第11話 持つべきものは友人
ケイバ場で全財産を失ったズークは、またしても中古品を持って討伐に向かう。
最早これではモンスターの骨でも雑に加工して武器とした方がマシだ。
だがズークは入手した全ての素材をギルドに売り渡さねばならず、その様な余裕はない。
こうなったのもズーク本人が原因であり、自業自得なので受け入れるしかない。
Sランク冒険者にも関わらず、Fランク冒険者と変わらない装備なのは悲しい現実だ。
ファウンズ支部長を怒らせなければ、中位レベルの魔法剣までなら耐えられる剣を手元に残せたかも知れない。
そんな事を今更言った所で何の解決にもならないが。
「はぁ……ツイてねぇよなぁ」
「あら? ズークよね? どうしたのその格好?」
ズークに声を掛けて来たのは、立派な白金の鎧を身に纏い大剣を背負った身長の高い女性だ。
長く鮮やか金髪を、頭の後ろで括ったポニーテールが特徴的だ。意思の強そうなキリッとした形の良い双眸に、鮮やかな蒼い瞳。
薄いピンク色の唇と、シャープな輪郭。良く鍛えられた肉体は美しい女性的な湾曲を見せており、道行く男性達の視線を集めていた。
「おっ! リーシュじゃないか! 帰って来たのか」
彼女はフリーのAランク冒険者、ローン王国出身の有名な女性剣士だ。
リーシュの象徴である美しい金髪は、戦場でも常に輝き自らの血で染まる事がない。
身の丈と変わらない巨大な剣と合わせて、金色の剣聖と呼ばれている。魔法剣を使うズークとは違い、純粋な剣技のみで戦う戦闘スタイルだ。
特定のパーティには所属せず、基本的にはソロである。何故そんな活動方針かと言えば、彼女は非常にモテるからだ。
美しくて社交的な独身の26歳、これで男性冒険者達が狙わない筈がない。
結果パーティーが揉める要因となるので、余計なトラブルを回避する為にソロ。
普段は顔馴染みで色恋に発展しない相手とだけ組む様にしていた。
「ええ、良い遠征になったわね。それで、ズークはどうしたのよそれ? 修行中?」
「あ~~いやまぁ、色々とあってな」
「と言うと?」
高位の冒険者である程に、高品質な装備が手に入るのは当然だ。であるが故に、装備の性能に溺れてしまう者が出る。
自身の実力ではなく、装備のお陰に過ぎない成果。それが重なると、自分の実力を見失ってしまう。
もちろん全員がそうならない様に気を付けている。自惚れない様に自制を行う。それでも過ちを犯してしまうのが、人間と言う生き物だ。
だからこそ時折わざと品質の低い装備や木剣等を使用し、自らを鍛えるのはそう珍しくない。
特にダンジョンで手に入る、特殊な効果を持つ装備を使う者ほどそうする。もちろん装備性能に甘える者も居るのが実態だが。
そんな現実があるので、今のズークは自らを見つめ直す修行中にも見えるのだ。この事を知らないとしたら、ド田舎の村人ぐらいだ。
そのお陰でまだ他の冒険者達には、多額の借金を抱えた事実はバレていない。
「……誰にも言うなよ?」
「ええ、構わないけど」
「実はこの間さ……」
「…………はぁぁぁぁ!?」
10億もの借金を抱えたズークの現状を聞いたリーシュは、驚愕と呆れの入り混じった大声を上げた。
結構な声量だった為に注目を集めてしまい、慌ててズークはリーシュを路地裏の方へ連れて行く。
誰も周りに居ないのを確認したズークは、軽く事情を説明し始める。
まあ事情とは言っても高級娼館に入り浸って豪遊したり、ギャンブルに溶かしたりと碌な理由ではないのだが。
あまりの惨状にリーシュは額に掌を当て、大きな溜息をついた。
彼女とズークはそれなりの付き合いであり、ズークの欠点を良く知っている女性の1人である。
冒険者ギルドキャッシュ支部の受付嬢、カレンとほぼ変わらない認識を持っていた。
