48-1 カノンとの一日
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アイドルとの共同生活。
それは、ただの男子高校生である俺にとって、明らかな非日常。
ただ、人間とは不思議なもので、そんな日常にもいつの間にか慣れてしまった。
ツインズとの一件が終わったあと、俺たちはいつも通りの日常を送っていた。
ミルスタのミーチューブ活動はまだ続いており、すぐに登録者数は二百万人を超え、依然としてチャンネル登録者数を増やし続けている。収益化もあっさり通り、ウハウハだとカノンが語っていた。現金なやつだと思いつつ、実際の収益を聞いたら、確かに笑いたくなるのも納得だった。
とは言え、そこで浮足立たないのがあいつらのすごいところ。
ミーチューブを続けつつ、相変わらずトップアイドルとして、芸能界でも大活躍している。常にストイックなあいつらを支えるために、俺も微力ながら手を貸している。
だからこれも、ミルスタの活躍のためと、割り切ることにした。
「……はぁ」
俺はげんなりとした顔で、駅へ向かって歩いていた。
十二月の頭。すっかり冷え切った風が、頬を刺す。水仕事で荒れ気味の手をこすりながら、俺は目的地へ歩を進めた。
「……あれ?」
待ち合わせ場所につくと、カノンらしき人影が目に入った。
ファーのついたショートコートに、ミニスカート。相変わらずこだわりを感じるファッションだ。
そう、今日はカノンが俺を独占する日。そうなった経緯は省くが、俺は今日、ご褒美としてカノンに尽くすのだ。
それの何が憂鬱なのって?
想像してみてくれ。平々凡々な自分の隣に、誰もが憧れるスーパーアイドルがいる状態を。外にいる間、他の人に気づかれないよう、常に気を遣いながら過ごさなければならない。それがどれだけ精神的に疲れるか……。
はっきりさせておくが、俺はカノンと一緒にいることが嫌なわけじゃない。むしろ俺と一日過ごしたいと言ってもらえて、嬉しく思っている。しかし、この精神的な疲労は別の話。玲やミアとのデートで、すでに俺はずいぶんと懲りているのだ。
――――なんか、クズ野郎みたいだな、俺。
色々事情があったとはいえ、これでは女をとっかえひっかえしているようにしか見えない。ああ、気づかなければよかった……そう思いながら、俺はカノンのもとへ向かう。
「あ、りんたろー!」
こちらに気づいたカノンが、手を振ってきた。
まだ待ち合わせの時間まで十分以上あるのに、先を越されているとは思ってもみなかった。というか、同じ家に住んでいるのに、どうして俺たちはわざわざ待ち合わせしているのだろうか。カノン曰く、そのほうがリスクが少ないからとのことだが……。
「ずいぶん早いな。まだ時間じゃないのに」
「あんただって人のこと言えないじゃない」
カノンは少し照れながら、俺の脇腹を肘で突いてきた。
「ちょっとテンション上がり過ぎて、早く来すぎたのよ。あんたとこうして一日遊ぶなんて、初めてでしょ?」
そう言いながら、カノンは無邪気に笑ってみせた。
そのあまりの可愛らしさに、周囲の視線が集まっている気配を感じる。
変装用のキャスケットとサングラスのおかげで、周りにカノンだとバレていないはずなのに、しぐさと表情だけで目立っている。そもそも、まとっているオーラがそこら辺の一般人とは桁違いなのだ。油断すれば、すぐに人目を惹いてしまう。
「……とりあえずここを離れようぜ。結構目立っちまってるぞ、お前」
「あ、それはまずいわね」
「ほら、とりあえずこっちだ」
止まっていると目立ってしまうから、しばらくは歩きながら話したほうがよさそうだ。俺はカノンの手を取り、駅前を離れる。
「つーか、何するか全然聞いてないんだけど……って、どうした?」
「へ? あ、う、なんでもないわよ!」
顔を赤くしたカノンは、恥ずかしそうに俺から目を逸らした。
もしや、俺と手を繋いでいるからか?
「悪い悪い、確かに恥ずかしいよな」
そう言いながら、俺は握っていた手を放そうとする。
すると、今度はカノンのほうから手を握り返してきた。
「ま、待ちなさいよ! 別に、このままだっていいじゃない……はぐれずに済むし」「え、けど……」
「あたしがいいって言ったらいいの! 今日はあたしが主導権を握ってるんだから!」
「……まあ、お前がそれでいいなら」
手を繋いだまま、俺たちは横並びで歩く。
「……」
繋いだ手から、カノンの温もりが伝わってくる。
まずい、ちょっと意識してしまった。ただでさえ女子と手を繋いだ経験なんて数えるほどしかないのに、それが国民的アイドルなんて相手が悪すぎる。
しかし、ドギマギしているのがバレたら、絶対からかってくるだろう。俺のプライドを守るためにも、余裕があるところを見せなければならない。
「そ、それで、このあとの予定は決めてるのか?」
「えっと……まずは服でも見ようかしら」
「なるほど、何も決めてないのね」
「そ、そんなわけないでしょ⁉ 今日はあたしがとことんエスコートするんだから!」
「はいはい……お手柔らかに」
そうして俺たちは、都会の街へと繰り出した。
ついでに新作投稿しました!
【ゲーム世界のモブ兵士に転生した俺は、真の実力を隠したい~気づけば主要キャラ達に囲まれているんですが、俺ってただのモブですよね?~】
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