表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バイト先が異世界迷宮だったけどわりと楽しくやっています  作者: 夏野 夜子
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/492

繁忙期とお休み17

「カ〜ワイイシノチャ〜ン〜、ワケモワカラヌミチヲユク〜、ダッテ〜エェ〜シ〜ノチャンハ〜、トッテモカワイイダカラ〜」


 プェッ!!!


「シノちゃん、もうちょっと静かにしようか」

「コンニチワ〜シノチャンダヨ〜」

「知ってるから」


 謎の演歌風な節回しで謎の歌を唄う謎の鳥。

 気分良く歌っているからか声量も大きいし、セルフ合いの手らしき鳴き声もでかい。人影が見えないとはいえ、午前中の住宅街でのしのし歩きながら歌うとか迷惑でしかないと思う。


「ア〜シノチャンツカレチャッタ〜モウ歩ケナイ〜」

「いや、まだ10メートルくらいしか歩いてないんだけど」

「ユイミーちゃんハシノチャンノ10倍ノ歩幅デショ! シノチャンニトッテ10メートルハ100メートルクライダカラ〜!」

「そうだとしても100メートル歩いただけで疲れるのはおかしいから。やっぱり食べ過ぎなんじゃ」

「シノチャンフトッテナイッ!!!」

「わかったから静かにして。だから抱えていくって言ったのに」


 ちょうどいいサイズのコットン製トートバッグを見つけたのでそこに入っててもらおうとしたのに、最近運動不足だから歩くと言い出したのはシノちゃんだ。挫折が早い。

 タスケテ〜と片足を上げるので、仕方なく抱き上げてウェットティッシュで足を拭き、持って来たトートバッグに入ってもらった。バッグから尻尾の先と頭だけ覗かせてプェッと鳴いたシノちゃんは、それで満足したのか大人しくなってくれた。


 昨日のこともあってちょっと不安だったので、どうしても歩きながらキョロキョロしてしまう。けれど、見渡す限り知っている人の姿はなかった。

 途中で駅に向かう大学生グループらしき数人と同じ道を歩くことになってヒヤヒヤしたけど、シノちゃんは黒くて曲がったクチバシでトートの端を噛みつつ黙っていてくれた。


 自転車、買おうかな。

 移動に時間がかからないし、買い物の荷物も載せられるし、変な鳥と一緒にいても、自転車ですれ違う一瞬なら気のせいで終わらせてくれるかもしれないし。あとで値段を調べてみよう。

 駅が見える位置まできたら、春休みを謳歌するように明るく騒いでいるグループとは違う方向に進む。今日は駅前のスーパーで買えるだけ買い物してとっとと帰る予定だ。


「テピちゃんたち、いつも通りでよろしく」

「テピ」

「シノちゃん、これからスーパー行くから、喋らずなるべくじっとしててね」

「シノチャンイツモイイコダネ〜」


 今まで出会った鳥の中で、いや今まで出会った全生物の中で一番フリーダムなシノちゃんなので若干心配はあったけれど、それでも返事の声が小さかったので大人しくしてくれるつもりのようだ。

 シノちゃんの頭をちょっと撫で、それからテピちゃんたちもそっと撫でる。それから私は気合を入れてスーパーに入った。


 お米は通販で頼んだ。砂糖と塩もポチった。もちろんマンゴーと季節の果物も。あとニンニクも。今日とりあえず買うのは、食材だ。

 カートを取り、カゴを載せる。それから私は目についたものをどんどん入れていった。


 葉物野菜に根菜、ナストマトキュウリタマネギにブロッコリー。今晩もサフィさんが食べに来るらしいので、ニンニクも買っておく。お肉も3種類色々買って魚介類は冷凍ミックスを買って、卵もチーズも買う。

 とりあえず献立はあとで考える。明日は買い物に行かないつもりだし、しばらく買い物しなくていいくらい買い込もう。

 パスタやら牛乳やらシノちゃんの視線を感じて生クリームやら、冷食も買い込んで、入店10分で山盛りのカートを作り出しレジに向かった。レジを通した商品を大きいマイバッグに入れてもらいつつ、重そうなものはリュックに入れる。


「重っ……」

「タクシー乗ロウヨォ〜」

「それは贅沢すぎるでしょ」


 ずっしりくるリュックを背負いシノちゃんを潰さないようにバッグを持って、よたよたと来た道を戻り始める。駅前にあるロータリーに差し掛かると、シノちゃんが突然大声を出した。


「すみませーんタクシーお願いしまーす」

「エッ?!」


 シノちゃん、今私そっくりの声を出した。

 車にもたれかかって休憩していたタクシーの運転手が、はいどうぞーと愛想良く返事をして早速手ずからドアを開けてくれた。

 ニコニコとドアを開けながら待たれて、スルーするわけにも行かず立ち止まる。

 いやシノちゃん声真似とか鳥みたいなことして。


「ハヤクシテ〜」

「いやシノちゃんね、そんな勝手に」

「ウシロニイルダヨネ〜」

「え、」


 のんびりした声に私は思わず振り向く。

 こちらに向かって歩いて来ている人が「由衣美」と呼ぶやいなや、私は重たい荷物をものともせずにタクシーに乗車した。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 鳥かわいい。 声真似!スゴイ! [一言] そういえば、シノちゃんはオウムでした。 死の鳥という名前で派手な色のオウムというギャップ、素敵です。 シノちゃんの頭わしわし掻いてあげたい…
[一言] ああっ! うしろに!うしろに! シノちゃん万能ウザかわペットで優秀すぎる……。今まで声真似悪用しないでいたイイコダネ〜!
[一言] まさかのシノちゃん声真似w しゅごい…! そして背後から迫る奴。 めっちゃホラーじゃないですかヤダー
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