011
瞬動、目の前に現れたヨシュアの顔にスズは反射的にビクッと条件反射して後ずさりするが、右足を踏まれて体の自由を揺さぶられる。折角なので負けず劣らずそのまま頭突きをお見舞いしようと思考を切り替え、攻撃に徹するがヨシュアの方も頭突きの姿勢に入った。一瞬無意識で赤面してしまった油断により顔を逸らす形で抱きつく形になる、一瞬心を安堵したかのような間が発生したが、ヨシュアはスズの腹に衝拳。一瞬にしてスズの幻想を打ち砕く。
かは……っとなったスズは後ずさりしてからの3連撃。横ロールで交わすスズは状態を起こし、神経による加速。前後左右四方八卦からによる連続攻撃を放ったがまた「加速しすぎてしまった」、リスクのような無駄で豪快な剣劇になってしまい体力がいつもより無駄に消費される。からの足蹴り。
スズはまたも転ける。子供のよう倒れてしまった自分のふがいなさに激怒するが、その激情を取り払う。ここで感情的になってはダメだ。すぐ相手の目を離さずに体制を立て直す。
「……、僕の場合……」
「……?」
ヨシュアが珍しく自分語りをする。
「必殺技より通常攻撃のほうが強いんだよね」
「……それは嫌み? だったら買うわよ」
「喧嘩を売ってるんじゃなくて事実さ、現にこうやって僕は有利だ。だから僕はあえて現実的になにも必殺技は作らないし、作ろうともしない」
「あっそ!」
スズの渾身の連続攻撃は、イメージした流麗な動きとは違い。
2撃加速「しすぎた」。
5撃減速「しすぎた」。
1撃剣劇を合わせられたがまたも足蹴り、おっとっとと体制をなんとか治そうとするスズはヨシュアが何か仕掛ける前に妨害のつもりで木刀を降るが空振り。
という現実に叩き込まれる。全く活路が見いだせない。
が、今の流れで大体の流れは掴んだ。スズはヨシュアとの戦闘は久々だったので確信は持てなかったが。だいたいが[自爆狙い]なのだ。
自分からの攻撃でダメージを与えない、相手の疲労やミスを誘発するタイプ。トリッキーというかテクニシャンというかそういう正攻法でやるタイプではないのだ。
例えば、試合の競技でお互いに礼をするシーンだと。「おい、速く礼をしろよ」とか選手なのにあらぬ方向に飛んでいく。そんなイメージ。
レイシャのカウンター狙いと違う所があるとするならば相手の攻撃を待たない所だろう。護身術ではないのだ、攻撃をして、相手の動作を崩す。
剛なら柔に、柔なら剛に。っで簡単で良いのにと思うスズだったが、それらのことは今気にうする必要はない。足し算と引き算をやってる訳ではないのだ。矛盾の矛と盾でお遊びをするのはもう終わり、相手が矛と盾を持っているのなら、一本の刀で心を強く持ち制するだけだ。
「心なら技で崩すまでだ」
「!」
今度は心を読まれた、熟練者同士だと相手の行動や心を読まれる、いや。家族だから長年の意志疎通というのもあるのかもしれない。この際どちらでも良いがこの時にスズは理解した。「心」「技」「体」どこかに重点を起き始めたから3点のうちどこか必ず欠ける所がある。その欠点の方に重点を置こうとしていることに。スズは迷う、「え、どうしよう」と。リスクのように考えないで動くタイプではないのでどうしてもそこで一呼吸、一瞬の間が生まれる。そこをヨシュアは見逃さない。足蹴りで前方に前足蹴り。お腹めがけて打たれたので仰け反るが、タダじゃ仰け反らないのがスズ。そのまま前屈みのまま頭突きをなんとか一撃お見舞いできた。間を作りたくて大きく避けようとするヨシュアを追う形で肘の打撃、からの斬撃。そこから上中下の連続相打ち、またも下中上段の相打ち。スズは蝶のように舞い蜂のように刺す。ヨシュアは蛇のようにうねりカマキリのように切りかかる。
