第14話 東京防空作戦 後編
東京都23区にサイレンが鳴った。Jアラートだ。
音程があがっていくような、不快な電子音が夕方の首都東京に響いた。
そしてゆっくりとした拍子で話す、男性の合成音声。
『航空攻撃情報。航空攻撃情報。当地域に航空攻撃の可能性があります。屋内に避難し、テレビ・ラジオをつけてください』
住民は戸惑った。例の、新潟のやつだということはわかったが、そいつがおそらくほんの身近まできているということだ。
多くの住人は、とにかく屋内に逃げ込んだ。
命の保障は逃げ込んだ本人にも、警報を鳴らした側にもわからないが。
そしてテレビをつけた。
時間は夕方の情報番組の時間帯。
スタジオ内も混乱していた。
男性キャスターが映りこんだスタッフの指示に頷いた。
スタッフが怒号とともに消えた後、キャスターはカメラに向かって話した。
「えー、Jアラートです。東京都23区とその中心地域に航空攻撃情報です。航空攻撃の恐れがあります。今すぐ屋内に避難してください」
それは東京に何十年ぶりかに響く空襲警報だった。
それも、やってくるのは人間が操っているものではない。
新潟を全滅させた、正体不明の物体だ。
自衛隊は全力で迎撃に当たる。
市ヶ谷防衛省と練馬駐屯地に展開していたペイトリオットミサイルの発射装置が空を向いて、白煙を巻いて、ミサイルが空に発射された。
さらに横須賀沖に展開していたイージス護衛艦『きりしま』からも対空ミサイルが何発も発射される。
10機の敵機編隊は埼玉県上空で散開し、ミサイルを回避しようとしていた。
敵機前方から飛来するミサイルは、進路を変更した敵機に向けて進路を変更した。
1発、1発と敵機に命中していく。
残った敵機3機は何とかミサイルを回避し、そのまま埼玉県南部から東京都上空へと突っ込んでいく。
と、その時、後方からミサイル数発。
2機が撃墜された。10機のF35戦闘機編隊だ。
そのうちの1機のF35戦闘機が速力を上げ、残り1機を追う。
武井一尉の操縦するF35だ。
照準を合わせ、機関砲に兵装変更、そして操縦桿のスイッチを押す。
敵機に機関砲弾が命中し、空中で爆発していく。
「こちらヤタガラス06、全機撃破した」
武井一尉が無線でそう呟くと、航空総隊司令部から通信が入った。
「敵機全機撃墜を確認。全機帰投せよ」
東京の空に敵機なし。
こうして首都東京の空は守られた。