「だから言ったじゃないのよ、アイツの真似は辞めなさいと」
「いやでもさ、娼婦達にも生活があるし」
「ズークは子供が居るでしょう。アイツとは立場が違うわ」
どうやらリーシュはズークの行動原理、その根底となった人物を知っているらしい。
ズークの元パーティメンバーも、変わってしまったと発言していた。ズークに訪れた変化の理由が何かしらある様子だ。
まあそれを知ったからと言って、どうなるとも思えないが。既に人としてだいぶアウトである事実が覆るとは到底思えない。
ともあれリーシュもまたカレンと同じく、ズークを全肯定するタイプでは無いらしい。
まともな女性が存在する、その事実がこれ程までに素晴らしいと思える事があるだろうか? いやない。ズークはもっと怒られて然るべきだろう。
「どうするつもりなのよ?」
「何とかするしかないな」
「何とかって、アテはあるの?」
もっと言ってやって下さいこの残念な男に。地中に埋まるぐらい凹ませてやって丁度いいぐらいである。
だが悲しいかな、この男は省みない男であり反省はしていない。確かにズークが豪遊する事で、懐が潤う者も居る。
金は天下の回り物だと言えば確かにそうで、使われないより使われた方が良い。
だが何事にも限度があり、ズークの場合は無計画が過ぎている。一生返済出来ない額ではないとしても、暫く掛かるのは間違いない。
結局その間は娼婦達の収入は以前より減ってしまうし、カジノや商人なども同様だ。
何事もバランス良くやる必要があるのだが、ズークはそこの計算が出来ない。
「何とかは、何とかだ」
「はぁ、どうせそんな事だと思ったわ……仕方ない、少しの間なら付き合ってあげるわよ」
「つまりそれは、今晩OKだと?」
「バカね! そう言う意味じゃないわよ! ズークとは寝ません」
何ともお優しい事に、有名なAランク冒険者が手伝ってくれる事になった。
かつてズークに助けられた事が何度もあるから、そんな理由で同行してくれる様だ。
でもそれって貴女が女性だから助けただけだと思いますよ、このズーク。
本作のメインヒロイン枠その2、金髪ポニテなカッコ良くて優しいお姉さん剣士。クッ殺しても良し、人質を盾に取られて野蛮な男達にグヘヘされても良し。
もしくはまだ何も知らない純朴なショタに、大人の世界を教えてくれるお姉さん系でも良し。
駆け出しFランク冒険者になったボク君は、周囲の人間からはお前が冒険者になれる筈がないと馬鹿にされていた。それでもどうにかギリギリ冒険者になる事が出来た。薬草集めなどの低ランク向けの依頼を細々とこなす毎日。戦闘経験などまともに無く、最弱のスライムが相手でも苦戦してしまう。そんな有様だから誰もパーティに入れてくれず1人孤独に努力を続ける。そんなある日、冒険者ギルドに入ったら嫌な奴らがニヤニヤと笑いながらボク君を見ている。自分よりも弱い冒険者を笑い者にする事で有名な、札付きのDランクパーティの連中だ。不運にもターゲットにされてしまったボク君は、馬鹿にされて笑い者にされる。遂には暴力まで振るわれそうになった時、1人の女性剣士が止めに入る。強いと有名だった彼女を見て、ゴロツキどもは逃げていく。助けくれたその女性は、ボク君が小さい時に助けてくれた憧れのお姉さんだった。そんな有名で綺麗でカッコ良くて、美人なお姉さんはリーシュさんというらしい。何故か分からないけど、ボク君に教育を施してくれる事になった。新人教育にちょうど良いダンジョンに出掛けたボク君とお姉さん。とあるエッチなトラブルから、ボク君の血や体液には女性を強くする効果があると判明する。それが分かるなりお姉さんの目が狩人の目に変わった。ダンジョンの隅で美人な憧れのお姉さんと、なんだかエッチな雰囲気にな(手記はここで途切れている)




