第6話 松本連隊の初戦
長野県松本市にある第13普通科連隊を中核とする第13戦闘団は、長野県北部の小布施町に部隊を構えて、敵を迎え撃つことにした。
敵正体不明物体はすでに長野県では飯山市、中野市、戸隠高原、妙高高原などに進出し、主要幹線道路に沿って南下していた。
敵の目的はわからない。しかし、国民を襲い、財産を奪っていることは、もはや日本の敵であった。
第13戦闘団は敵正体不明物体集団と昼頃接敵した。
『クスノキ01より全体、テ―ッ!』
前方に銀色の盾らしきものをもっている銀色の甲殻類を先頭に、大群が迫っている。
野戦特科―――砲兵部隊は住民が見えないことを確認し、砲撃を行った。
爆発がいくつか起こり。爆風が普通科隊員――歩兵たちの塹壕に飛び込む。
その暴風に隊員たちは塹壕に身を潜め、砲撃が一旦止む、
普通科隊員たちは20式小銃を敵に構えた。
会計科から普通科の小隊を任された久間二尉を小銃を構え、発砲する。
隊列が乱れた敵が突進してくる。丸腰の甲殻類は小銃弾を叩きこむだけで動かなくなる。
盾をもった物体やドリルをもった物体をは小銃弾を跳ね返す。
「対戦車攻撃! 前方300! 攻撃後全力で後方の陣地に後退し、そこで戦闘を続ける!」
二人の隊員は84mm無反動砲を構えた。
構えた隊員の一人が広報を見る。後方炎で他の隊員が火傷するのを防ぐためだ。
「テーッ!」
隊員の一人が引き金を引いて。砲弾を発射する。
前方にいた、盾のついた物体に命中。盾を吹き飛ばし、物体を炎上させる。
「小隊、後退!!」
30名いた久間の小隊も半数以下に減り、12名に落ち込んでいた。
後方の陣地に飛び込んだ久間は思わず悲鳴を上げた。
仲間の遺体があったからである。敵の遠距離攻撃をうけたのだろう。
部下の一等陸士も飛び込んで悲鳴を上げる。
それから不安げに檜山の顔を見た。
久間はぎこちない笑みを浮かべた。
部下の一士を和ませるためだったか、うまくいったかは定かではない。
一士にも同じような笑みを浮かべた。
「……大分消耗しましたね」
一士が言った。
「そうだな。そろそろここも限界かもしれん」と久間。
「そうなれば長野市、上田市、松本市も……」
一士がそういうと、久間が片手で制止する。
「東部方面隊や中部方面隊の部隊が北上してくるだろう……我々もどこかの部隊と合流して、戦うことになるだろうな」
久間は顔を向けて一士に顔を向けた。
「希望はまだ捨てちゃいけないぜ」
そういって久間は笑った。
良い笑顔だった。
一士も同様の笑顔を浮かべて、二人は20式小銃を敵に向けた。