双方大きく間合いは変わらない、どちらかが変わろうとすると磁石のように引き合う。ここまで能力なし、観戦する人が居ればあまりの連続劇に目が釘付けになるだろう。そんな目さえ盗んでなおも舞う。
いよいよヨシュアは能力を使う、闇を影のように操り始める。
「折角だから僕の操りかたを見せてあげるよ」
「そんなんいらんわ!」
スズも神経を発動させて体を加速させる。
影は弧を描くように、卓球のピンポン球のように規則正しく剣を掴みバウンドさせながら周りを飛び回る上昇の弧、下降の弧を描きながら。全速力で逃げまどうスズとの距離を積めてゆく。スズの壁走りがそのままヨシュアめがけての突進攻撃となって行った。8の字に影はゴムのようにヨシュアをバウンドさせ天上に張り付く。
スズはここまでで能力を強化させていたので神経の電磁波で天上の鉄に吹いつく。双方逆さまの状態での我慢大会が始まった、人間なのでいつか逆立ちにも限界がくる。その我慢大会である。8の字にくの字にへの字に曲がる影を足場にスズは剣劇をお見舞いする、ヨシュアも負けじと突きの剣劇をお見舞いしする。一瞬スズが手を滑らせて落下しそうになったが。電撃で右横の壁に吹いつく。ス○イダーマンばりに鉄の水瓶を自身にスズは引き寄せそれを足場にダッシュ。竜巻旋風斬りをお見舞いした、後の足下には何もないそのまま落下するかと思いきや電磁波で水瓶が足場代わりで引き寄せた。ヨシュアは沢山の影闇で天上にへばりついているがスズの足場は二・三箇所である。ヨシュアの影も足場にスズと水瓶は加速する。まるでピンボールか何かのごとく目にも止まらぬ早さでヨシュアはもはや残像すらも追えなかった、カツンカツンと小気味よい鉄の水瓶のみが位置を教えてくれる唯一の場所だったが音が遅くてついていけない。スズはその流れの中で体を丸め高速回転。手裏剣のように斜めにかかと落としを食らわせてヨシュアをドカンと斜め下にたたき落とした。
爆風と地面が砕ける気持ちの良い音が鳴り響く中。ヨシュアは歯をぺっと一個吐き出した、コロンコロンと落ちる骨は想像以上にダメージを与えていたことを意味する。口から血がツーっと滴る中、流石のヨシュアも冷静さを欠いた。
「このまま押し切る!」
スズは突進、そのまま牙突する構えに入って勢いは止まらない。そこでヨシュアは賭けに出た。
「もういいや、終わりにしよう」
「それはこっちのセリフよ!」
ヨシュアも牙突する構えで前に出る。お互いチキンレースのように車の衝突するかしないかのギリギリの所でスズが「でやああ!」っと力を振り絞り突き抜ける。
が、ヨシュアはそれを避けることはせず当たる気で居た。そのことを悟ったのか、ヨシュアを傷つけたくないと思いすんでの所で止めてしまった。さっきまでの勇猛なスズの表情は無くなり、顔面蒼白。
その姿を観たヨシュアは悪魔のような笑顔で微笑み。
「でえい!」
突きをお見舞いしたその時!
ゴツン、頭から何かが降ってきた。ヨシュアの目の前は真っ暗になる。結論から言うとさっきまでスズが使っていた水瓶がスズの電磁波の操作によりヨシュアの頭の中にすっぽりと入ってしまった。
ビュン!
