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柔らかな朝日と鳥の鳴き声で目覚める。


まだ寝かせてよ、お母さんと言って薄目を開けた。

飛び込んでくるのは綺麗に整頓された部屋と質素な調度品。


はて、誰の家だろうと考えていると昨日の記憶が戻ってくる。


川で溺れ助けられたこと、助けてくれた人は猫の姿で呪いだと言っていた。

そしてどうやら私は知らない世界に迷い込んだということらしい。


私は思考がついていかないので考える事をやめた。

とりあえずお腹が空いた。

そう思いふらふらと居間に向かう。


命の恩人のルーベンスさんの姿はなく、テーブルの上にはパンと温かいスープが残されていた。

眠る前にそう言えば言っていた。


日没まで仕事に出掛けること、外にはでてもいいが森は危険だから遠くにはいかないこと。

帰宅後にこの世界についてお話しましょうと。


はむはむとご飯を食べ終える。

流しで食器を洗い、顔を洗ってないことに気づき洗い流す。


こんな状況なのにいつも通りに過ごしている自分にびっくりしてしまいそうだ。


重い木の扉を開けると目の前には朝日を浴びた森が広がっている。

野生の花が咲き乱れ木の根元にはリスが顔を出していた。

まぁ、ここって天国?と不吉のことを考えそうになる。


少し歩くと湖が見えた。水辺には大きな鳥が佇んでいる。

大きな翼は青くツヤツヤして輝いている。

「綺麗な羽根。幸せの青い鳥見つけちゃった」

一人ぽつりと呟く。

すると、青い鳥はグリンと首を回しつぶらな瞳と目が合う。


「褒めないでくれよ、照れるじゃないかー。君だろ?森の番人が拾った娘って。森じゅうの噂になってるやつ。あ、俺はグレゴリ。気軽に呼んでくれよなっ」

そう言って羽根をバタつかせる。


「よろしくね、グレゴリ。あなた喋れるのね」

「なんだよー、もっと驚いてくれよ。街の奴らなら失禁ものだぜ」

と至極がっかりしたように言う。


「もう最近驚くことが多すぎて感覚が麻痺してるの。ごめんね。」

「いいよー、謝らないでくれよ。君の名前教えてくれよ」

「瑠璃子っていう名前よ」

「ルリ、うん覚えた。変わった名前だな」

この陽気な青い鳥と話しているが思い出した。

そういえば、ルーベンスには名前すら話していない。

それなのに介抱してくれて泊めてくれて、朝ご飯までなんていい人なんだろう。

いやはたしてそんないい人がいるものだろうか。

そもそも人かどうかもよくわからない。

猫は肉食でもあるし、後々の食料として保護されたのかもしれない。

ここまでやっと考えて自分の居る危うさに気付く。


「ねぇ、グレゴリ。ルーベンスを知ってる?」

青い鳥は目を激しく左右に動かしてから答える。

「森の番人の事だろ。あいついい奴。でも怒らせるとめっちゃ怖い。そうでなくても人には怖がられてるしな」

「どうして怖がられているの?」

「だってあの顔見ろよ。最初は目が合うだけてチビっちゃいそうだったぜ。」

「そう」

ルーベンスの猫の容姿は愛らしく感じたが、ここの世界ではそうは思われないのだろうか。

「ねぇ、ルーベンスって肉食?」

「んー?そりゃあ食べるだろうが、あまり好きなようにみえないなぁ」


では非常食という考えは違うと思っていいのだろうか。

「それとも艶っぽい話かい?本人に直接聞くのが一番じゃないか」

鳥があまりに下衆な顔でこちらを見るので、つい羽根を数本毟ってしまった。

「酷いじゃないか、やめてくれよぅ」

そう言って飛び立って言った。


昼過ぎにグレゴリは木の実を携えてやってきて、からかってごめんと言われた。

こちらも毟ってすまないと伝えると気にすんな。これからは友達だと言われた。


日没後ルーベンスが帰ってきて、私は美味しくありません食べないで下さいと伝えるととだだただ失笑された。





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