第12話 新潟連隊
この奇妙な戦争が始まって以降、意外なことに、自衛隊に新入隊員志願者が続出した。
損害が大きい自衛隊としても喜ばしいことだった。プログラム内容を変更しながら短縮された訓練期間を経て、即戦力に仕立てた新入自衛官を配備していった。
特に新潟出身者の士気は他と比べても群を抜いて高く、訓練の成績もよかった。
自衛隊は陸上自衛隊の、新潟出身の幹部と曹士、さらに新しく入った新潟出身の自衛官で構成される新潟連隊を結成した。
群馬県藤岡市
新潟連隊第1普通科中隊の安本士長は塹壕の中に入ってノートパソコンを見つめていた。
彼は新潟県上越の出身で、元々は東京で会社員をしていた。
画面には飛行しているカミカゼドローンの映像が映っている。
ドローンは敵集団の上空を飛行しており、眼下は敵集団で密集していた。
と、円柱が横に倒れて、4本足がついている物体を確認した。
情報によると、これが敵のエネルギー源を運んで、前線の集団にエネルギーを補給する役割を担っているらしい。
安本士長はドローンを操作して、目標に接近させる。
ドローンがこれまでの味方に比べ、小さく、飛行しているせいか敵もドローンに無警戒だ。
安本士長はドローンを突っ込ませた。
カメラの映像が途絶し、しばらくして爆発音が届いた。
無線機から声が聞こえる
『長岡04、ドローン命中。敵は倒れた』
敵が補給を受けられないせいか、動きか鈍くなっている。
また敵の一部は突出しており、主力と切り離して撃滅しようとした第12師団司令部は
新潟連隊第2普通科中隊と秋田に駐屯していた第21普通科連隊を主力とする第21戦闘団に攻撃命令を下した。
新潟連隊第2普通科中隊、秋山二曹は新潟県長岡市出身の自衛官だ。
彼のヘルメットには小型カメラが付いている。民間出身の隊員のアイディアで、戦況を克明に記録し、それを公開することで世界中に今の日本の戦場の状況を伝えようとしていた。
秋山二曹以外にもカメラをつけている隊員はいた。第2普通科中隊の今回の役割とは、敵の撃滅とともに、戦場を撮影することにあるのだ。
砲撃の後、秋山二曹らは塹壕を飛び出て前進していく。
しばらく進むと、灰色の半円をした甲殻類のようなものが1体、鈍い動きで秋山らの方向に向こうとしている。
秋山らの分隊は、分隊長、秋山の命令で20式小銃の銃口を向け、連射した。
すると敵は完全に動きを止めた。
その後方から、前方に銀色の盾らしきものをもっている物体が鈍く動いている。
「対戦車戦闘」
秋山は命令を下した。カールグスタフ 84mm無反動砲をもった隊員が構え、別の隊員が弾を込める。
弾薬をつめると、弾をつめる担当の隊員が、カールグスタフを構える隊員の肩を叩き、装填完了を伝える。
カールグスタフを構える隊員はバックファイアに誰かが巻き込まれないよう、後方に人がいないことを確認。
発射。
物体の前方に着弾し、物体は動きを止めた。
秋山の分隊は他の味方と一緒に前進をしていく。
新潟連隊と第21戦闘団は敵の掃討を完了した。
これは自衛隊にとって、地上戦において、はじめて敵集団を倒した戦闘だった。