ヨシュアの剣はスズの頬を血で染め、かすり。スズは間一髪の所でそれを避ける。
「うおんらあああああああああ!!」
スズは右手をグーの形にして思いっきり水瓶の壷に入ったままのヨシュアの顔面を殴り飛ばした。
ゴオン! 鉄の水瓶はヘコミ、ヨシュアはそのまま気絶した、スズの拳は若干の血で滲んでいたが……なんとか勝てた。
「はぁ……はぁ……」
遠くからわぁあああっと戦場で戦っている人達の声とも雄叫びともしらない声が聞こえる。
「これで解った? あたしが上で、あんたが下なのよ……はぁ……」
落胆のため息が響く中、ここに、壮絶な姉弟喧嘩が幕を閉じた。
「……約束通り。このゲーム機は没収よ」
リスクとザンベルトの戦いは至ってシンプルだ。「力」と「力」、防御なしの激突、回避なんてもってのほか。回避なんぞしようものなら「卑怯者」「男失格」「恥を知れ」なのである。
なので結果として相撲のような、もしくは闘牛同士のぶつかり合いとなる。
体格差が歴然とあるリスクとザンベルトであるがその想いは同じ、いわく。「体格が小さくても心が負けなければ勝つ」を地で行き続けている。
「確認不要だが一応言っておく」
「あ! うちわからぞそれ! 言葉は不要! 拳で語れ! だろ!」
「まあ、さんざん言ったからバカでも解るか。ならこれ以上の言葉は不要だな」
「ああ! 戦おう!!」
「へ……! 行くぞォ!」
ザンベルトはタックルで突進してくる、リスクは何の迷いもなく飛び込む。体格差は歴然、ザンベルトは自分でもリスクが吹き飛ぶ絵をイメージした、だが現実は違った。地に足着く「今」は違った。
互角! 双方激突してどちらも負けなかった! 互いが激突して車が双方後ろが宙に浮くように頭から激突。瞬間、その後二人の足が着いた瞬間またも頭突きが激突、今度は双方足が地面をすり、間が生まれる。
「へへへ!」
ザンベルトはそれだけ言うとエレメンタルマスターをこんなもんいらねえ!っとばかりに取り外した。
「ははは!」
リスクも真似してエレメンタルマスターを取り外す。怒るザンベルト、笑うリスク。瞬間、打撃! 打撃! 打撃! 打撃! 打撃!
回避が無い! 連打連打連打!! 疲れるまで連打! 顔面、腹以外眼中になし。
「らぁあ!」
「だぁあ!」
両方の拳が激突する、衝撃波でまたも空間が生まれる。だが、左右には動かない、前後にしか動かない。またも突進、激突、連打連打連打! 互角の拳のぶつかり合い! そして空間が生まれる。この繰り返し、シンプルで極限まで単純で、誰が観ても解りやすい。
倒れた方の負け。という理論である。
今度はリスクの方が後ろに狭まる、徐々にその繰り返しで退路が無くなる。壁に追いつめられラッシュが押さえ切れられない。ならラッシュしまければいいや! ラッシュラッシュラッシュ! リスクはラッシュの多さを武器にザンベルトが後ずさりするまで続ける。ガトリング! ガトリング! ガトリング!
そのままどんどんドンドン後ろに下がってゆきリスクは走り出す。
「ラララララアラララララララララア!!!!」
ザンベルトを部屋の隅まで追いやり、そのままの勢いで部屋の壁を壊し。突き抜けた!
そこまでは良かったが、ザンベルトが力を溜める・・・!
「ぬううううはああああああ!!!!」
ドゴン! っと一発、今度はリスクが反対側の壁をぶち抜いて飛ばされてしまった。
「のおおおおおおお!!!!」
「らあああああああ!!!!」
またも頭突き、今度は一番助走があった状態での頭突き。流石に両方とも石頭であっても二人ともふらつく。頭の上にヒヨコをピヨピヨと浮かせて、どちらが速く復帰できるか記録を競っている。
だが互角、もう一度ドゴンと頭突き! ピヨピヨ……またドゴンと頭突き! ピヨピヨ、ドゴン! ピヨピヨ、ドゴン! ピヨピヨ……。
「だァあ……だァあ……」
「ぜい……ぜい……」
