スズは闇の力で制御している。
「リスク!!」
「スズ!!」
瞬間衝撃波、その途端、あたりにあった惑星は粉々に砕け散りった。ゼウスは思う自分は封印されていたがかつてこれほどの人間がいただろうか、いやいない、これほどまでに闘志を燃やし全力でぶつかる人間がいただろうか、おそらく居なかっただろう。
「ミュウとやらお前がこいつ等と一緒に居る事の意味が少しは分かったような気がするわい」
「そうじゃろうじゃろう、こいつらといると面白いんだ」
雑談をしていた二人にリスクとスズは怒鳴る。
「うるせえ黙ってろ!」
「うるさい黙ってて!」
「心のエレメンタル! 名は『約束』!!」
「心のエレメンタル! 名は『誇り』!!」
ダイヤモンドダストの心の欠片が辺りに吹雪く。心のエレメンタルを取り出した、これで二人のレベルは無限、更に手が付けられないレベルにまで達してしまった。キュキュキュキュ! と音を立て、赤と青の螺旋状の色を足に纏い。
「ら―!」
「ら―!」
互いに右足をあげ顔面を蹴る、その反動でまた星が一つ破壊された、衝撃波により天王星と海王星が木端微塵である。まるで子供の喧嘩を宇宙レベルでやっているそのものだった。
「あんたにだけは絶対に負けたくないのよ!!」
スズが地面目がけて……土星目がけてリスクを叩きつける! そのまま土星は衝撃波により半壊、大きなクレーターが出来た。
「うちだって……スズなんかには負けたくねえ!!」
リスクがスズの横腹に思いっきり蹴りを入れて吹き飛ぶ、吹き飛んだスズは木星で体制を建て直し着地した。子供の喧嘩とは思えないほど規模がでかくなっている、実際リスクとスズは子供なのだが、子供の想像力を限界まで実現するとこうなるのだろう。空は割れ、大地は裂け、宇宙が悲鳴を上げている、二人の喧嘩を止める人物は居ない、止められるのはエレメンタルマスターであるブロードぐらいなのだろうが。ブロードはレイシャとの戦いで戦意喪失してしまって倒れてしまっている。リスクの前から突然スズの姿が消えた。
「くそうスズのやつどこいった?」
丁度その頃リスクに向って小さい星がリスク目がけて降ってくる、いや、迫ってくる。
「何だよあれ?」
「月じゃボケえええええええええええええええええええええ」
月をブンブンブンブン振り回すスズ。まるで教室で怒って机を持ち上げて怒り狂って投げまわすようにスズは月に木刀を刺し、闇のオーラで纏ってそれを振り回している。
「うわわわわわわ!」
一瞬釘付けになり、条件反射で逃げるリスク。逃げるったってどこへ? ここは宇宙、教室でもなければ学校でもない。だがとりあえず逃げる、何か悪い事をしたわけではないが逃げる。そうこうしている内に3分を超えてしまった。リスクとスズに突然激痛が迸る、無理もない、体に合わないリスクだらけの能力を使っていたからだ。ミュウがリスクとスズの異変に気づく。
「まずい、このままでは呼吸困難とかなんやかんやあって死ぬぞ、酸素がある地球に避難だ!」
仕方なく地球へ向けて舵を切る二人、だがこれで終わったら誰も苦労はしない。リスクとスズは互いに地球へ向けて全速全身で飛んだ、飛んでる途中互いに腕を組み仲良く大気圏に突入する……訳もなく大気圏突入中に大喧嘩を始めた。落下する中リスクは体の痛みを堪えながらスズとゼウスに渾身の一撃を食らわせる。
「うううううううらあああああああああああああああああああああああああ!!」
リスクはスズにミュウはゼウスに突進する。リスクの拳はスズに、ミュウの拳はゼウスに当たった、攻撃を食らったスズとゼウスは白目をむいている。
「ダウンバーストぉおおおおお!!!!」
下は地面、いや、地球、地球へ向かってリスクは下降気流の風の災害を巻き起こした。
スズが名前を付けてくれた風の技……「ダウンバースト」だ。ダウンバーストは地球の日本のツリー県のルミネ市のルミネ小学校に落ちてきた。リスクが思いの強さでスズに勝った、スズを助けたいその一心でスズに渾身の一撃を入れる。学校の校庭に大きなクレーターと空を貫く天空が顔を覗かせた。
痛みの感覚が鈍るころ。朦朧とする意識の中、スズは昔の思い出に感情を浸らせる。たしかあれは。リスクと会って3日もたたない内だっただろうか? スズはレディファーストという言葉が嫌いだ。男は女に優しく振る舞わなければならない。そんな『女は下、男は上』のような常識が嫌だったのだ。たまらなく、自分の性別そのものが嫌だったのだ。だけど子供ながらに『女は男に殴られない』そんな甘えにも似た余裕があった。その頃は感情に任せてリスクを挑発した、内容こそ覚えてないが確かに挑発した。いつもの口喧嘩だ、内容は些細なものだっただろう。その時スズは「殴れるもんなら殴ってみなさい」と言ったのだ。普通の男子だったら常識や理性という壁が邪魔をして時間と言う間が生じるだろう。そして男子は殴らない、殴れない。だが、その言葉をリスクが聞いた瞬間、間というモノが存在しなかった。一瞬のためらいも躊躇も存在せず、からかいも冗談も存在せず。リスクはスズを全力で顔面パンチ。殴っていた。スズは驚きと痛みを同時に味わった。そこからはいつもの喧嘩だったが、あの『頭で考えない』『レディーファーストが存在しない』男女平等パンチが何故か嬉しかった。徹頭徹尾、その衝動が……だから……!
