表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

99/157

バージョンアップ

 カトリ教国の侵攻軍は、司令官や糧食を失ったはずなのに、それでもなお総攻撃を仕掛けてきた。

 この砦を制圧して食料を奪えば、次の補給を受けられるまで持ちこたえることができると考えているのか?

 砦を陥落させるには、まだ何日もかかりそうなのに?

 食料や飲料水もないのに無理だろ。


 う~ん、追い詰め過ぎたか? 

 でも、教国の1番近い町までは40km程度──撤退できないほどの距離ではない。

 逃げるという選択肢があるのに、こんな破れかぶれの攻撃をするのは、非合理的だ。


 ならば、合理的ではない理由がある。

 それは感情──信仰心か……あるいは恐怖心か。


 宗教……狂信者は厄介だな。

 カトリ教国という、牧歌的な物を連想する……というのは、昔そんな名前の少女が活躍する牧場(まきば)のアニメがあったからだが、そののどかな印象の名前とは裏腹に、亜人排斥主義のヤバイ宗教らしいから余計にな……。

 末端の兵はそこまで信仰心に(あつ)くはない可能性もあるが、その逆の場合は神の為には喜んで身を差し出す死兵となりかねない。


 はぁ……どうしたものかな……。

 俺はアンシーを1度失った時、敵に手心を加えて、後々禍根を残すような結果になったことを反省した。

 あの変態の命を、最初から奪っておけば良かった……と。

 貴族の娘の下着を盗んだのだから、本来ならそれくらいは許される。

 まあ、相手が公爵家の人間だたから、それはそれで問題は起こっただろうけど、俺が上手く立ち回っていれば、アンシーの命が奪われるような事態にはなっていなかったかもしれない。


 だからこの教国軍も、皆殺しにするのが後腐れも無くて良いのかもしれないし、実行するのも可能だと言えば可能なのだが、やっぱりそれはやりたくない……というのは、非合理だがこれも感情か。


 仕方がない……。

 最善を尽くすか。

 可能な範囲で死人は出さないように……。

 勿論、いざという時には、全力を出す──その覚悟は決めておこう。


「タカミ子爵、どうする?

 このままでは外壁を突破されるぞ」


 ミーティア王女が、外壁の物陰に隠れながら俺に声をかけた。


 現在教国軍は、砦の外壁に対して激しい魔法攻撃をしている。

 これで壁が今すぐに崩壊する可能性は低いが、小さくても破損が生じれば、それは兵が登る為の足がかりになるだろう。

 実際、教国軍は梯子(はしご)の準備をしているし、壁を乗り越えようとしているようだ。

 更にかたく閉ざされた門に対しても、破城槌での破壊を試みている。


 まあそれらは、マルドー辺境伯軍が弓矢などで応戦すれば、簡単には突破することはできないはず……なのだか、今は俺の能力を隠す為に、兵員には下がってもらっているから無防備なんだよねぇ……。


 なので外壁の上にいる俺達の所にも矢が飛んできたりするのだが、それはアンシーに落としてもらっているから、取りあえずは安全だ。

 そんな訳で、俺も「変換」に集中できる。


「少々時間はかかりますが、(しばら)くの間は私に任せてください」


 俺が狙うのは、教国兵の装備だ。

 剣や弓矢、そして鎧──あとは破城槌や梯子などの道具もだな。

 作るのはなんでもいい。

 あくまで装備を奪うのが主目的だ。

 全ての装備を失ってもなお、戦える者はどれだけいるかな?

 そして全軍が装備を失えば、侵攻の継続は今度こそ難しいだろう。


 とは言え、遠隔な上に動き回っている相手の装備を「変換」するのは難しいから、数人ずつ時間をかけて、外壁に近づいてきた者から対処していく。

 多少は時間はかかるし、万単位の敵を俺1人で対処するのは難しいので、アンシーにも手伝ってもらうしかないのは、もう割り切るしかないな……。


 アンシーの能力なら、今日1日くらいは教国軍をこの外壁に足止めさせることくらいはできるだろう。

 実際、外壁に近づいてきた兵は、アンシーの指から放たれた光線によって、次々に倒れていく。


「もう彼女だけでいいのでは……」


 コリンナからそんな呟きが聞こえてきたが、それはそう……なんだけど、アンシーが本気を出したら教国軍は全滅してしまうから、それは駄目だ。

 現状でもなるべく殺さないように手加減させているけど、それでも死者はどうしても出ている状態だし……。

 

 だから俺が効率的に、作業を進める必要がある。 

 その為にも出てしまった死者の遺体は、俺の「変換」の材料にさせてもらおう。


 で、「変換」して作った物は、「空間収納」に取りあえず保管しておく。

 そしてある程度の数になったら、今度はそれを材料にして、ダウングレードしていた俺の義手と義足を更にバージョンアップさせる。


 優先したのは左手だ。

 今までは精密機器に接続して操るのがメインの機能だったが、今度は「変換」に使う脳の演算能力を補助する機能を付加させた。

 これにより1度に対処できる「変換」の数が増えて効率が上がり、一気に数十人から装備を取り上げることができるようになった。

 しかも遠隔で「変換」できる距離も飛躍的に伸びたので、教国軍の後方にある装備でも奪う事が可能になったぞ。


 結果、手に入る材料も潤沢(じゅんたく)になり、すぐに残った義手と義足もバージョンアップさせた。

 両足は今までの回復能力と、身体能力向上させる機能を更に強化。

 これで以前よりも生身での戦闘力が向上したはずだが、それでもおそらくはアンシーよりもかなり弱い。

 いつまでも彼女に守られてばかりなのは恥ずかしい……というか、彼女にばかり人の命を奪わせている現状は心苦しいからな……。


 そこで新たに追加した、右手の義手の出番だ。

 今までは仮に付けていただけなので、手首を外したら銃口が現れて銃撃できる……という機能を付けていたのだが、結局1回も使う機会が無かった。

 そもそもこんな戦場では、使い物にならない……ということは無いが、軍隊を相手に勝てるというほどではないからな……。


 ならば万単位の人間の装備・その他と、俺の魔力を思いっきり注ぎ込んで作った()・右手の義手を作ろう。

 これが完成すれば、万の軍勢を相手にしても俺単独で勝てる!


 ……はずだ。

 いつも応援ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