今度は両方の腹めがけての強烈な一撃。流石に両方とも疲れの色が見え始めた。体はアザだらけ、立ってるのがやっと。だが、リスクはリスクだった。
「兄ちゃん!」
「何だ! 会話はイラねえ! って言ったろお!」
「おしっこしてえ!」
「あァ!? しょうがねえな! トイレ休憩だおらあ!」
「トイレってどこだ?」
「ああ!? しょうがねえな! 一緒につれションだオラア!!」
訳が分からない流れになった。一時のトイレ休憩が終わった後に再び同じ定位置に立ち。準備運動。
「うし! 再開だ!」
「おう!」
何事もなかったかのように再度バカの一つ覚えで突進。突進、突進、突進……。
数分後、ついにリスクが膝をつく。
「はァ……はァ……ぜい……」
「ふーはー……、よし。俺の勝ちだ」
「あ!? ちょっと待てよ倒れるまでじゃねえのかよ!?」
「あ!? 男って言ったら膝をついたら負けだろうがよ! 男は死んでも膝をついちゃならねえ!」
「え! 聞いてねえよ!!」
「あ!……あーそうか、旅をしててそういう美学に影響受けちまったか」
「ノーカン! ノーカン!」
「しょうがねえなあ! ノーカンだおらあ!」
何と言うことでしょう、ノーカンになってしまいました。そのご同じことを繰り返し、ザンベルトは膝をつく。
「やった勝ったー!」
「ったくしょうがねえなあ―、俺の負けだ!」
「やったぜ!」
「強くなったな、だが次は負けねえ」
「うちだって負けねえ!」
「……ほれ、行くところがあるんだろ。この光のエレメンタルを持っていけ、理由は聞くな」
「ああ、じゃあまたあとでな!」
そういって投げ渡された光のエレメンタルを渡され、純粋に走り出すリスク。
「……ったく、俺も甘くなったもんだな……」
ザンベルトはそう言い残して一人ぽつんと立ったまま気絶していた。
ブロードはレイシャを説得するためにレイシャと全力でバトルし。
それを邪魔されないようにザンベルトはリスクとバトルをし。
スズは檻から出され、ヨシュアと話をするが、説得虚しく戦って止めた。
その後、てんびん座はお役目ごめん同然の状態になり。ゼウスの機嫌を損ねて逃げ出す。
闇の力を手に入れたスズは暗黒面に堕ち、正気を保てなくなる。そこへ極悪神ゼウスがスズにとりつき憑依する。ここにゼウスの力を手に入れた暗黒神スズが生まれた。
共倒れとなったブロードとレイシャ、そこへ駆けつけるリスク、リスクはレイシャの頼みを聞き、リスクはミュウを憑依させる。
「おお……何か力がみなぎってくる感じがあるぞ!」
ミュウがリスクに語り掛ける。
「急ぐぞ、嫌な予感がする、ともかく暗黒神ゼウスを何とかしなければこの闘いは終わらない、あの変態ゼウスをやっつけるんだ」
「うっし! わかった!」
迷いなく楽園エデンの城の中を爆走するリスク。
城の最上階、リスクは遂にスズと対面する、だがそこにいたのは変わり果てたスズだった。
「来たわね、リスク」
「ん? どうしたスズなんか雰囲気かわったな」
リスクの言動にミュウがツッコミを入れる。
「バカ、極悪神ゼウスがとりついて性格まで変わっちゃったのよ、何とかするにはゼウスとスズから引っぺがす! その役目は私がするわ!」
対するスズとゼウスは……。
「ふ……ふふふ……素晴らしい力だわ、ヨシュアの奴が欲しがったってだけはあるわね、力がみなぎってくる……何でも出来そう」
「ハッハッハ! そうだろそうだろう! 我! 神ゼウスの力だ !信仰も他の神の比ではないわ、所でスズちゃんや、頭なでなでさせてくれい、そしたらわし元気百倍……」
「させるわけないでしょばーっか」
冷静な態度でツッコミを入れる。
「おぉ~う、その冷たい態度も更に磨きがかかってて最高にグッドだわ~っはっはっは」
ミュウが一番大事な事を言いたそうなのでリスクは耳を傾ける。
「リスクいい? 私との憑依なんて初めてだからわからないだろうけど神との憑依って果てしなく体力も精神力も使うのよ、もって3分!
