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月が陰る闇の中でも銀色の髪はキラキラと輝いて見えた。

ああ、またこの人に助けてもらったんだ。


彼は座りこんだままの私をを立たせ、無言で服に付いた砂埃を払ってくれた。

至近距離に顔が近づいて、思わず顔を凝視した。

表情は固く青い目は激しい感情が揺らめいている。

怒ってる。すごく。きっと私が怒らせてしまったんだ。


「ごめんなさい」

その目を見ていられなくて俯く。

彼はわずかに身じろぎし、静かな声で言った。

「謝らないでください。急に怒鳴ってすいませんでした」

見上げると彼の方が不安気な顔をしていた。




再度、爆発音がする。目を向けると城の中央部で炎が燃えていた。

遠くで剣撃と人の叫ぶ音が聞こえた。

誰かが戦って傷ついている。その事実だけで、身体が震えだした。


怖い。鞄なんて取りに戻るんじゃなかった。

何か起こるってわかっていたのに、のこのこ戻って本当に私は馬鹿だ。

また、この人に迷惑をかけている。

恐怖と情けなさから涙が溢れ出てくる。


「泣かないでください、大丈夫です」

頭上から優しい声がした。


「ここにいては危険です。私は一緒に行けませんが城の外へ行けますね?」

頷くと肩に手を添えられ、彼の指先は正面を指した。

「このまま真直ぐ行けば城外へ抜けれます。振り返らず走ってください」


これ以上迷惑をかけてはいけない。しっかりしなきゃ。

深く息を吐き呼吸を整え彼を見返した。

「助けていただいてありがとうございました」

深くお辞儀をして走り出した。

私はだだ正面だけを向いて駆ける。

まだ、背後で爆発は続いてる。

気持ちが急いて絡みそうな足を必死で前へ前へと動かす。


彼に聞きたいことがあった。

あなたは誰なんですか、と。

無事にここを出てまた会えたら聞こう。

なぜあなたの声は私の知っている人と同じなんですか、と。



庭園を抜けて城の高い塀が見えた。

これに沿って行けば必ず外へ抜けるはず。


ほんの少しの安堵が油断を生んだのかもしれない。

茂みの中からゆっくりと少年が現れた。

少年の身体はやけに細くて、枯れ木の様だ。

一人取り残されてしまったのだろうか。


「ここにいたら危ない、一緒に行こう」


手を掴み歩き出そうとする。だけど、少年の身体はピクリとも動かない。

そして、至極楽しそうな笑顔を浮かべた。


「お姉さんのこと探してたんだ」

その不気味な笑顔に後ずさる。

「大丈夫だよ。簡単な質問に答えるだけだから」

少年は一歩ずつゆっくり近づいてくる。


「お姉さんはこの世界の人?それともあっちから来た人」


「え・・・・」

動揺した私を見て、少年は満足そうな顔をする。


「おいで、ルシこの人だよ」

少年が声を発すると暗闇の中から狗が溶け出すように現れた。


これは良くない。今すぐ逃げないと。


足を動かそうとするが、黒いモヤがまとわりつきあっという間に身体の自由を奪われた。


「駄目だよ、抵抗しちゃ。痛くしなきゃならなくなる」


突如、身体中に電撃がはしった。

頭が痺れたようになり、目の前が真っ暗になった。

それでも必死でもがく。

そのうち呼吸が苦しくなって、私の意識は深い深い暗闇の底へ落ちていった。












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