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第10話 敵分析


 首相官邸、会議室。


 雑多にSF作家や科学者、さらに官僚たちが雑多に椅子に座って、意見交換をしていた。

 長椅子をロの字型におき、彼ら彼女らは意見を言い合っている。

 一方には二つのホワイトボード、部屋の端には議論を記録しているらしい公務員たちがノートパソコンをカタカタといじっていた。



「新潟県沿岸の、謎の構造物は彼らのエネルギー源だ。あの円柱の物体がエネルギーを運んで円柱状の各物体を介して前線の各物体に配っているんだ」


 SF作家の津島がそう言った。他のSF作家や研究者もその意見に同意する声やしぐさをした。


 公務員の男性の一人がホワイトボードに意見をまとめていく。


「航空機の類は、発着場から燃料補給をしていると?」


 新人SF作家の武田が疑問を投げかけた。


「そうですね」官僚の手塚が答える。


「衛星写真などからの分析によれば、旧空港や、彼らが整備した平地―――飛行場と見られますが―――にも、同様とみられる構造物が確認できています」


 水上を走る大型物体は、と口を開いたのは若き国立大学准教授、金城香苗だった。


「どう補給しているのでしょう?」


「自給、かな?」


 老練な国立大学教授、今立が言う。


「体内で自給とか…いずれにせよ、様子を見る必要はあると思う」


「そもそも、やつらはどこから来たのか」


 津島は続けた。


「深海とは一応の結論ですが、深海のどこからやってきたのか、それも詳細を詰める必要がありそうですね」


「他にも物体の種類ですね」と津島。


 公務員が部屋の端にあった他のホワイトボードを正面にもってきた。


 写真がいくつも貼ってあり、下に名前が書いてある。


 スタンダードで一番数が多い普通科型、細長いレーザーをもったレーザー型、正面に盾を持ち、全身硬く、全身が硬い突撃型……

 空を飛ぶ空中型や巨大で海を行動する艦船型もいた。


 この情報は自衛隊にも提供され、前線にも生かされている。


「それと」と今立教授。


「敵の目標なんだが……。うちの学術チームが行動パターンなどを解析した結果、目指している場所に結論が出た」


「東京、ですか。やはり」と新人作家の武田。


 敵の主力が新潟から南東に侵攻していることから、他のメンバーも何となく予想はついていた。


「そうだ。なぜ目指しているかわからないが……」


 手を上げるメンバーがいた。中堅SF作家の後藤信二だった。


「人口が多く、産業、経済、政治の中核だからでは? なぜ敵がそれを察せたかわからないが…」


「そうと今立教授。


「人口ひとつにとっても、どう分析できたのかわからない。衛星や敵機の東京飛来などはあったが…」


「そもそも敵の行動パターンがいまいちよくわかっていない。東京を目指すにしても、なぜ東京を目指すのかわかっていない。日本の占領か、人間の殲滅か…」


 今立教授の疑問に、皆が黙った。


 それを破ったのは、官僚の手塚だった。


「いずれにせよ、敵は東京に接近していいる可能性が大きくなった。首都防衛を強化させましょう。さらに、エネルギー源、補給の経路がわかっただけでも大きいです。今後、自衛隊はこの補給拠点などを叩くことになるでしょう」


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