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元いじめられっ子の俺、異世界から帰還する  作者: 斎藤ニコ
第三章 久遠奏

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第34話 何かが起きそうな気配を持つ少女2名

 放課後の教室。

 これから目指すべき場所は、人気のない山奥だった。


 地方都市らしく、高校の周辺は、ベッドタウンと自然とが、うまく調和している。

 足を延ばせば、霊峰と呼ばれる山もあるし、林程度なら、少しあるけば見つかる。


 修行をするならば、人目を避ける以外に選択肢はない。

 俺と委員長は、疑われないように、バラバラに目的地を目指すこととした。


 委員長が先に教室を出たのを確認してから、俺も出発することにした。


 生徒はほとんどが帰宅につくか、部活に向かっている。

 教室のかたすみで、例の異様なほどに威圧感のある白ギャルが、頬杖をつき、つまらなそうにスマホを見ていた。


 地球帰還後に、教室で面と向かって言葉を交わしたときは、俺の体が氷漬けにされたように動かなかった。

 そのとき、名前がわからなかったけれど、今は知っている。

 大又蘭花おおまた・らんかというらしい。

 ずいぶんと美人の白ギャルだけれど、反応が薄すぎるせいか、誘われても遊びにいかないせいか、友達はほぼいないようだ。

 俺と同じに見えるが、向こうは美少女なので、スタートラインが違う。俺は結果的に一人で、大又さんは選択した一人なのだろう。


 俺がぼうっと見ていると、視線を感じたのか、大又さんがこちらをにらんできた。


「うっ」


 やはり、怖い。ギャル、怖い。

 オタクにやさしいギャルなんて、いなかったんだ……と俺は、教室を飛び出したが、一つだけ気になったとすれば、大又さんは、どこか寂しげだった。


 まあいい。俺に関係することではないし、今は、委員長である。

 一足飛びに、階段をおりる。

 動体視力がいいと、こんなにも自由なのか――と、地球に帰ってきて、自分自身に感心している。


 うーん、階段を飛び降りていくの気持ちいいなぁ。学校の階段って、ダンジョンみたいで、昔を思い出す。

 いいことばかりではないけど、わくわくもあったな。


 などと、気を抜いていると、階段の途中に、人影が見えた。


「やっべ!?」


 通常の動きでは避けられない。

 俺は、身体制御スキル『二段ジャンプ(アクションゲームにおいて、空中で二段ジャンプして角度を変えるイメージだ)』を利用して、相手の手前で空中をけり、相手の頭の上を、縦に一回転しながら、飛び越えて、着地した。

 

「ふう……」


 あぶなかった。

 これでぶつかっていたら、相手を怪我させていただけではすまなかった。


 あとは、見られたことをどうにか誤魔化しておかねば。


「わ、わるかった。ちょっと階段の上からジャンプしたらどうなるかなーって思ったら、こんなことに。ぐうぜん、途中で足が階段にひっかかってよかった! 死ぬかと思った! HAHAHA」


 大根役者。なんとでもいってくれ。

 俺の言葉を受けたのは、女子生徒だった。


 というか、顔見知りだった。


「『あ! サムライだ!』」

「げっ、ララ……」


 先日、勝俣をこらしめたときに出会った、ドイツ人の少女だ。

 赤い髪を見た時点で気が付いて、逃げるべきだった。

 なにせ、彼女のは一度、通常の人間には理解できないような動きを見せてしまっている。


 俺の言葉に、ララは目を輝かせる。


「『やっぱり、話ができるっていいわね! ドイツ語喋れる人、すくなすぎっ』」


 それから、すぐに、不満顔になった。パラパラ漫画みたいにころころと表情が変わる少女だ。


「『それより、げっ! ってなによ!? あのあと、あたし、がんばって、日本語がわからない外人のフリして、屋上まで先生呼んだんだからねっ!?』」

 

 いや、日本語わからないの外人ってのは、本当だろ……。

 しかし、助けてもらったのは事実なので、素直に頭を下げておいた。


「そうだった。本当にありがとう。あのときは助かったよ」


 すると、ララは頬を少し赤らめて、指で頬をかるくかいた。

 恥ずかしがっているらしい。


「『ううん、あたしも助けてもらったから。お互いさまでしょ?』」

「え? 助けたって……なにから」


 あの時は、早見くんを逃がして、あとはララに失望されて、そして勝俣を倒し、中野が失神した。それだけだよな……?


 ララは焦るように手をふった。


「『ちがう、ちがう。あたしが、勝手に助けてもらったってこと。この日本にも、まだサムライがいるんだ! って知って、帰国したい気持ちが消えたから!』」

「あ、なるほどな……まあ、それはよかったよ。じゃあ、俺ちょっと用事あるんで……」

「『そうね。あたしも用事があるから、行くわ』」


 好意的な発言は、助かる。

 余計な話が始まる前に、退散しよう。


 立ち去ろうとする俺の背中に、ララの声がかかった。


「『それにしても、あなたって、サムライじゃなくて、もしかして、ニンジャなの?』」


 俺は、タイムリーな話題に、ぴたりと立ち止まり、ゆっくりと振り返った。

 それから、強く、首を振る。


「ぜったいに、ちがう。俺は、忍者ではない」

「『そんなに怖い顔をしなくてもいいじゃない。ブシドーが泣くわよ』」

「……じゃあな、ララ。また、今度、ゆっくり話そう」

「『ええ、さよなら、サムライ』」


 そうして俺たちは本当に別れた。


 さあ、今から、本当の忍者の元へ――くノ一委員長と合流しなければならない。

特定キャラの章(話)のときに、別の章(話)のキャラが顔を出すのが好き系です。


応援ありがとうございます。引き続きよろしくお願いいたします。はげみになります。

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