第5話 SF作家たち
朝。
総理官邸の会議室の一室には十数人程度が集まっていた。
津島一臣は彼らが何の集団かわかっていた。
細身にやや尖ったような顎。無精ひげをなでながら津島は思う。
SF作家、科学者の集団だった。
11時手前に自宅で新潟に謎の集団が上陸したことをTVで知った直後、内閣府から電話が来る。
ニュースでご存じかと思いますが、新潟で予想を超える事態が発生しました。
事態の解明には想像力豊かなSF作家の皆さんの力が必要です。
迎えの車がすぐに到着すると思います。ご準備を。
SF作家は予想を超える事態を解明する手段ではないんだがな。
まあ、向こうも一緒か。
そう思うと、ドアフォンが鳴った。
―――そして連れられて今に至るのである
津島は総理官邸は入ったことないため観察している。
部屋の後ろにはコピー機が3台置かれ、部屋の中心には動く長机や椅子がロの字型に配置されている
と。
「津島さんもいましたか」
津島にそう声をかけてきたのは、新人SF作家の武田雄三だった、
「ゆうぞう」と若干古臭い名前だが、19歳でSF文学新人賞を取った新進気鋭の若者だ。
童顔だが、顔の彫が深く、濃い顔立ちをしていた。
「武田君もいたのか」
津島はさも当然のような口調で答えた。
SF界で新進気鋭の彼を呼ばない者はないだろう。
津島が何か話そうとすると、失礼します、の一言に扉が開いた。
顔の脂と頭の塗料がギトギトに乗った、中肉中背の背広をきた男がやってきた。
彼は一礼した。
「私は内閣官房副長官の手塚です。単刀直入に言います。皆様には新潟に出現した正体不明物体について研究、調査していただきたい」
全員がざわついた。
「皆さんの多くはSF作家や漫画家の皆様です。科学の知識を持ちながら、一般の学者にはない考えや発想をお持ちだ」
手塚は一礼した。
「どうか、我々に力を」




