表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/25

21

黒いもやが開けて視界が開ける。

自然と泣いていたのだろう、ルシは私の頬の涙を舐めとってくれた。


そっか、サバラくんすごく大変だったんんだ。確かに同情はする。

でもそれで復讐を企てられても私が困る。

だって私が異世界に来て、助られてばかりだった。

ルーベンスにグレゴリ、アルマさんにアリアさん。職場のグリフにテイラー。

みんな私に優しくしてくれた。


それは私の運がたまたま良くて、最初に見つけてくれたルーベンスが力を分けてくれて実体を得られたから、この世界で生きていけたのだ。

もし私もサバラくんのように酷い扱いを受けていたら、この世界を恨んでいたかもしれない。


彼を助ける方法はないのだろうか。

ふと、元の世界の彼の身体のことが気になった。

病院にいて気づいたらこちらに来ていたみたいだけど、あちらの身体はまだ生きているにだろうか。

もし生きているなら、ルーベンスやアルマさんに助けてもらえるかもしれない。

そう思いつくとじっとなんてしていられれなかった。


「ルシお願い。サバラくんを助けられるかもしれない!!鎖を外して!!」

私の言葉に答えるように躊躇なくルシは鎖を噛み切った。

鎖はいとも簡単に壊れ地面に落ちる。

ルシは溶けるように消え、またすぐに何かを持って現れた。


「ありがとう、取ってきてくれたのね」

ルシが咥えている鞄と首飾りを受け取り、その黒く大きな身体を抱きしめた。


「信じてくれてありがとう。必ず戻って来るから」

ルシは鼻を摺り寄せ小さく鳴いた。



洞窟から出るとそこは夜の森だった。

何処へいけば帰れるかもわからない。

とりあえず、小川に沿って進むことに決めた。

幸い月も満月に近く足元を照らしてくれていた。


数キロ歩いた所で民家の明かりが遠くに見えた。

少し安心して歩みを早める。


背後から土や草を踏みしめる音がして振り返る。

ルシに乗ったサバラがいた。

サバラはルシから降りこちらに近づいてくる。

目の下はクマが縁取り顔は青白く見えた。


「戻ってよ、お姉さん。あそこにいれば安全だから。魔鉱石でできているんだ。爆発が起きてもあそこだけは傷つかない」


「今は無理。人を呼びにいくから」

「それは困るね。じゃあ、やっぱり殺さないとダメなのか・・・ルシ、お前が逃がしたんだお前が責任をとれ」


言葉を向けられたルシは嫌だと言うように後退した。


「やれよ!!ルシ!!」


張り上げたサバラの声にルシはビクリとする。


「ルシお願い。しばらくじっとしていて」

私はできるだけ穏やかな声でルシに伝えた。

ルシはゆっくりとした動作で伏せをした。


「ありがとう」

それを合図にサバラの足に飛びかかった。

サバラの身体は驚くほど軽く簡単に倒れた。

そのまま馬乗りになり、顎を押さえつける。

サバラは手を伸ばし抵抗するが全く意味をなさない。


弟よりうんと弱いひょっとしたら、妹よりも弱いのかも。

こんな状況で家族の事を思い出している自分が心底可笑しくなった。


「なに嗤っているんだよ!!」

サバラは顔を真っ赤にして睨みつけていた。


「乱暴してごめんね。こうしたのは一つは質問に答えて欲しかったから。もう一つは、君のルシに対する対応に腹が立ったから」


「・・・な・にを!!」

「君が可哀想なのはわかったけど、助けてくれたルシに酷くない?ルシは今も君を大事に思っていてくれてるのに、君はルシを道具のように使うよね」

つい顎を持つ手が強まり頬の肉を寄せあげる。


「じゃあ、質問ね。元の世界の君の身体は生きているいるの?」

答えようとしないサバラの顎を締め上げた。

「・・うぅ・・・いき・・ている」

「それはどうしてわかったの?」

「・・ゔぅぅ・・・ゆめの・・なかで・なんどもみ・・・た」


「そうよかった。君、元の世界に帰れるよ、きっと」

私の言葉にサバラの目は見開かれた。



「今まで、辛かったね。肉体が朽ちてさいなければ戻れると教えてくれた人がいたの。だから、大丈夫。それとも君は戻れるとしても、この世界の人達に復讐したい?」

微笑みかける私にサバラは固まり唇を震わせていた。

そして堪えるように嗚咽をもらす。



私は立ち上がりゆっくりとサバラから離れた。

「私は行くけど。ルシ、サバラくんのことお願いね」

ルシは当然だと言うようにサバラに駆け寄り頬を舐めている。



急いでルーベンスの所へ行かないと。

そう思ったとき、首飾りの紐がプツリと千切れ球体の玉が地面に落ち叩き割れた。

足元を見ると足首まで紐が解けるように皮膚が離れていた。

下からは半透明の足が覗いている。


訳もなく胸騒ぎがした。

ルーベンスにきっとなにかあったんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