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金使いと女癖が悪すぎて追放された男  作者: ナカジマ
第1章 (借金が)10億の男
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第34話 厳しい鍛錬

 僅か6歳にして、確かな殺意を見せたズークにマリクは幾つかの約束をした。鍛錬は必ず自分かリアンと一緒にやる事。

 勝手に1人で出掛けない事。危険だと注意した事はやらない等。これらを守るのであれば、Aランク冒険者のマリクとリアンが強くなる為に協力する。

 そう言ってズークが無茶な鍛錬をしない様にし、2人の監視下で冒険者教育が始まった。

 先ずは武器の扱いと魔法の基本から始まり、それぞれの適正を見る所からスタート。

 魔力と魔法の適正を調べる魔道具は高価だが、かなり稼いで来たマリクとリアンは所持していた。


「ズーク、ここに血を垂らしてくれ」


「うん」


「…………あら凄いじゃない! 使えない属性が無いわ。魔力も多めだし」


 Aランクまで登り詰めたリアンは、下手な宮廷魔導士以上の実力と知識を持つ。

 その領域に至った人間から見ても、ズークは魔法の適正が高かった。

 ドラゴン等の長命種にしか扱えない属性を除き、人類が扱う基本属性の全てに適正がある。


 炎・水・風・土・聖・闇と6つの基本属性と、特殊な魔法が集まっている時属性にも若干の適正が見られた。

 時属性で有名なモノは鑑定魔法であるが、そちらはズークに使えなかった。

 時属性は複雑で、適正があるからと言っても全ての魔法が使えるとは限らない。鑑定魔法だけが使える様な人間もいる。


「魔法の方はリアンの方針に任せる。ズーク、一番自分に合う武器を選ぼうか」


「分かった」


「先ずは剣からだ」


 マリクが近くで切って来た木材を使って、ズークの為に様々な鍛錬用の武器を用意した。

 木剣はもちろん、槍や斧だけでなく弓や短剣や盾等選び放題だ。順番に試していき、最終的に落ち着いたのは剣のみを持つスタイルだった。

 盾も持って戦う事は、まだ子供のズークには難しかった。次点で候補に挙がったのは槍だった。

 まだ体が小さいズークには、根本的にリーチが足りない。欠点を補う手段として、槍は最適な武器だった。

 それからのズークは、剣の指導を中心に体術と槍術も教わっていく。


「無理な姿勢で剣を振るな! そういうのはちゃんと基礎が出来てからだ!」


「くっ!」


「こういう時は先ず体勢を一番に立て直せ!」


 Aランク冒険者であり、マルチに武器を使い分ける戦士であったマリク。彼の指導は厳しいもので、本来6歳の少年に施す内容では無かった。

 それだけマリクは、ズークの本気度を理解していたからだ。半端な鍛錬を施して、戦場で死なせてしまう方が酷というもの。

 どんなに追い込まれても、決して生を諦めない様に。その理念を元に、体力作りも含めて過酷な鍛錬が繰り返された。


 ズークに根付いた復讐心は強く、殆ど大人向けと変わらない指導でも投げ出さない。諦めずに食らいついて離れない。

 普通なら1日で弱音を吐く、そのレベルで設定した難易度だったが、ちゃんとズークはついて行った。

 当然剣術と基礎だけでなく、言うまでも無く魔法の方も指導は厳しい。


「今の時代に詠唱魔法を使う人は少ないわ。先ずは無詠唱をマスターしてもらいます」


「それってどう違うの?」


「順番に説明していくから、良く聞いて覚えてね」


 かつて魔法には詠唱が必要だった。長い呪文を唱え終わるまで、魔法は発動出来なかった。

 しかしそれはこれまでの長い歴史と時代の変化と共に、少しずつ変わって行ったからこそ今がある。

 先ず生まれたのは闇詠唱と呼ばれる技術で、詠唱を脳内で行い何を使うつもりか相手に悟らせない効果があった。

 発動タイミングも隠せるので、主に人対人の抗争や戦争などで使用された。そして勇者が召喚された際に、無詠唱という技術が初めて登場した。

 詠唱に込められた意味を理解し、何がどうなるかの事象を把握しておく事。それによって詠唱を省略する事が可能になった。


「例えば炎属性の下位魔法、フレイムショットは炎の塊が飛んで行くという意味の詠唱よ」


「こんなに長いの? 覚えられないよ」


「少しずつで構わないから、確実に覚えて行きましょう。先ずは詠唱魔法で良いから」


 リアンによる徹底した指導と、魔力を増やす訓練も合わせて行っていく。

 朝はマリクで午後はリアンだったり、1日マリクなら翌日はリアンだったり。様々な形でズークの訓練は続いて行った。

 途中でリアンがマリクの子供を妊娠している事が発覚し、リアンの指導は少し停滞してしまう。

 しかし出産後は再び復帰して、子育てもしながらリアンはズークに魔法を教えた。

 2年程経った頃、ズークは魔法剣士が一番向いていると2人は断定。そこからは魔法剣士ズークとしての指導へと切り替わる。


「さあ、ズーク。教えた様にやってみてちょうだい」


「分かった。……ブレイズエッジ」


「よし、成功した様だな」


 中位に位置する魔法剣の発動に成功したズーク。下位の魔法剣はあくまで刀身に纏わせる程度で、出来る事が少ない。

 しかし中位まで来ると、纏わせた属性の刃を飛ばす事も可能となるのが中位魔法剣だ。

 発動体の付いた魔法剣士用の剣であれば、魔力が続く限り自由に斬撃が飛ばせる。

 用意された5メートル程先にある巻き藁に向かって、ズークが燃え盛るショートソードを振り抜く。

 高速で飛翔した炎の刃が、巻き藁を燃やしながら両断した。こうしてズークは、魔法剣士としての道を歩み始めた。

次回で真面目な話は終了です。一応コイツが主人公なんで、それなりのバックボーンとかね、ないとねって。

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