それ以上はあなたの体がもたない、それはスズちゃんも全く同じ事よ!」
「3分だな……わかった」
「いい! 大事なことだからもう一度言うわよ! 3分でケリをつけるのよ!」
そのミュウの声はスズにも聞こえている、しかし構わず続ける。
「どうリスク、今の私、最高に気分がいいからデートしてあげても良いわよ」
リスクは構える、そしてきょとんとする。
「デートって……アレか」
「そうアレよアレ、私達二人にしかわからない秘密の言葉」
ミュウとゼウスはきょとんとする、頭の上に(?)マークを浮かび上がらせる、リスクはにやりと笑う。
「そっか、デートだったら仕方ないな」
ミュウは(何ふざけてんのこいつら!?)っと驚く。
「ちょ! 二人とも何デートとかわけわかんない事言ってんの!? この状況で、今は世界の命運がかかってる時なのよ、能力者6000人があんたの勝利を願ってる、そんな時に……!」
ゼウスもそのデートと言う言葉にちょっかいを出すつもりはないが現在の状況をちゃんと理解しているかどうか聞く。
「おいスズちゃん状況……わかってるだろうな」
「ええ、解ってるわ、リスクを倒す、それで終わり、いつも通りよ」
「ならいいのだが」
リスクはスズとゼウスの事などお構いなしに身構える。
「ごちゃごちゃと訳のわかんね―事を言いやがって! やんのか! やらねーのか!?」
「ふふふ、リスク、あなたまだ理解してないのね、私の立っているここ……位置が……」
スズは自分が立っている場所を、地面を指さし語り掛ける。
「?」
「わかった、教えてあげる……」
「………」
「大会なんてもう必要ない、もはや私が数多の能力者達の頂点、その最強の称号エレメンタルマスターの名を持つに相応しい人物……!」
「………?」
リスクは首をかしげる(こいつ何を言ってるんだ?)っと素で思っている。
「まだわからないのリスク……バカね……いい?」
瞬間、スズは一呼吸置いてからまるで自分の存在を嫌でも誇示させるかの如く叫ぶ。
「私が宇宙で一番強いって事よ!!!!」
突如として周りから轟音が響きわたる、まるで世界の新たな支配者を祝福するかのように、
楽園エデンは暗黒の気をまき散らし轟音を響かせる。
リスクVSスズ
スズに突進するリスク、その中でミュウがリスクにアドバイスをする。
「結界を太陽系全体に貼った!ここでの時は止まっている! 壊れたものはあとで全部治す!だから! 思いっきりやれ!」
「おう!」
駆け抜けるリスク、その突進をスズは甘んじて受ける! ゼウスは霊体のため攻撃することが出来ない、霊体同士なら攻撃することが出来る。もとは1対1だが神の霊体2体が居るからややこしい。だが、これ以上増えない事はありがたい事なのだろう。助けは来ない、邪魔者はいない。ゼウスがスズの上から見上げる。
「小僧とお嬢ちゃんのの武術は初めて見る、まずはお手並み拝見だな」
スズが木刀を構る、余裕しゃくしゃくという感じでリスクに目をやる、だが警戒は怠らない。
「来なさいリスク、あんたなんか、能力なしでも勝てるわ」
「何をお! だったらうちもだ!」
いきなりの能力は使わない宣言、その声にリスクは自分も能力を使わない宣言をする。理屈の問題じゃない、それは意地、意地には意地を。力比べではあるものの心の力比べでも負けたくないのだ。
外は雨が降り出した、城の外にいる6000人の能力者達も、10万人のゼウスの兵も皆戦っている、皆必死だ。その雨が楽園エデンの王室に降り注ぐ。
ラッシュラッシュラッシュ!面、小手、胴、上段、中段、下段、リスクは拳、スズは木刀で戦いの放物線を描く!一旦間合いを開く、それからのまたラッシュ!
