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孤高のハンター ~チートだけれどコミュ障にハンターの生活は厳しいです~  作者: フェフオウフコポォ


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79/100

79 獣人の信条と計略

2000文字程度で、ちょいと短めです。



「いいかマコト? 確かに俺達の国は力こそが正義。

 強い奴が正しい。そしてお前は強かった。だからお前は正義だ。」

「……はい。」


 放たれた言葉からは、勝敗がつき、そして賞賛が贈られている事が分かる。

 だが、そのはずにも関わらず醸し出されている雰囲気はまったく違う。

 その雰囲気を例えるなら、まるで先生が生徒を叱っている様子にも似ていた。

 

「あぁお前こそが正義だ。

 だ、が、な? いいか? 強い者には責任が付き纏う。

 力を示し群れの頂点に立ったという事はつまり、その群れを『俺が守る』と宣言したのと同義! 特に俺達狼の一族にとってはな!」

「……はい。」


「だがお前はどうだ! 勝ったかと思えば撫でくり回すだけ! 守るどころか嫌がらせだ! 甚振いたぶって苛めるだけと来た!」

「ごめんなさい……」


「そしてそれ以外は全く求めないと来た! お前は一体何がしたかったんだ本当に!」

「……ただ……ただ、モフりたかっただけでござる……」


 マコトに説教をしているのは、コンでもなくベンだ。

 ミトの訴えで怒ったコンは、あっという間にマコトに負けた。


 マコト自身、アリサ達と一冬を一緒に過ごした事で何度となく訓練に付き合わされることになったことで対人における手加減を学び、仕留める事を前提としていない戦い方を学び終えていたから問題は無い。

 厳密に言えば人と獣人の差は大きいのだが、主に組手の訓練相手であるアリサも通常の人間から見れば異常な力量に成長していたから大差はない。

 アリサが強いと認めたコンにしても、マコトから見ればどんぐりの背比べに近い物でしかなかったのだから、アリサ達との訓練同様に怪我をさせないように配慮しながら制圧すれば良いだけ。


 あっという間に負けを認めたコンに対しては、約束通り撫でた。

 そして


「くぅっ!」

「よーしよしよしよし! よーしよしよしよし!」

「も、もう殺せぇ……」

「よーしよしよ――えぇ……」


 と、ミトの時とまったく同じ流れに落ち着き、その様子を見たベンがまた勝負を挑んできて圧勝しての冒頭である。

 流石に空気を読んでベンをモフるのはしていない。


 実のところは単純にモフモフ対象から続けて「殺せ」と言われてしまったのが忍びなく、悪い事をしたと反省しているからである。

 故にしゅんと頭を下げているのだ。


「父様!」


 だがその時、威勢の良い一声がかかり空気が変わる。

 言葉を発したのは第一被害者のミトだった。


「此度の件、責任はミトにございます!

 ……元を辿れば、私が迂闊に挑発したことが発端。全ては私が悪いのです。」

「ミトよ……」


 割って入ったミトに対し、真意を見定めようとじっくりと見つめるベン。


「私は……自分の放った言葉に責任を取らずして、誇り高き狼の一族ではおられません。」

「んむ……ミトよ。立派な志だ! なれば、お前はどうケジメをつけると言うのだ?」


「はい……このミト。不肖の身なれど、お家の為に身体を捧げる覚悟は当にできております。

 どんな情けない毛並であれ、醜き顔であれ、お父様の決めた相手に誠心誠意尽くし捧げる所存。」

「……」


「お家の役に立てるのであれば、例え毛が無かろうが狼で無かろうが、些細なことにございます!」

「よう言うた!」


 大きく膝を打つベン。


「マコトよ! 俺の娘ミトは今日からお前の物だ!」

「……は?」

「さぁ! マコトさん! 私の身体を撫でるのが好きと仰るのであれば、お好きになさいませ! 私はもう抵抗もいたしませぬ! 逃げも隠れもしませぬ!」

「ちょ、えっ!? 待って! えっ!?」


「なんぞ不服か!? ウチのミトはなぁ狼ながら生まれつきちょっと力が弱いという欠点はある! だがな、それを補う為に自ら工夫し頭を磨いたっ! 狐に学び、それどころか、兎にも鼠にも熊にも自ら教えを請うて学んでおる! どこに出しても恥ずかしくない娘だ!

 ……それにマコトよ。お主の好きなメシについても色々作る事ができるのだぞ? これは狼の一族にしては凄く珍しいのだぞ?」


「ちょ、ちょっとマコト様! なんであからさまに気持ちが揺れてるんですか!?」


 口を噤んだマコトにフリーシアが縋り付き揺らす。


「ゆゆ、ゆ、揺れてなんて、いい、いないよ!」 

「ご飯ですか!? ご飯なのですか!? フリーシアも覚えますからぁっ!」

「おぉ、そうだ。ミトと繋がりがあるとなれば、ウチの領で取れる米を分け与える理由にもなるなぁ。うん。なにせ領主の娘だからなぁ。」


「……あの、とりあえず……一旦お預かりさせて頂くという形で。」

「マコト様ぁっ!?」


「うむっ! よかろう! それじゃあミトよ。お主らは親交でも深めておれ。」

「はい。

 ……父様はいかがなさるので?」

「ほれ、そこで訝しんだ目をしている者がおるじゃろう? その者達と話をせねばなるまいて。」


 ベンの視線の先には、テオとマイラの姿があった。

 視線を受け、マイラはようやくといった雰囲気で口を開く。


「戦う事しか興味が無いのかと思っていたけれど認識を改めるよ。もしかすると話合いができる相手なのかもしれないね。

 というわけでマコト殿。私はベン殿と今回の件について話をしてくることにする。領土間の話合いもあるけれどテオも一緒に話してくれるから安心してくれ。」


「え? あ、はい。」


 マコトの脳はご飯や急速に展開した事態に気を取られ、ほぼフリーズしている事が皆よく理解できた為、早々にマイラ、テオ、ベンとコンは場を離れてゆくのだった。


 場には『あれ? 何がどうなったんだっけ?』と言わんばかりの状態のマコトと、三つ指をついて頭を下げるミト。

 裾を握りすがるフリーシア。そして『……私も撫でてみていいのかな?』と、こっそり思うアリサが残されるのだった。 

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