「やったか…!」
リスクが空中で勝利を確信したその時!
「………まだだ! まだ終わってない!」
スズが渾身の力を振り絞って右足を地面でドスン!っと踏みしめる! リスクもルミネ小学校の校庭へ足を踏み仕切り。スズの様子を覗う。
「…もうよせ、勝負はうちの勝ちだ」
「嫌だ……嫌だ……嫌だ……! 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ! 死んでも嫌だ! ゼウス! 力をよこせ! 最後に取って置きをお見舞いしてやる!」
ゼウスも勝敗は決したと思った、だがスズは諦めない。それと同時にスズの思惑が脳内に直接語り掛けてくる……。スズの思考、ゼウスも驚愕の顔を浮かべて反論する。
「お前正気か…! お前がやろうとしてること……一生を代償にしてしまうぞ……!」
「構わない! この勝負だけは! 何が何でも私が上じゃなきゃダメなんだ! あたしあ上でリスクが下! 絶対に絶対に絶対に! 絶対に負けられない!」
「その根拠は…」
「あいつに! リスクに勝ぢだい!」
大きな怒号が場を支配した、スズのポロポロと流れる涙と共に語られるそのわけは……これはデートだからだ。っとしか言いようがない。論理とか動機とかこの先の事とかは一切考えない。大事なのは『今』で、全力を出し切らなきゃ相手に失礼で。隠し玉を残してこのデートは終わらせることなんてできない。それはまるで、デートの最高に良い雰囲気の中でキスまで行けないで別れてしまうような。金輪際会えなくなってしまうような。どこかそういう直感と本能でしか語れない。ゼウスは深くため息をついた後ハハハハっと笑う。
「いいぜ……! お前のその熱い想い! 全力で叶えてやるぜ!」
ゼウスがこの時始めてタメをしながら技の予備動作をする。全身を大きく開き、大気中の空気を集まて圧縮しているような、そんな『次に本当にヤバイのが来るぞ!』っというのを暗示している。スズはリスクに前ふりとしてこう助言する。リスクもその予備動作をじっと待ち、その攻撃を全力で受ける気構えだ。
「例えば……。リスクが好きなヒーローが怪獣をやっつけた後、その怪獣はお約束のように巨大化して相手を踏みつぶすわよね?」
「ああ、そのあと巨大ロボットに乗ってやっつける」
「私はね、今それをやろうとしてるの……。ただし、同じ次元で考えるんじゃないわよ!」
「…………、こい! スズ!」
「これが最後だ! 鈴の音空間! 展開!」
チリリーンっと鈴の音が最後に聞こえた。次の瞬間、世界は蒼白い光と共に点と化した……。
もう一度言う、スズは巨大化した。ただし、学校よりも大きく。地球よりも大きく。太陽系よりも大きく。銀河系よりも大きく。無限の宇宙より大きく。無限の次元よりも大きく。これらの過程を無限に続いていく空間よりも大きく。それらが無いも同然なほど大きく。これら全てが蒼白い1次元の光の点と化してしまうほど大きく。想像できない範囲が点と化すほど大きく。やがて……、それらの点が細胞のように観えながら無数に集まり小さなコバルトブルーのアリを形成した。ヒルベルト空間のルールを視覚化した状態のアリである。スズはアリを日常と同じサイズで見つめている。アリから観たらスズはスカイツリーと同じ大きさぐらいに観えてしまうだろう。
リスクの声は、もう届かない。
数学におけるヒルベルト空間は、ダフィット・ヒルベルトにその名を因む、ユークリッド空間の概念を一般化したものである。
ここは何処だろう? ヒルベルト空間のルールがアリ化する世界。周りには星々が存在をか細く照らしている。宇宙空間なのに地面はあり、上から下へ紅いグラデーションを纏っている。その地平線とも呼べない場所でも夜空が広がっていた。下から上へ蒼いグラデーションが綺麗に瞬いているが。今、この場には小さなアリ一匹と紅い地面の上に立っているスズしか居ない。不可視の紅い大地と不可視の蒼い空……それら不可能なものを目視で確認できるスズとアリ…。この誰も知らない、誰も見たこのが無い場所をスズが作ったとするならば。『鈴の音空間』としか呼びようがない。知っている範囲、己の想像の限界すら超えて巨大化したスズ。一人の人間が知略を尽くしたその果てに辿り着ける場所としか言いようがない。そして、スズは技とも呼べない動作でアリを普通にドン! と踏みつぶした。アリの世界は潰れた……。
誰も理解できないだろう。例えばここに何でも創造できる神様作家が居て。15年以上温めていた大量のボツと正規ルート。その他多種多様な別世界でのバラバラな物語が、全てひとつのアリと化し、神様作家と同じ土台まで登ってきた2次元キャラクターが全て丸っと潰してお終いにしてしまったのだ。書きかけの物語も。ハッピーエンドの物語も。バットエンドの物語も。全ての次元はここに帰結する。スズは哀愁とも似た悪い顔をして微笑する。
「これでわかった? あたしが上で、あんたが下ってことが……。ふふふ、これであたしも、少しは自身が持てたかもね……。ふふ……あっはっはっは!」
「まだ……まだ……」
「!?」
聞こえるはずの無い声がスズの耳に届く。声の主は足元から聞こえてくる、アリが潰れてるはずの場所からだ。スズは足が震えて死骸を確認することができない。戦慄の汗が頬をつたう。
まるで「それがお前の限界だ!」っと言わんばかりの熱くもある炎のような希望と勇気に満ち溢れた覚悟の言葉が続く。心に一切迷いがなく情熱に燃えている。
「まだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだ!」
「な……!?」
「スーパービックバンバースト!」
瞬間、アリの皮膚がまるで卵の殻でも破るようにピキピキと音をたて。リスクが爆誕した。
途端に宇宙創世のビックバンが炸裂する。単一宇宙どころではない。無限の次元全てでビックバンが炸裂し、スズは1点に集約させた所を特異点とし、再び世界は広がりを見せた。
下段から上段へ天おも貫く勢いでのアッパーカット。俗に言う昇竜拳のポーズにより。リスクの拳がスズのアゴに当たる。スズは天高く吹き飛び。舞台はルミネ小学校の校舎へと帰って来た。この間0秒。常人にはスズが鈴の音空間と唱えてからリスクが一瞬で距離を詰め、アッパーカットを轟かせたようにしか見えない。スズの心は折れ、リスクの心は和んだ。
一つの戦いが、壮絶なデート戦争がここに幕を閉じた。
その一撃は地球の大気圏まで突入しクレーターを残し、スズは気絶しそのあとリスクも気絶した。極悪神ゼウスが次の憑依体を探そうとしたその時、ブロードが『原初の書』を使い再び極悪神ゼウスは封印された。
極悪神ゼウスの10万もの軍団に押されている6000人の能力者達。それを率いるオリオン座は力尽き膝をつき……燃え尽き……。
「もはやこれまでか………」
と思ったその時、ゼウスの軍団10万人の兵達の動きが止まり、内側から卵が割れるように光に包まれる。ただの屍となり果てた体は光と共に爆散する。
「戦争が終わったんだ! リスクが戦争を終わらせたんだ! 皆! 終わったんだ!!」
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」
全ては終わった、戦争を終わらせた事に涙する人々。
最強を、エレメンタルマスターを自称したスズを倒した、もちろん諸悪の根源たる極悪神ゼウスも再び封印された。
今はただ、まるで子供のように二人仲良く眠るだけであった。
「ここまで来れたのも皆のおかげだ、私は幸せ者だ」
ミュウは柄にもなくそう告げる。
1ヶ月後、全てが元通りになった時。スズの折れた心は時間が自然と回復していった。残りのスタンプを集め終わり、大会ではエレメンタルマスタートーナメント決勝戦が行われた。そこでリスクとスズがバトルすることになる。
とくんっと心臓が鼓動する、この感情は何? スズは頭が良いからその意味をなんとなく分かってしまった。
~リスクが私の恋に気づいてくれない~
だがそれでもいいと思った、これだけの冒険をして、これだけの旅をしてようやく、ようやく、スズの好感度が0から1に上がった。逆にリスクは恋愛とは真逆の存在、友情が0から1上がった。運命の糸が、今、動き出す。
審判が戦闘準備の合図をする。
まずメダルを親指ではじき宙へ浮かす、浮かせたメダルは回転しトリガーの上あたりでまるで水中の中に入ったように空中で静止する。静止したメダルは水晶の結晶体のような形に変貌する。互いに西部劇の拳銃を抜くような動作をしてからまるでヒーロー戦隊の変身ポーズのような仕草をして、リスクとスズは声を合わせる。
「「エレメンタル! ドロー!」」
二人の勝負の行方は、まだまだ終わる気配はない。
終わり。




