表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/25

6

目を開けると見慣れた天井があった。

私は自宅のベットに寝転がっていた。


今までのことは夢だったのかしら?

とってもリアルだった。

頭がぼーとするし、心なしか身体がふわふわする。

周りを見渡すと部屋が綺麗に整頓されていた。

出かける時に掃除した覚えはないんだけど。


玄関の扉が閉まる音がする。

窓から外を覗くと家族を乗せた車が出発しようとしていた。

置いていかれちゃう、早く行かなくちゃと思い慌てて外へ飛び出す。

後部座席に乗り込む。

弟と妹は学生服、両親は黒いスーツをきている。

なになに?お出かけすんの?と弟に話かけるが反応がない。

弟の顔はやけに真っ青で硬く唇をむすんでいる。

妹とは俯きタオルで顔を覆っている。

どうしちゃったの、みんな?


まるで誰か死んじゃったみたいじゃん。


到着したのは葬祭場だった。

無言で車を降りてホールに入る家族について行く。


祭壇の上には着物を着て着飾った私の写真がかけられている。

やめてよ、それ成人式の写真!恥ずかしい。

つい声をあげるが誰も振り返らない。

スンスンと人がすすり泣く声だけがホールに響いている。

冗談きついよ、みんな!

最前列まで走り抜け棺を覗き込んだ。


私だ。

白く綺麗に化粧された私が横たわっていた。


《 瑠璃ちゃん、どうしてまだ若いのに》

《直ぐに引き上げられたけど、無理だったって》

《綺麗なままね。目を覚ましそうなくらい》


周囲の潜めた話し声がボンヤリと聞こえる。

なんだ、やっぱり私死んでたんだ。


戻らないと。

私の身体に一つにならないと。

引き寄せられるように、棺に手をかけ片足を入れる。


「ニャーン」

部屋の隅に白い猫がいた。

咎める様な目で私を見つめる。

どうして私と一つになっちゃいけないの?


猫はついて来いと言うように尻尾を振るう。

猫の威圧感に耐えられず、しぶしぶ片足を降ろし猫の後を追いかける。

白い通路をひたすら進んだ。

ある時から星が輝く夜が現れ、木々が迫ってくる。


私は森の中を歩いていた。

川の向こう岸に人影が見えた。ルーベンスだ。

ルーベンスは突然水中に飛び込む。

水しぶきが上がり、浮上した時には何かを抱えていた。

その何かを横たえ、彼は激しく息をしている。

これは助けられた夜?

横たわるものを凝視すると確かに私だった。

ただ、薄ぼんやりしていて身体が透けている。

どういうこと?

私の呼吸は弱く心臓の音も小さい。


ルーベンスは立ち上がり自らの皮膚を傷つける。

そして自分自身に何かの文字を書いた。

文字から光りが溢れ出し私の身体へ向かう。

やがて光は消え横たわる私は目を覚ます。


背後にいた白猫に尋ねた。

「これはどういうことですか?アルマさん・・・」

白猫は答える。

「見たままのことよ。あの子はあなたを助けるために扉を開けた。くぐり抜けたのは魂だけ。そしてあの子は自分を半分にしてあなたに実体を与えた。あなたの戻る扉は消滅した。なぜなら元の身体は朽ちてしまったから」


「そんな・・・」


「もしあなたがこのまま生きることを放棄するなら、あの子に半分を返して頂戴」

白猫は真っ直ぐ私をみて言う。



「私は・・・私は・・生きていたいです」

「そう。正直ね」

といい白猫はカラカラと笑った。

「でもルーベンスの半分を奪ってしまったんなんて」

「いいのよ、それは。あなたを勝手にこちらの世界に引き込んだあの子の責任。本人もわかっているはずだわ」


周りの景色が溶け始め、薄暗い水瓶のある部屋に戻っていた。


「返せないなら、ルーベンスに恥ずかしくないように。この世界でちゃんと生きてみせます」

そうアルマに向って言うと彼女は優しく微笑み、あなたに加護がありますようにとキスをくれた。


















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