能力を使わない戦闘なのでミュウもゼウスも場を若干離れて高みの見物を決め込んでいる。
ミュウもゼウスもお互い口には出さないが考えている。
(長期戦はまずいぞ、いや……そもそも二人が戦ってる所は何度も見たことがあるがこういうガチのバトルは初めてだ、この場合どっちが勝ってもおかしくない)
(ほう……あの少年なかなかの腕前だな、格闘に疎い俺でもわかる。並々ならぬ鍛錬を積まなければあんな成熟したなめらかな型にはならんぞ)
スズの木刀による攻撃がリスクの顔面を深くえぐる、木刀でビンタした形だ。普通の真剣ならリスクの顔面が大変グロテスクな状態で切れてしまっている所だ、だが幸い木刀、
打撲程度ですんでいる、まずスズが一本とった、取ったと言う事は普通の戦闘、真剣なら相手は死亡してしまっていると言う事だ、完全にリスクの負けである。リスクは口から血を吐く、いや垂れ流す、軽くだが口から出血してしまったのだろう、心配そうに見つめるスズ、だが気は抜かない。友であり親友であり理解者ではあるが気は抜かない。
リスクは腕をクイックイっと「かかってこい」の意思表示をする。
それをスズは(お言葉に甘えて!)っとリスクの顔面脳天に向かって攻撃を開始する。
リスクの猛烈なラッシュ! ―当たった。中段による正拳突きがスズのお腹目がけて直撃。
「うぐ………」
途端にスズは空嘔吐、吐しゃ物を吐き出しそうになる、だが、口を思いっきり塞ぎそれを耐えた、口いっぱいに含んだ吐しゃ物を飲み込む。
「けほ……けほ……けほ……」
普段乙女心とかを気にして凛としているスズだが今は色気も何もない、ついでに食い気も何もない、ただ勝負をする勝負師の顔だ。
これで両方とも1本を決めた。そして二人とも同時に必殺技を決める。
「月閃!」
「ビックバンバースト!」
その攻撃はかつてさそり座と戦った時のような緊張感と威力を持って両者の間合いを更に広げた。互いの力量は互角、全てにおいて互角、ただ一つ差があるとすればそれはレベル差だ、いつか前にスズが「このレベル差はもう一生埋まることはないわ」っと言ったことだ。
リスク レベル106 プレイ時間66時間。スズ レベル107 プレイ時間66時間。
人は努力した分の報酬を受けなけらばならない、努力は必ず報われる、そう信じていれば、その願いはかなう、互角ではない、たったレベル1ポイント差、そのレベル差が。スズを絶対の強者たらしめている、……かに見えた……。
「しまった……油断した……私はとんでもない間違いを犯していた」
「にっひっひっひっひっひ」
スズが苦く苦しむ、よ~く考えて欲しい。スズがゲーム攻略に頭を使っていた時リスクは何をしていた?ただダラダラ遊んでいたか?いいや違う、断じて違う。リスクは己を磨いていた、鍛えていた、レベルではない、リスク本来の身体能力は昔とは比べものにならないほど成長していた、度重なる反復練習。スズがゲームのルール通りにレベル上げをしていた間に、リスクは己をずっと鍛えていたのだ、レベルでは表せない本物の実力がスズを襲っている。
拳と剣を交えて今回初めてその差を実感した。
これでは勝負がつかない。系統は違うが互角の勝負を続けている。
スズはリスクの強さを認め、ゲーム機「エレメンタルマスター」を前にだす。
リスクもスズの強さを認め、ゲーム機「エレメンタルマスター」を前にだす。
ゼウスがにやりと笑う。
「やっとわらわの出番か」
ミュウもにやりと笑う。
「それはわらわも同じこと!!」
まずメダルを親指ではじき宙へ浮かす、浮かせたメダルは回転しトリガーの上あたりでまるで水中の中に入ったように空中で静止する。静止したメダルは水晶の結晶体のような形に変貌する。互いに西部劇の拳銃を抜くような動作をしてからまるでヒーロー戦隊の変身ポーズのような仕草をして、リスクとスズは声を合わせる。
「「エレメンタル!」」
「「ドロー!」」
ここから先は異能の力、神ミュウと神ゼウスの能力が最も色濃く判る能力者同士のバトルになる。舞台は楽園エデン全体へと拡大する。
あなたは神を信じますか? もし信じていたら何が出来るのでしょうか? 神様は何でも出来る? では心は?
光のエレメンタルはキラキラと輝く、闇のエレメンタルが黒く轟々と燃えている。
互いに構え、間合いを見計らい、そして進撃する。
「おらあああああああああああああああああああああああ」
「はああああああああああああああああああああああああ」




