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第11話 木曽上空


 敵は制空権を徐々に広げつつあり、東は能登半島から静岡市のラインの東の方が敵の空となっていた。

 このラインを中心にして航空宇宙自衛隊と戦っている。



 新潟から円錐状の物体が飛行してくる。

 数は60。制空ラインを突破して、小牧基地の方角に飛行していた。


 小牧基地に進出していた航空宇宙自衛隊戦闘機部隊が、レーダーの情報から東海地方に敵機部隊が侵攻してきたのを察知したのを受けて、緊急発進する。


 両者は長野県南西部の木曽上空で衝突する。



 

 小松基地から唯一脱出してきたイーグルドライバー、今谷は一等空尉から三等空佐に昇進していた。

 理由は尾翼にズラリと40個以上並んだ撃墜マークが物語っていた。


 その銀色の翼は今、僚機とともに岐阜県西部上空を飛んでいた。




『目標は小牧基地か、人口密集地の名古屋市だろう。濃尾平野に入る前に落とすぞ』


 部隊長の二等空佐が言った。


 部隊の全パイロットが返答をする。


 敵機をレーダーで捉える。隊長からの指示、全機99式空対空誘導弾――AAM4ミサイルで一斉攻撃後、散開。着弾後、接近し、攻撃せよ。


 今谷、コクピットの機材を操作し、使用兵装をAAM4へ。


 隊長、攻撃命令。全機、AAM4を発射。


 しかし敵機群はこれに気が付き、AAM4が到達する前に散開。

 放たれた多くのAAM4の多くが着弾せず。


 自衛隊機群はただちに散開。


 今谷は目の前を通った戦闘機を目視、それを追尾する。


 兵装変更。AAM5ミサイル。AAM4よりも射程は短い近距離ミサイル。だが、近距離ならば、より確実に相手を仕留められる。


 今谷機、敵機後方についてAAM5を発射。敵機がAAM5を避けようとした瞬間に着弾。大破する。


「こちら、キングジョー02。敵機撃墜」


 今谷は冷静な声で報告する。


 以前から指摘されていたことだが、この敵空中型にはチャフやフレアといった回避手段はなく、高機動による回避しかないようだ。

 もっとも、誰かを載せているわけではないせいか、その機動は自衛隊機よりも高機動だ。


『低空で侵入する3機確認。誰か一緒に始末してくれ』


「こちら、キングジョー02。今行く」

 

 他数機が名乗りを上げ、敵機を確認していく。


 今谷は兵装を変更し、AAM4を発射。


 低空のせいか、運動が鈍い。1機に着弾、大破。


 他の自衛隊機も接近して、敵機に攻撃を仕掛ける。


 その時、今村機後方からレーザーが放たれる。


 後方、今谷は速力を上げ、敵機を振り切ろうとする。

 金属片のチャフ、火の球であるフレアといった対ミサイル妨害素材をばらまくも効果がなく、敵機はかじりついたように離れない。


 今谷は兵装をAAM5に変更。一気に減速。」

 強烈なGがかかる。敵機が一瞬前に出る。その隙をついてAAM5発射。

 着弾。至近で爆発が起きる。


『全機撃墜確認、帰還する。我の損害、6。救難隊に捜索要請』


 隊長が言った。


 また生き残ったか、今谷は戦闘の後いつもそう思う。

 自分の生存を実感し、幸運に深い一息をつく。


 今谷は、周りから小松の生き残りにして撃墜王と称賛される。

 もちろん、生存に最大限努力し、任務を全うするが、いつ撃墜されてもおかしくないと思っている。


 いまに万全であってもやられるものはやられる。

 自分が今、やられないのは、何十回とロシアンルーレットをやって、それでもなお生き残っているのに似たものがあると思っている。


 まあ、偶然でも生存しているのに変わりないが。


 今谷は僚機とともに帰還の途についた。



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