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戦地へ

 俺は戦地へ行くことになった。

 カトリ教国からの侵攻を受けている、マルドー辺境伯領へと──。


 とはいえ、マルドー辺境伯領まで馬車や徒歩で行ったら、下手をすると1ヶ月近くかかる。

 だから最低でも、何か乗り物を用意する必要があるけど、今の俺は「空間収納」の中がほぼカラッポだから、兵器も無ければ移動用の乗り物も無い状態だ。

 アンシーを復活させる為に、全部使い切っちゃったからなぁ……。


 戦いを止める為には、それなりに武器も必要だが、それらを準備する為には、俺の魔力だけだと「変換」の材料としてはちょっと心許(こころもと)ない。

 そんな訳で、変換の材料を集める所から始めなければならない訳だ。


 幸いミーティア王女からは準備金を出してもらえたので、王都の店をはしごして色々と資材を買いあさった。

 残念ながら武器は勿論、義手と義足を作り直すほどの資材を手に入れるには、金額はまったく足りなかったが……。

 仕方がないから乗り物だけ作って、他は材料を現地調達した後だな。


 で、準備に数日をかけ、いよいよ出発の日──。

 王都の正門を出たところで、俺は見送りを受けていた。


(わたくし)も行きますわ!」


「私も……!」


「エルが心配だもの!」


 ……見送り?


「駄目です」


「「「ええぇ~~っ!?」」」


 3人娘が駄々をこねる。

 さすがにまだ10歳そこそこの少女達を、人が死ぬ凄惨な戦場には連れて行けないわな……。


「せめてもっと強くならないと、話になりません。

 私を納得させるだけの強さを得たら、次の機会には考えましょう」


「そんな、私は充分強いですわ!!」


 セリエルは食い下がる。

 確かに彼女はそこそこ強い。

 しかし──、


「手加減をした私に負けるようでは、駄目でしょう」


「うぐっ!!」


 俺が本気を出さなくても、余裕で勝てちゃう程度ではなぁ……。


「そ、それでもあれから、修練も積みましたわ!!」


「そうですか……。

 アンシー」


 俺が声をかけると、背後に控えていたアンシーが、俺の正面に立つセリエルの後ろに回り込んだ。

 そんなアンシーの動きに、彼女はまったく反応できなかった。


「……っ!?」


「今のが見えないようでは駄目です」


「くっ……!!」


 ちなみに、俺も(ほとん)ど見えなかったぞ。

 この世界でアンシーの動きに対応できる人間って、あんまりいないような気がする。

 魔族とかならあるいは……?

 だからこれは、セリエルを(あきら)めさせる為の方便だ。


 そんな感じで、3人娘を諦めさせ……られたのかなぁ?

 なんだかそれぞれが、決意に満ちた顔をしているんだけど……。

 次の機会は、連れて行かなければならないかも……そんな気がする。

 

 それからやや(しばら)くして──、


「お待たせしました」


「コリンナ様」


 待ち人が来た。

 今回、俺の同行者には、アンシーの他にマルドー辺境伯領の次女であるコリンナも含まれる。

 自領のピンチに、安穏(あんのん)と学園生活を送っている訳にはいかなくなった為、同行を申し出た……という訳だ。

 でも、いざという時のことを考えると、王都にいた方が一族が全滅ってことにならなくていいと思うんだけど……。


 まあ、その辺の判断は当人次第か。

 それよりも……。


「何故、ミーティア王女殿下まで……!?」


 何故かコリンナと一緒に来た王女。

 こんな所に王族がいていいのか?

 しかも護衛すら連れていないよ……。


 その上、コリンナはもとよりだが、王女も男性的な服装をしており、更に2人とも大きな背嚢(リュックサック)を背負っていて、いかにも旅姿といった感じだ。

 まさか王女もついてくる気なの!?


「私は見届け人だ。

 私がこの目で君の功績を見定め、そして国王陛下に陞爵(しょうしゃく)を上申する」


「私は止めたのですが、先輩がどうしても……と」


「……先輩?」


「私は学園の卒業生なのだ」


「ああ……そういう……」


 王女はコリンナと知己だったのか。

 そして俺の先輩でもあった。


 というか、え~……王族を連れ歩くことになるのかよ……。

 面倒臭いし、王女に何かあったら、俺の責任問題にならない?

 でも、第5王女なら代わりもいるから、さほど国からは重要視されず、自由に動けるって感じなのか?

 そうじゃなきゃ、こんな所にいないよな?


 それよりも問題なのは、王女を同行させると、俺の能力が彼女を通して国へ筒抜けになってしまうことだなぁ……。


 だが、王族が相手じゃ、俺に拒否権は無いんだろうなぁ……。

 たぶん移動用の乗り物で、いきなり俺の手の内を晒すことになるが、仕方がない……。

 ここはむしろ王女の驚く顔を楽しむくらい、開き直るか……。

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